27 / 144
第27話(デルロック視点)
しおりを挟む
現在時刻、午前10時。
王宮に仕える魔導師たちの中でも、特に優秀な者たちの治療を受け、私の体調は幾分か回復した。だが、あの毒々しい紫の霧は、さらに濃くなり、もはや日の光を遮るほどである。
これは、尋常な事態ではない。
私はもう一度、会議室に大臣たちを呼び出し、対策会議を開こうとした。
だが、集まった大臣は、先程の三分の一にも満たなかった。
ええい。何をやっているのだ、あの年寄りどもは。
大臣の代わりにやって来た使いの者を、私は叱責する。
「おい、貴様。厚生大臣は何故来ないんだ。健康を害する怪しい霧が立ち込めているのだぞ。こういう時こそ、厚生大臣の出番ではないのか」
使いの者は、青い顔で軽くせき込みながら、頭を下げた。
「ごほっ……ごほっ……も、申し訳ありません陛下。しかし、厚生大臣は、もう駄目です……ごほごほっ」
「なんだと? 駄目とは、どういう意味だ?」
「大臣は、先程の会議の後、お屋敷に戻ると、そのまま倒れられ、意識を失いました。……現在、かかりつけ医と治癒魔導師が懸命の治療を続けていますが、恐らく、あの様子では、二度と目を覚ますことはないでしょう……ごほっ」
私は、絶句した。
厚生大臣は、かなりの高齢だが、それでも、いまだに女遊びをやめられないような、精力に溢れた男だ。そんな男が、これほど短い期間で危篤状態になってしまうとは。
そのほかの大臣の使いにも話を聞いたが、皆、厚生大臣と同じような状況であり、それぞれが、それぞれの抱える医師や魔導師に命じて、なんとか延命治療を続けているが、もはや死は時間の問題といったところらしい。
そんな時、ふと思う。
民衆たちは、どうなっているのだろう? ……いや、だいたい、予想はつく。高度な医療を受けられる大臣たちですらこのザマなのだ。相当に酷い状態になっているに違いない。
王として、なんとかしなければ。
……だが、いったいどうすればいいのだ?
こんな異常な状況を打開する策など、あるのか?
そもそもこの霧は、いったいなんなのだ?
敵国の攻撃ではないとしたら、自然現象と考えるべきなのかもしれないが、たとえ、どこかの地割れから有毒なガスが発生したのだとしても、こんなに短時間で国全体を覆うようなことはないだろう。だいたい、地割れができるとしたら、その前に大きな地震か何かがあるはずだ。
くそっ。
いくら考えても、答えが出ない。
まるで、突然降ってわいた呪いのような霧だ。
頭を抱える私の前で、厚生大臣の使いの男は、激しくせき込んだ。
咳はどんどん激しくなり、とうとう男は、血を吐く。
自身の吐き出した血を、信じられないような目で見つめながら、男は、震える声で私に問いかけた。
「へ、陛下、陛下、な、なんとかしてください……いったい、今、この国で何が起こっているのですか……? ねえ、陛下、教えてください、教えてくださいよ……!」
王宮に仕える魔導師たちの中でも、特に優秀な者たちの治療を受け、私の体調は幾分か回復した。だが、あの毒々しい紫の霧は、さらに濃くなり、もはや日の光を遮るほどである。
これは、尋常な事態ではない。
私はもう一度、会議室に大臣たちを呼び出し、対策会議を開こうとした。
だが、集まった大臣は、先程の三分の一にも満たなかった。
ええい。何をやっているのだ、あの年寄りどもは。
大臣の代わりにやって来た使いの者を、私は叱責する。
「おい、貴様。厚生大臣は何故来ないんだ。健康を害する怪しい霧が立ち込めているのだぞ。こういう時こそ、厚生大臣の出番ではないのか」
使いの者は、青い顔で軽くせき込みながら、頭を下げた。
「ごほっ……ごほっ……も、申し訳ありません陛下。しかし、厚生大臣は、もう駄目です……ごほごほっ」
「なんだと? 駄目とは、どういう意味だ?」
「大臣は、先程の会議の後、お屋敷に戻ると、そのまま倒れられ、意識を失いました。……現在、かかりつけ医と治癒魔導師が懸命の治療を続けていますが、恐らく、あの様子では、二度と目を覚ますことはないでしょう……ごほっ」
私は、絶句した。
厚生大臣は、かなりの高齢だが、それでも、いまだに女遊びをやめられないような、精力に溢れた男だ。そんな男が、これほど短い期間で危篤状態になってしまうとは。
そのほかの大臣の使いにも話を聞いたが、皆、厚生大臣と同じような状況であり、それぞれが、それぞれの抱える医師や魔導師に命じて、なんとか延命治療を続けているが、もはや死は時間の問題といったところらしい。
そんな時、ふと思う。
民衆たちは、どうなっているのだろう? ……いや、だいたい、予想はつく。高度な医療を受けられる大臣たちですらこのザマなのだ。相当に酷い状態になっているに違いない。
王として、なんとかしなければ。
……だが、いったいどうすればいいのだ?
こんな異常な状況を打開する策など、あるのか?
そもそもこの霧は、いったいなんなのだ?
敵国の攻撃ではないとしたら、自然現象と考えるべきなのかもしれないが、たとえ、どこかの地割れから有毒なガスが発生したのだとしても、こんなに短時間で国全体を覆うようなことはないだろう。だいたい、地割れができるとしたら、その前に大きな地震か何かがあるはずだ。
くそっ。
いくら考えても、答えが出ない。
まるで、突然降ってわいた呪いのような霧だ。
頭を抱える私の前で、厚生大臣の使いの男は、激しくせき込んだ。
咳はどんどん激しくなり、とうとう男は、血を吐く。
自身の吐き出した血を、信じられないような目で見つめながら、男は、震える声で私に問いかけた。
「へ、陛下、陛下、な、なんとかしてください……いったい、今、この国で何が起こっているのですか……? ねえ、陛下、教えてください、教えてくださいよ……!」
82
あなたにおすすめの小説
コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。
あけちともあき
ファンタジー
「宮廷道化師オーギュスト、お前はクビだ」
長い間、マールイ王国に仕え、平和を維持するために尽力してきた道化師オーギュスト。
だが、彼はその活躍を妬んだ大臣ガルフスの陰謀によって職を解かれ、追放されてしまう。
困ったオーギュストは、手っ取り早く金を手に入れて生活を安定させるべく、冒険者になろうとする。
長い道化師生活で身につけた、数々の技術系スキル、知識系スキル、そしてコネクション。
それはどんな難関も突破し、どんな謎も明らかにする。
その活躍は、まさに万能!
死神と呼ばれた凄腕の女戦士を相棒に、オーギュストはあっという間に、冒険者たちの中から頭角を現し、成り上がっていく。
一方、国の要であったオーギュストを失ったマールイ王国。
大臣一派は次々と問題を起こし、あるいは起こる事態に対応ができない。
その方法も、人脈も、全てオーギュストが担当していたのだ。
かくしてマールイ王国は傾き、転げ落ちていく。
目次
連載中 全21話
2021年2月17日 23:39 更新
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
出来損ないと虐げられた公爵令嬢、前世の記憶で古代魔法を再現し最強になる~私を捨てた国が助けを求めてきても、もう隣で守ってくれる人がいますので
夏見ナイ
ファンタジー
ヴァインベルク公爵家のエリアーナは、魔力ゼロの『出来損ない』として家族に虐げられる日々を送っていた。16歳の誕生日、兄に突き落とされた衝撃で、彼女は前世の記憶――物理学を学ぶ日本の女子大生だったことを思い出す。
「この世界の魔法は、物理法則で再現できる!」
前世の知識を武器に、虐げられた運命を覆すことを決意したエリアーナ。そんな彼女の類稀なる才能に唯一気づいたのは、『氷の悪魔』と畏れられる冷徹な辺境伯カイドだった。
彼に守られ、その頭脳で自身を蔑んだ者たちを見返していく痛快逆転ストーリー!
辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する
鶴井こう
ファンタジー
【書籍化しました】
余分にポーションを作らせ、横流しして金を稼いでいた王国騎士団第15番隊は、俺を追放した。
いきなり仕事を首にされ、隊を後にする俺。ひょんなことから、辺境伯の娘の怪我を助けたことから、辺境の村に招待されることに。
一方、モンスターたちのスタンピードを抑え込もうとしていた第15番隊。
しかしポーションの数が圧倒的に足りず、品質が低いポーションで回復もままならず、第15番隊の守備していた拠点から陥落し、王都は徐々にモンスターに侵略されていく。
俺はもふもふを拾ったり農地改革したり辺境の村でのんびりと過ごしていたが、徐々にその腕を買われて頼りにされることに。功績もステータスに表示されてしまい隠せないので、褒賞は甘んじて受けることにしようと思う。
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
偽りの呪いで追放された聖女です。辺境で薬屋を開いたら、国一番の不運な王子様に拾われ「幸運の女神」と溺愛されています
黒崎隼人
ファンタジー
「君に触れると、不幸が起きるんだ」――偽りの呪いをかけられ、聖女の座を追われた少女、ルナ。
彼女は正体を隠し、辺境のミモザ村で薬師として静かな暮らしを始める。
ようやく手に入れた穏やかな日々。
しかし、そんな彼女の前に現れたのは、「王国一の不運王子」リオネスだった。
彼が歩けば嵐が起き、彼が触れば物が壊れる。
そんな王子が、なぜか彼女の薬草店の前で派手に転倒し、大怪我を負ってしまう。
「私の呪いのせいです!」と青ざめるルナに、王子は笑った。
「いつものことだから、君のせいじゃないよ」
これは、自分を不幸だと思い込む元聖女と、天性の不運をものともしない王子の、勘違いから始まる癒やしと幸運の物語。
二人が出会う時、本当の奇跡が目を覚ます。
心温まるスローライフ・ラブファンタジー、ここに開幕。
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる