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第7話
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私は、頷くことも、言葉を返すこともできませんでした。
今侯爵様が述べた事実を、認めたくなかったのかもしれません。
縮こまる私を見て、ますます侯爵様は怒りを深めたのか、拳を握り締め、勢いよく立ち上がって言いました。
「許せん! そのような女、今すぐ我が領地から追放してやる!」
そんな侯爵様を、シュベールさんが制止します。
「お待ちを、侯爵様」
「なんだ!?」
「憤慨するお気持ちはわかりますが、リネットさんの母親を即時追放することは、あまり良いご判断だとは思えません」
「何故だ!?」
「このメルブラン侯爵領は、偉大なる領主であった先代のご領主様が作られた法律を土台にして運営されています。その法律に基づけば、領地追放のような厳罰を科す場合は、まず正式な裁判をおこなわなければなりません」
「そうか! それでは、早速裁判の手続きを始めろ!」
「侯爵様、とりあえずいちいち怒鳴るのをやめてくれませんか。耳が痛くなりそうです」
「これが怒鳴らずにいられるか! 俺は従順な子供を、私利私欲のために利用するような奴が一番嫌いなんだ!」
「わかりましたから落ち着いてください。ほら、紅茶でも飲んで……」
「飲んどる場合か! いいから早く裁判の話を進めろ!」
興奮冷めやらぬ侯爵様に、シュベールさんは重たいため息を漏らします。
「ふぅ……侯爵様が興奮なさるので、少し間をおいてから説明しようと思いましたが、仕方ありません、ハッキリ言うことにします。たとえ裁判を起こしても、リネットさんの母親を追放することはできないでしょう。それどころか、軽微な罰を与えることすら不可能だと思います」
「な、なんだと……? 何故だ?」
「リネットさんの母親がしたことは、道徳的には最低ですが、法的には一切罪を犯していないからです。血縁関係の無い母子でも、メルブラン侯爵領の福祉を受けることは可能ですから、詐欺にはなりませんし、リネットさんの話を聞く限り、暴力を伴う虐待があったわけでもない」
「ぐぬぬ……し、しかし、娘を人身御供のように捧げようとしたのだぞ? これは、人身売買とか、そういう感じの罪で裁けないのか?」
「難しいですね。リネットさんは売られたわけでもなければ、買われたわけでもありませんから。法律を拡大解釈して、最大限の罰を与えられたとしても、せいぜいが厳重注意でしょう」
「げ、厳重注意だと……? これだけのことをして、厳重注意……? こんな馬鹿なことがまかり通っていいのか?」
今侯爵様が述べた事実を、認めたくなかったのかもしれません。
縮こまる私を見て、ますます侯爵様は怒りを深めたのか、拳を握り締め、勢いよく立ち上がって言いました。
「許せん! そのような女、今すぐ我が領地から追放してやる!」
そんな侯爵様を、シュベールさんが制止します。
「お待ちを、侯爵様」
「なんだ!?」
「憤慨するお気持ちはわかりますが、リネットさんの母親を即時追放することは、あまり良いご判断だとは思えません」
「何故だ!?」
「このメルブラン侯爵領は、偉大なる領主であった先代のご領主様が作られた法律を土台にして運営されています。その法律に基づけば、領地追放のような厳罰を科す場合は、まず正式な裁判をおこなわなければなりません」
「そうか! それでは、早速裁判の手続きを始めろ!」
「侯爵様、とりあえずいちいち怒鳴るのをやめてくれませんか。耳が痛くなりそうです」
「これが怒鳴らずにいられるか! 俺は従順な子供を、私利私欲のために利用するような奴が一番嫌いなんだ!」
「わかりましたから落ち着いてください。ほら、紅茶でも飲んで……」
「飲んどる場合か! いいから早く裁判の話を進めろ!」
興奮冷めやらぬ侯爵様に、シュベールさんは重たいため息を漏らします。
「ふぅ……侯爵様が興奮なさるので、少し間をおいてから説明しようと思いましたが、仕方ありません、ハッキリ言うことにします。たとえ裁判を起こしても、リネットさんの母親を追放することはできないでしょう。それどころか、軽微な罰を与えることすら不可能だと思います」
「な、なんだと……? 何故だ?」
「リネットさんの母親がしたことは、道徳的には最低ですが、法的には一切罪を犯していないからです。血縁関係の無い母子でも、メルブラン侯爵領の福祉を受けることは可能ですから、詐欺にはなりませんし、リネットさんの話を聞く限り、暴力を伴う虐待があったわけでもない」
「ぐぬぬ……し、しかし、娘を人身御供のように捧げようとしたのだぞ? これは、人身売買とか、そういう感じの罪で裁けないのか?」
「難しいですね。リネットさんは売られたわけでもなければ、買われたわけでもありませんから。法律を拡大解釈して、最大限の罰を与えられたとしても、せいぜいが厳重注意でしょう」
「げ、厳重注意だと……? これだけのことをして、厳重注意……? こんな馬鹿なことがまかり通っていいのか?」
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