「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ

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第13話(ウルナイト視点)

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「……大臣たちも、全滅です。父上と同じく、皆、丸々と太っていましたからね。誰も彼も、他人を押しのけて逃げようとしていましたが、足が遅すぎて、結局は無駄な努力でした。全員、ひと噛みで魔獣にやられてしまいましたよ」

「なるほど。ここに来るまでに、何匹か魔獣を見ましたが、彼らの俊敏な動きは見事でした。ふふ、堕落し、太った人間の動きなど、彼らにとっては止まって見えたことでしょう」

 緊急事態にもかかわらず、微笑を浮かべ、余裕のあるハーディン。その態度に、頼もしさを感じるのと同時に、少々苛立った僕は、大きく声を荒げる。

「魔獣を褒めてどうするのです! さあ、もうおしゃべりは充分でしょう! 早く魔獣どもを全員殺してきなさい! そのために、一度は国外追放したあなたを、わざわざ呼び戻したのですよ!」

「そうでしたね。あなたと国王陛下は、何かと諫言をする私を、『不愉快だ』『不敬である』『身の程をわきまえろ』と言い、追放したのでしたね。……そしてあなたたちは、あの聖女ラスティーナ様をも追放してしまった。この国のために、あんなに頑張っていた女性を。……なんて、罪深いことでしょう」

「な、なんです。なぜ今、そんな話をするのですか? あなたまさか、追放された恨みを晴らすために、今こうして、やって来たわけではないでしょうね?」

 ハーディンは、首を左右に振り、言う。

「いいえ。追放されたとはいえ、かつては仕えていた国ですから、そのような不義理は致しません。しかし私は、魔獣を駆逐するために来たのでもありません。……と言うより、あの魔獣は、われわれ人間の手で、どうこうできるような存在ではないのです」

「ど、どういうことですか……? あなた、魔獣について、何か知っているのですか……?」

 僕の問いに、ハーディンはどこか遠くを見つめるようにして、答える。

「もう何十年前になるでしょうか……はるか遠くの国で、一兵士として働いていた私は、一度だけ、魔獣を見たことがあるのです。魔獣は、ある日突然現れ、それまで国の内外で暴れていた魔物や、邪悪な心を持った人間たちを根こそぎ始末すると、まるで最初からいなかったかのように、消えてしまいました」

「…………」

「その国の神官たちが言うには、魔獣は神の使いであり、時として人の世に顕現し、人間の心を試すそうです。……心優しく、誠実な人間には恵みを。そして、身勝手で、利己的な人間には罰を与えるという形で」

「では、あなたはこう言いたいのですか? 今魔獣が暴れているのは、身勝手で利己的なバグマルス王国の人間に、罰を与えるためだと」

「そういうことになってしまいますね。しかし、まだこの国は滅び切っていない。魔獣はきっと、この国の人間に、悔い改めるチャンスをくれているのだと思います。だから私は、その事実を伝え、皆を諫めるために戻って来たのです」
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