お母さんに捨てられました~私の価値は焼き豚以下だそうです~【完結】

小平ニコ

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第6話

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 窓際にある執務机。
 その向こうの立派な椅子に、麗しい装束を身にまとった男性が腰かけていました。

 いえ、麗しいのは装束だけではありません。
 彼自身も、とても、とても美しい方でした。

 輝くような美貌とは、こういう方のことを言うのでしょう。

 やや青味がかった黒髪は艶やかで、鋭くも凛々しい瞳がこちらを見つめています。……その瞳から、美しさと同時に厳しさを感じ、私は思わず目を伏せました。

「シュベール。来客とは、その娘のことか?」

「はい、侯爵様」

「いったい何者だ?」

「彼女自身の言葉を借りるなら、『捧げもの』だそうです」

「なんだと? 意味がわからん。いちから説明しろ」

「なんでも、彼女の母親が今回、献上品を用意できなかったそうです。その代わりとして、娘の彼女が侯爵様への『捧げもの』になるためにやって来たと……まあ、そういうことらしいですよ」

 侯爵様はしばらくポカンと口を開けた後、私に向き直り、言いました。

「ふざけているのか……?」

 ふつふつと煮えたぎるような怒りを感じ、私は震えあがりました。もうどうなってもいいと思っていたけど、それでも、高貴なる方の怒りを一身に受けるのは、やはり、恐ろしいものでした。

 考えるより先に平伏し、精いっぱいのお詫びの言葉を口にします。

「も、申し訳ございません……高貴なる侯爵様に、私ごときの……」

 しかし、その謝罪の口上を、侯爵様が制止しました。

「違う、そうじゃない。頭をあげろ。お前を責めているのではない。俺が怒っているのは、お前の母親だ」

「えっ?」

「どこの世界に、豚の料理が用意できないからと言って、娘を差し出す母親がいるのだ。ふざけるにもほどがある。……お前、名前は?」

「は、はい。リネットと申します」

「よし、リネット。なぜこんなことになったのか詳しく話してみろ。嘘やごまかしは許さんぞ。ありのままを正直に語れ」

「はい……」

「あと、いつまでも床にひれ伏したままでいるんじゃない。そこのソファに座れ。おい、シュベール、温かい紅茶と、何か菓子を用意してやれ」

「かしこまりました」

 私は恐れ多くも侯爵様が普段使っているのであろうソファに腰かけ、今日起こったことのすべてを語り始めました。話が進むうちに、侯爵様の端正なる頬に赤みがさしていきます。それは、高揚や羞恥の赤ではなく、憤怒の赤でした。

「……つまりお前の母は、我が領地の福祉制度を利用するためだけにお前を孤児院から引き取り、用が済んだので最後は生贄同然に放り捨てたということか」
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