追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ

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第27話(デルロック視点)

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 現在時刻、午前10時。

 王宮に仕える魔導師たちの中でも、特に優秀な者たちの治療を受け、私の体調は幾分か回復した。だが、あの毒々しい紫の霧は、さらに濃くなり、もはや日の光を遮るほどである。

 これは、尋常な事態ではない。
 私はもう一度、会議室に大臣たちを呼び出し、対策会議を開こうとした。

 だが、集まった大臣は、先程の三分の一にも満たなかった。

 ええい。何をやっているのだ、あの年寄りどもは。
 大臣の代わりにやって来た使いの者を、私は叱責する。

「おい、貴様。厚生大臣は何故来ないんだ。健康を害する怪しい霧が立ち込めているのだぞ。こういう時こそ、厚生大臣の出番ではないのか」

 使いの者は、青い顔で軽くせき込みながら、頭を下げた。

「ごほっ……ごほっ……も、申し訳ありません陛下。しかし、厚生大臣は、もう駄目です……ごほごほっ」

「なんだと? 駄目とは、どういう意味だ?」

「大臣は、先程の会議の後、お屋敷に戻ると、そのまま倒れられ、意識を失いました。……現在、かかりつけ医と治癒魔導師が懸命の治療を続けていますが、恐らく、あの様子では、二度と目を覚ますことはないでしょう……ごほっ」

 私は、絶句した。

 厚生大臣は、かなりの高齢だが、それでも、いまだに女遊びをやめられないような、精力に溢れた男だ。そんな男が、これほど短い期間で危篤状態になってしまうとは。

 そのほかの大臣の使いにも話を聞いたが、皆、厚生大臣と同じような状況であり、それぞれが、それぞれの抱える医師や魔導師に命じて、なんとか延命治療を続けているが、もはや死は時間の問題といったところらしい。

 そんな時、ふと思う。

 民衆たちは、どうなっているのだろう? ……いや、だいたい、予想はつく。高度な医療を受けられる大臣たちですらこのザマなのだ。相当に酷い状態になっているに違いない。

 王として、なんとかしなければ。

 ……だが、いったいどうすればいいのだ?
 こんな異常な状況を打開する策など、あるのか?

 そもそもこの霧は、いったいなんなのだ?

 敵国の攻撃ではないとしたら、自然現象と考えるべきなのかもしれないが、たとえ、どこかの地割れから有毒なガスが発生したのだとしても、こんなに短時間で国全体を覆うようなことはないだろう。だいたい、地割れができるとしたら、その前に大きな地震か何かがあるはずだ。

 くそっ。
 いくら考えても、答えが出ない。
 まるで、突然降ってわいた呪いのような霧だ。

 頭を抱える私の前で、厚生大臣の使いの男は、激しくせき込んだ。
 咳はどんどん激しくなり、とうとう男は、血を吐く。

 自身の吐き出した血を、信じられないような目で見つめながら、男は、震える声で私に問いかけた。

「へ、陛下、陛下、な、なんとかしてください……いったい、今、この国で何が起こっているのですか……? ねえ、陛下、教えてください、教えてくださいよ……!」
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