3 / 19
第3話
しおりを挟む
その可愛げのない態度が不愉快だったのか、国王陛下は小さく「あっそう」とだけ言った。ウルナイト殿下が、くすくすと笑い、背を向けて歩き出した私に、さらに冷たい言葉を浴びせかける。
「ふふふ、ラスティーナさん。せっかくの父上のご厚意なんですから、金貨十枚、受け取っておいた方がいいと思いますけどね。あなたはこれから、無職になるわけですし。ふふ、ふふふ」
私は、ウルナイト殿下を無視した。
もうこの男と、口をききたくなかった。
ウルナイト殿下は、黙って歩き続ける私の代わりに、ペラペラと語り続ける。
「しかし、あなたが就職活動をする場合、職務経歴書に、なんて書けばいいんでしょうね。『前職は聖女でした』なんて書いても、誰も信じず、きっと、馬鹿にされるでしょうしね。ふふふふっ」
ウルナイト殿下の笑いに合わせて、どっと湧き上がる嘲笑。
王族だけではない、式典に出席していた重臣たちも、笑っているのだ。
彼らも、ウルナイト殿下と同じく、国防を聖女一人が担っていた状況を、不愉快に思っていたのだろう。だから今日、私を国から追放することができて、嬉しくてたまらないのだ。
……悔しいっ。
こんな奴らのために、十年間も必死になって、この国を守っていたなんて。
私は悔しさに、唇を噛んだ。
あまりにも強く噛みすぎて、血がにじんだが、それでも噛むのをやめられなかった。聖女の力が、防衛のための力ではなく、攻撃のための力だったなら、私は怒りと悔しさのあまり、この場にいる全員を攻撃していたかもしれない。
嘲笑を浴びながら、式典会場を去ろうとする私の背に、ウルナイト殿下の刺すような言葉が飛んで来る。
「ああ、そうそう。僕とあなたとの婚約についてですが、まあ、今更くどくど言わなくても、もう理解していると思いますけど、当然、破棄させていただきますね。それでは、さようなら」
私は相変わらず返事をせず、式典会場を出た。
噛み続けた唇は、自らの血で、赤く染まっていた。
・
・
・
私は身支度を整え、正門から国を出るために、表通りを歩いている。
式典には記者も多く参加していたので、『聖女追放』の一報は瞬く間に国中を駆けめぐったが、私を庇ってくれる国民はいなかった。
理由は、ハッキリしている。
国民たちは、私の作る『聖女の結界』を、煩わしく思っていたのだ。
『聖女の結界』は、魔物の侵入を完璧に阻むが、その強固さゆえに、結界の中にいる人々も、自由に外に出られなくなってしまう、『究極の牢獄』とでも形容すべきものだった。
「ふふふ、ラスティーナさん。せっかくの父上のご厚意なんですから、金貨十枚、受け取っておいた方がいいと思いますけどね。あなたはこれから、無職になるわけですし。ふふ、ふふふ」
私は、ウルナイト殿下を無視した。
もうこの男と、口をききたくなかった。
ウルナイト殿下は、黙って歩き続ける私の代わりに、ペラペラと語り続ける。
「しかし、あなたが就職活動をする場合、職務経歴書に、なんて書けばいいんでしょうね。『前職は聖女でした』なんて書いても、誰も信じず、きっと、馬鹿にされるでしょうしね。ふふふふっ」
ウルナイト殿下の笑いに合わせて、どっと湧き上がる嘲笑。
王族だけではない、式典に出席していた重臣たちも、笑っているのだ。
彼らも、ウルナイト殿下と同じく、国防を聖女一人が担っていた状況を、不愉快に思っていたのだろう。だから今日、私を国から追放することができて、嬉しくてたまらないのだ。
……悔しいっ。
こんな奴らのために、十年間も必死になって、この国を守っていたなんて。
私は悔しさに、唇を噛んだ。
あまりにも強く噛みすぎて、血がにじんだが、それでも噛むのをやめられなかった。聖女の力が、防衛のための力ではなく、攻撃のための力だったなら、私は怒りと悔しさのあまり、この場にいる全員を攻撃していたかもしれない。
嘲笑を浴びながら、式典会場を去ろうとする私の背に、ウルナイト殿下の刺すような言葉が飛んで来る。
「ああ、そうそう。僕とあなたとの婚約についてですが、まあ、今更くどくど言わなくても、もう理解していると思いますけど、当然、破棄させていただきますね。それでは、さようなら」
私は相変わらず返事をせず、式典会場を出た。
噛み続けた唇は、自らの血で、赤く染まっていた。
・
・
・
私は身支度を整え、正門から国を出るために、表通りを歩いている。
式典には記者も多く参加していたので、『聖女追放』の一報は瞬く間に国中を駆けめぐったが、私を庇ってくれる国民はいなかった。
理由は、ハッキリしている。
国民たちは、私の作る『聖女の結界』を、煩わしく思っていたのだ。
『聖女の結界』は、魔物の侵入を完璧に阻むが、その強固さゆえに、結界の中にいる人々も、自由に外に出られなくなってしまう、『究極の牢獄』とでも形容すべきものだった。
230
あなたにおすすめの小説
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
悪役令嬢と呼ばれて追放されましたが、先祖返りの精霊種だったので、神殿で崇められる立場になりました。母国は加護を失いましたが仕方ないですね。
蒼衣翼
恋愛
古くから続く名家の娘、アレリは、古い盟約に従って、王太子の妻となるさだめだった。
しかし、古臭い伝統に反発した王太子によって、ありもしない罪をでっち上げられた挙げ句、国外追放となってしまう。
自分の意思とは関係ないところで、運命を翻弄されたアレリは、憧れだった精霊信仰がさかんな国を目指すことに。
そこで、自然のエネルギーそのものである精霊と語り合うことの出来るアレリは、神殿で聖女と崇められ、優しい青年と巡り合った。
一方、古い盟約を破った故国は、精霊の加護を失い、衰退していくのだった。
※カクヨムさまにも掲載しています。
醜貌の聖女と呼ばれ、婚約破棄されましたが、実は本物の聖女でした
きまま
恋愛
王国の夜会で、第一王子のレオンハルトから婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リリエル・アルヴァリア。
顔を銀の仮面で隠していることから『醜貌の聖女』と嘲られ、不要と切り捨てられた彼女は、そのまま王城を追われることになる。
しかし、その後に待ち受ける国の運命は滅亡へと向かっていた——
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~
銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。
少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。
ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。
陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。
その結果――?
聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます
香木陽灯
恋愛
公爵令嬢フローラ・クレマンは、首筋に聖女の証である薔薇の痣がある。それを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。
どうして自分なのか、やりたい人がやれば良いのにと、何度思ったことか。だからミシェルに相談したの。
「私は聖女になりたくてたまらないのに!」
ミシェルに言われたあの日から、私とミシェルの二人で一人の聖女として生きてきた。
けれど、私と第一王子の婚約が決まってからミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。
ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに……
なんて心配していたのに。
「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」
第一王子とミシェルに、偽の聖女を騙った罪で断罪させそうになってしまった。
本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。聖女の真の力を教えて差し上げます。
【完結】無能な聖女はいらないと婚約破棄され、追放されたので自由に生きようと思います
黒幸
恋愛
辺境伯令嬢レイチェルは学園の卒業パーティーでイラリオ王子から、婚約破棄を告げられ、国外追放を言い渡されてしまう。
レイチェルは一言も言い返さないまま、パーティー会場から姿を消した。
邪魔者がいなくなったと我が世の春を謳歌するイラリオと新たな婚約者ヒメナ。
しかし、レイチェルが国からいなくなり、不可解な事態が起き始めるのだった。
章を分けるとかえって、ややこしいとの御指摘を受け、章分けを基に戻しました。
どうやら、作者がメダパニ状態だったようです。
表紙イラストはイラストAC様から、お借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる