10 / 13
第10話:一撃の決着と潜む影
しおりを挟む
「――そろそろトドメだよ」
アスヤの宣言とともに、虹色の魔力が収束していく。
一方的な猛攻を受け、ボロボロになったゾグマの様子が急変した。彼の体から噴き出す黒い霧がどろりと凝固し、四肢が異常な長さに伸び、顔面はもはや人の原型を留めぬ異形の怪物へと変貌していく。
「オ……オオォォォォアアアアッ!!」
魔王族としての真の姿。理性を完全に失い、破壊衝動のみで動く暴走状態だ。その咆哮だけで闘技場の石畳が震え、観客席の受験生たちは恐怖に凍りついた。
「アスヤ! 観客は俺たちが守る、お前は確実にソイツを仕留めろ!」
観客席からライの声が響く。同時に、マルクが巨大な防御結界を展開し、ライオが万が一の飛び火に備えて大剣を構えた。背後を最強の大人たちに任せられる安心感。アスヤは深く息を吐き、木剣を正眼に構え直した。
「了解。……一瞬で終わらせる」
アスヤの全身から溢れる四分の一の魔力が、手元の木剣に凝縮される。あまりの密度に、ただの木切れだったはずの剣が白銀の輝きを放ち始めた。
ゾグマが地を割り、巨大な爪を振りかざして突進してくる。
アスヤは一歩も引かず、最短の軌道でその一撃を迎え撃った。
「――はぁッ!」
放たれたのは、ただの唐竹割り。
しかし、そこに込められた質量と魔力は、もはや「試験」の域を遥かに越えていた。
激突の瞬間、爆音とともに眩い光が闘技場を包み込む。ゾグマの巨体はアスヤの放った一撃に抗う術もなく、その衝撃で細胞一つ一つが分解されるように、跡形もなく塵となって霧散していった。
光が収まった後、そこには静かに立つアスヤと、中央から真っ二つに割れた闘技場の残骸だけが残っていた。
「……実技試験、終了だね」
審判が呆然と立ち尽くす中、ライがアスヤのもとへ歩み寄った。
「よくやった、アスヤ。見事な手加減だったよ」
「……これでも手加減したつもりなんだけど、闘技場壊しちゃった」
苦笑いするアスヤを見て、ライはバルカス学院長を振り返った。
「学院長、あとは任せていいか?」
「は、はい……。魔王族の残滓の処理と、事態の収拾はこちらで行います。ライ様、そしてアスヤ様。素晴らしいものを見せていただきました」
学院長は驚愕を隠せぬまま深々と頭を下げた。
騒然とする学院を後にし、アスヤたちは夕暮れの道を帰宅した。
――だが、その様子を遠くから見つめる者がいた。
学院の時計塔の影。漆黒のドレスを纏った一人の女性が、不敵な笑みを浮かべてアスヤの背中を見送っていた。
「ふふ……みーつけた。あんなに澄んでいて、それでいて底が見えない魔力……。あなたが、私たちの望む『鍵』なのかしら?」
彼女の赤い瞳が怪しく光り、夜の風にその冷ややかな笑い声が溶けて消えた。
アスヤの宣言とともに、虹色の魔力が収束していく。
一方的な猛攻を受け、ボロボロになったゾグマの様子が急変した。彼の体から噴き出す黒い霧がどろりと凝固し、四肢が異常な長さに伸び、顔面はもはや人の原型を留めぬ異形の怪物へと変貌していく。
「オ……オオォォォォアアアアッ!!」
魔王族としての真の姿。理性を完全に失い、破壊衝動のみで動く暴走状態だ。その咆哮だけで闘技場の石畳が震え、観客席の受験生たちは恐怖に凍りついた。
「アスヤ! 観客は俺たちが守る、お前は確実にソイツを仕留めろ!」
観客席からライの声が響く。同時に、マルクが巨大な防御結界を展開し、ライオが万が一の飛び火に備えて大剣を構えた。背後を最強の大人たちに任せられる安心感。アスヤは深く息を吐き、木剣を正眼に構え直した。
「了解。……一瞬で終わらせる」
アスヤの全身から溢れる四分の一の魔力が、手元の木剣に凝縮される。あまりの密度に、ただの木切れだったはずの剣が白銀の輝きを放ち始めた。
ゾグマが地を割り、巨大な爪を振りかざして突進してくる。
アスヤは一歩も引かず、最短の軌道でその一撃を迎え撃った。
「――はぁッ!」
放たれたのは、ただの唐竹割り。
しかし、そこに込められた質量と魔力は、もはや「試験」の域を遥かに越えていた。
激突の瞬間、爆音とともに眩い光が闘技場を包み込む。ゾグマの巨体はアスヤの放った一撃に抗う術もなく、その衝撃で細胞一つ一つが分解されるように、跡形もなく塵となって霧散していった。
光が収まった後、そこには静かに立つアスヤと、中央から真っ二つに割れた闘技場の残骸だけが残っていた。
「……実技試験、終了だね」
審判が呆然と立ち尽くす中、ライがアスヤのもとへ歩み寄った。
「よくやった、アスヤ。見事な手加減だったよ」
「……これでも手加減したつもりなんだけど、闘技場壊しちゃった」
苦笑いするアスヤを見て、ライはバルカス学院長を振り返った。
「学院長、あとは任せていいか?」
「は、はい……。魔王族の残滓の処理と、事態の収拾はこちらで行います。ライ様、そしてアスヤ様。素晴らしいものを見せていただきました」
学院長は驚愕を隠せぬまま深々と頭を下げた。
騒然とする学院を後にし、アスヤたちは夕暮れの道を帰宅した。
――だが、その様子を遠くから見つめる者がいた。
学院の時計塔の影。漆黒のドレスを纏った一人の女性が、不敵な笑みを浮かべてアスヤの背中を見送っていた。
「ふふ……みーつけた。あんなに澄んでいて、それでいて底が見えない魔力……。あなたが、私たちの望む『鍵』なのかしら?」
彼女の赤い瞳が怪しく光り、夜の風にその冷ややかな笑い声が溶けて消えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる