「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ

文字の大きさ
12 / 19

第12話(ウルナイト視点)

しおりを挟む




「まだ聖女は戻ってこないのですか! 大小問わず、この大陸にあるすべての新聞社に通知を出すように頼んでから、もう4日も経つんですよ!? そろそろ来なければおかしいでしょう!?」

 崩れた王宮のすぐそば。
 突貫工事で作られた簡易的な砦の中で、僕は声を荒げた。

 近衛兵の一人が、負傷した肩を押さえながら言う。

「聖女が国を出てからもう半年以上たっていますから、もしかしたら彼女は、新聞も届かないような、はるか辺境にまで行ってしまったのかもしれません。あるいは……」

「あるいは? あるいは、なんだと言うんです?」

 近衛兵は、ほんの少し黙った後、弱々しく目をそらし、口を開いた。

「何もかもを知っていて、その上で、このバグマルス王国にもう戻ってくる気がないのかもしれません……聖女を追い出す際、我々は彼女を嘲笑い、かなり冷たい仕打ちをしましたから……」

「ぐっ、うっ、ぐううぅぅぅ……っ!」

 まるで殴られたかのような声を出し、僕は唸った。薄々、僕自身もそうではないかと思っていたが、改めて他人の口から告げられると、やはりショックだった。

 くそっ。
 ラスティーナめ。
 なんて薄情な女だ。

 ちょっと冷たい仕打ちを受けたくらい、何だと言うんですか。自分の故郷が崩壊の危機なんですよ? 慌てて戻って来るのが普通でしょう。まったく、『聖女』が聞いて呆れますね。

 ……まあいいです。
 戻ってこない聖女のことなど、もうどうでもいい。

 僕にはまだ、『切り札』があります。
 それはもうすぐ、到着するはずですからね。

 そう思い、椅子に腰かけ、腕を組んで待っていると、待ちわびた『切り札』はやって来た。……その『切り札』とは、かつて、王族に対する不敬罪で国外追放した、衛兵隊のトップ、ハーディン隊長である。ハーディンは以前と変わらぬ鋭い眼光で僕を見て、小さく頭を下げた。

「おひさしぶりです、ウルナイト殿下。大変なことになりましたな」

 僕は立ち上がり、ハーディンを歓迎した。こういう、いかにも武人的な男は苦手だが、このハーディンなら、生き残った衛兵隊を指揮し、魔獣を退けることができるに違いない。

「おお、ハーディン。良く来てくれました。さあ、話している時間が惜しい、さっそく衛兵隊を指揮し、魔獣どもを皆殺しにしてください」

「その前に、国王陛下にお目通り願いたいのですが」

「……父上は、死にました。父上も、この砦に避難しようとしたのですが、過度な美食で太った体では、満足に駆けることもできず、背後から魔獣の牙で首を断たれ、即死でした」

「そうですか、お気の毒に。……この砦には、あなたと衛兵しかいないようですが、大臣たちは?」
しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

悪役令嬢と呼ばれて追放されましたが、先祖返りの精霊種だったので、神殿で崇められる立場になりました。母国は加護を失いましたが仕方ないですね。

蒼衣翼
恋愛
古くから続く名家の娘、アレリは、古い盟約に従って、王太子の妻となるさだめだった。 しかし、古臭い伝統に反発した王太子によって、ありもしない罪をでっち上げられた挙げ句、国外追放となってしまう。 自分の意思とは関係ないところで、運命を翻弄されたアレリは、憧れだった精霊信仰がさかんな国を目指すことに。 そこで、自然のエネルギーそのものである精霊と語り合うことの出来るアレリは、神殿で聖女と崇められ、優しい青年と巡り合った。 一方、古い盟約を破った故国は、精霊の加護を失い、衰退していくのだった。 ※カクヨムさまにも掲載しています。

醜貌の聖女と呼ばれ、婚約破棄されましたが、実は本物の聖女でした

きまま
恋愛
王国の夜会で、第一王子のレオンハルトから婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リリエル・アルヴァリア。 顔を銀の仮面で隠していることから『醜貌の聖女』と嘲られ、不要と切り捨てられた彼女は、そのまま王城を追われることになる。 しかし、その後に待ち受ける国の運命は滅亡へと向かっていた——

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます

香木陽灯
恋愛
公爵令嬢フローラ・クレマンは、首筋に聖女の証である薔薇の痣がある。それを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。 どうして自分なのか、やりたい人がやれば良いのにと、何度思ったことか。だからミシェルに相談したの。 「私は聖女になりたくてたまらないのに!」 ミシェルに言われたあの日から、私とミシェルの二人で一人の聖女として生きてきた。 けれど、私と第一王子の婚約が決まってからミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。 ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに…… なんて心配していたのに。 「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」 第一王子とミシェルに、偽の聖女を騙った罪で断罪させそうになってしまった。 本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。聖女の真の力を教えて差し上げます。

【完結】無能な聖女はいらないと婚約破棄され、追放されたので自由に生きようと思います

黒幸
恋愛
辺境伯令嬢レイチェルは学園の卒業パーティーでイラリオ王子から、婚約破棄を告げられ、国外追放を言い渡されてしまう。 レイチェルは一言も言い返さないまま、パーティー会場から姿を消した。 邪魔者がいなくなったと我が世の春を謳歌するイラリオと新たな婚約者ヒメナ。 しかし、レイチェルが国からいなくなり、不可解な事態が起き始めるのだった。 章を分けるとかえって、ややこしいとの御指摘を受け、章分けを基に戻しました。 どうやら、作者がメダパニ状態だったようです。 表紙イラストはイラストAC様から、お借りしています。

処理中です...