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第2話
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用済み――
別に自慢する気はないが、これまで十年間、一度も国内に魔物の侵入を許さず、聖女としての務めを果たしてきたのに、まさか、こんな冷たい言葉を投げかけられるなんて。
悲しみ以上に、悔しさが湧いてきた私は、ウルナイト殿下に抗議する。
「ウルナイト殿下、私は殊更に、自分の功績を主張しようとは思いません。……でも、それでも、『用済み』だなんて、あんまりじゃありませんか?」
ウルナイト殿下は、ふんと鼻で笑い、背中にいる魔獣によしかかるようにしながら、言葉を返す。
「事実なのだから、仕方ないでしょう。だいたい僕は、以前から『聖女の力』とやらが気に入らなかったんですよ。我がバグマルス王国は、世界でも有数の魔術先進国です。それが、聖女の作る結界に頼らなければ、魔物から国を守れないだなんて、カッコ悪いじゃないですか」
「カッコ悪いって……国を守るのに、カッコ良いも悪いもないでしょう?」
「それが、そうでもないんですよ。小娘一人に国防を任せているような国は、他国から舐められますからね。外交を有利に進めるためにも、やはり、ちゃんとした軍隊を持っていなければ」
私は、まるで置物のように動かない魔獣をちらりと見て、言う。
「その魔獣の群れが、『ちゃんとした軍隊』と呼べるのですか?」
「少なくとも、あなたのような小娘よりはマシでしょう。そしてこれは、僕だけではなく、国王陛下の意思でもあります。……そうですよね、父上」
ウルナイト殿下は、ずっと後ろの玉座に座っている国王陛下に、言った。国王陛下は、ウルナイト殿下と私の顔を見比べるようにして、ばつが悪そうに返事をする。
「ん? ん~、ま、まあ、そういうことに、なるかな。いやいや、ラスティーナ、悪く思わんでくれ。お前は、これまで良くやってくれた。一応、退職金くらいは出すよ。えっと、金貨十枚くらいでいいかな?」
……『まあ、そういうことに、なるかな』とは、一国の国王とは思えない、玉虫色の物言いである。
国王陛下は優柔不断で、いつも、ウルナイト殿下や大臣たちの言いなりだ。だから、国王陛下が私を庇ってくれるとは、最初から思っていなかったが、それでも、こうも薄情だと、さすがに呆れてしまう。
金貨十枚――
そこそこの大金ではあるが、十年間この国のために尽くしてきて、やっと貰えたのが、金貨十枚と、王族からの冷たい言葉だと思うと、情けなくてたまらなくなる。私は、せめて誇りだけは失わないように、毅然と言い放った。
「退職金なんて、いりません。私がもう用済みと言うなら、わかりました。今すぐ、この国を出ます」
別に自慢する気はないが、これまで十年間、一度も国内に魔物の侵入を許さず、聖女としての務めを果たしてきたのに、まさか、こんな冷たい言葉を投げかけられるなんて。
悲しみ以上に、悔しさが湧いてきた私は、ウルナイト殿下に抗議する。
「ウルナイト殿下、私は殊更に、自分の功績を主張しようとは思いません。……でも、それでも、『用済み』だなんて、あんまりじゃありませんか?」
ウルナイト殿下は、ふんと鼻で笑い、背中にいる魔獣によしかかるようにしながら、言葉を返す。
「事実なのだから、仕方ないでしょう。だいたい僕は、以前から『聖女の力』とやらが気に入らなかったんですよ。我がバグマルス王国は、世界でも有数の魔術先進国です。それが、聖女の作る結界に頼らなければ、魔物から国を守れないだなんて、カッコ悪いじゃないですか」
「カッコ悪いって……国を守るのに、カッコ良いも悪いもないでしょう?」
「それが、そうでもないんですよ。小娘一人に国防を任せているような国は、他国から舐められますからね。外交を有利に進めるためにも、やはり、ちゃんとした軍隊を持っていなければ」
私は、まるで置物のように動かない魔獣をちらりと見て、言う。
「その魔獣の群れが、『ちゃんとした軍隊』と呼べるのですか?」
「少なくとも、あなたのような小娘よりはマシでしょう。そしてこれは、僕だけではなく、国王陛下の意思でもあります。……そうですよね、父上」
ウルナイト殿下は、ずっと後ろの玉座に座っている国王陛下に、言った。国王陛下は、ウルナイト殿下と私の顔を見比べるようにして、ばつが悪そうに返事をする。
「ん? ん~、ま、まあ、そういうことに、なるかな。いやいや、ラスティーナ、悪く思わんでくれ。お前は、これまで良くやってくれた。一応、退職金くらいは出すよ。えっと、金貨十枚くらいでいいかな?」
……『まあ、そういうことに、なるかな』とは、一国の国王とは思えない、玉虫色の物言いである。
国王陛下は優柔不断で、いつも、ウルナイト殿下や大臣たちの言いなりだ。だから、国王陛下が私を庇ってくれるとは、最初から思っていなかったが、それでも、こうも薄情だと、さすがに呆れてしまう。
金貨十枚――
そこそこの大金ではあるが、十年間この国のために尽くしてきて、やっと貰えたのが、金貨十枚と、王族からの冷たい言葉だと思うと、情けなくてたまらなくなる。私は、せめて誇りだけは失わないように、毅然と言い放った。
「退職金なんて、いりません。私がもう用済みと言うなら、わかりました。今すぐ、この国を出ます」
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