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第3話
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その可愛げのない態度が不愉快だったのか、国王陛下は小さく「あっそう」とだけ言った。ウルナイト殿下が、くすくすと笑い、背を向けて歩き出した私に、さらに冷たい言葉を浴びせかける。
「ふふふ、ラスティーナさん。せっかくの父上のご厚意なんですから、金貨十枚、受け取っておいた方がいいと思いますけどね。あなたはこれから、無職になるわけですし。ふふ、ふふふ」
私は、ウルナイト殿下を無視した。
もうこの男と、口をききたくなかった。
ウルナイト殿下は、黙って歩き続ける私の代わりに、ペラペラと語り続ける。
「しかし、あなたが就職活動をする場合、職務経歴書に、なんて書けばいいんでしょうね。『前職は聖女でした』なんて書いても、誰も信じず、きっと、馬鹿にされるでしょうしね。ふふふふっ」
ウルナイト殿下の笑いに合わせて、どっと湧き上がる嘲笑。
王族だけではない、式典に出席していた重臣たちも、笑っているのだ。
彼らも、ウルナイト殿下と同じく、国防を聖女一人が担っていた状況を、不愉快に思っていたのだろう。だから今日、私を国から追放することができて、嬉しくてたまらないのだ。
……悔しいっ。
こんな奴らのために、十年間も必死になって、この国を守っていたなんて。
私は悔しさに、唇を噛んだ。
あまりにも強く噛みすぎて、血がにじんだが、それでも噛むのをやめられなかった。聖女の力が、防衛のための力ではなく、攻撃のための力だったなら、私は怒りと悔しさのあまり、この場にいる全員を攻撃していたかもしれない。
嘲笑を浴びながら、式典会場を去ろうとする私の背に、ウルナイト殿下の刺すような言葉が飛んで来る。
「ああ、そうそう。僕とあなたとの婚約についてですが、まあ、今更くどくど言わなくても、もう理解していると思いますけど、当然、破棄させていただきますね。それでは、さようなら」
私は相変わらず返事をせず、式典会場を出た。
噛み続けた唇は、自らの血で、赤く染まっていた。
・
・
・
私は身支度を整え、正門から国を出るために、表通りを歩いている。
式典には記者も多く参加していたので、『聖女追放』の一報は瞬く間に国中を駆けめぐったが、私を庇ってくれる国民はいなかった。
理由は、ハッキリしている。
国民たちは、私の作る『聖女の結界』を、煩わしく思っていたのだ。
『聖女の結界』は、魔物の侵入を完璧に阻むが、その強固さゆえに、結界の中にいる人々も、自由に外に出られなくなってしまう、『究極の牢獄』とでも形容すべきものだった。
「ふふふ、ラスティーナさん。せっかくの父上のご厚意なんですから、金貨十枚、受け取っておいた方がいいと思いますけどね。あなたはこれから、無職になるわけですし。ふふ、ふふふ」
私は、ウルナイト殿下を無視した。
もうこの男と、口をききたくなかった。
ウルナイト殿下は、黙って歩き続ける私の代わりに、ペラペラと語り続ける。
「しかし、あなたが就職活動をする場合、職務経歴書に、なんて書けばいいんでしょうね。『前職は聖女でした』なんて書いても、誰も信じず、きっと、馬鹿にされるでしょうしね。ふふふふっ」
ウルナイト殿下の笑いに合わせて、どっと湧き上がる嘲笑。
王族だけではない、式典に出席していた重臣たちも、笑っているのだ。
彼らも、ウルナイト殿下と同じく、国防を聖女一人が担っていた状況を、不愉快に思っていたのだろう。だから今日、私を国から追放することができて、嬉しくてたまらないのだ。
……悔しいっ。
こんな奴らのために、十年間も必死になって、この国を守っていたなんて。
私は悔しさに、唇を噛んだ。
あまりにも強く噛みすぎて、血がにじんだが、それでも噛むのをやめられなかった。聖女の力が、防衛のための力ではなく、攻撃のための力だったなら、私は怒りと悔しさのあまり、この場にいる全員を攻撃していたかもしれない。
嘲笑を浴びながら、式典会場を去ろうとする私の背に、ウルナイト殿下の刺すような言葉が飛んで来る。
「ああ、そうそう。僕とあなたとの婚約についてですが、まあ、今更くどくど言わなくても、もう理解していると思いますけど、当然、破棄させていただきますね。それでは、さようなら」
私は相変わらず返事をせず、式典会場を出た。
噛み続けた唇は、自らの血で、赤く染まっていた。
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私は身支度を整え、正門から国を出るために、表通りを歩いている。
式典には記者も多く参加していたので、『聖女追放』の一報は瞬く間に国中を駆けめぐったが、私を庇ってくれる国民はいなかった。
理由は、ハッキリしている。
国民たちは、私の作る『聖女の結界』を、煩わしく思っていたのだ。
『聖女の結界』は、魔物の侵入を完璧に阻むが、その強固さゆえに、結界の中にいる人々も、自由に外に出られなくなってしまう、『究極の牢獄』とでも形容すべきものだった。
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