追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ

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第87話

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 ミシ……
 ミシ……

 一歩ずつ歩みを進めるたび、瓦礫が大きくきしむ。

 だが、建物の土台部分は基本的に安定しており、いきなり大崩れするようなことはなさそうだ。ただ、足場は悪いので、転ばないように注意しなければならず、歩く速さは、どうしてもゆっくりになる。

 瓦礫の上を、そろりそろりと前進しながら、私は会話を再開した。

「ねえ、もしもだけど、これから話がこじれにこじれて、戦いになっちゃうとするじゃない? んで、私と、そのフェルヴァさんが戦ったら、どっちが勝つと思う?」

 しばらくの沈黙の後、リーゼルはぼそりと言う。

「俺みたいな凡人に、怪物と怪物の戦いの結果を予想できるわけがない。ただ、真剣にやり合ったとしたら、どっちも無傷ってわけにはいかないと思う」

「そう。私、自分が傷つくのも、他人を傷つけるのも嫌だから、争いにならないことを祈るわ」

「きっと、大丈夫さ。きっとな……」

 そこで会話は切れ、私たちは黙った。
 ただひたすら静かに、瓦礫を踏みしめ、進んでいく。

 ミシ……
 ミシ……

 ミシ……
 ミシ……

 乾いた沈黙に耐えかねたかのように、リーゼルが、再び口を開いた。

「……なあ。以前、あんたに魔法で浮かされた時、『他人を自由自在に浮かせる魔法なんて、見たことない』って、俺、言っただろ? あれ、半分本当で、半分嘘なんだ」

「どういうこと?」

「前にフェルヴァが、同じような魔法を使うのを、ちょっとだけ見たことがあるんだよ。でも俺は、それを何かの間違いだと思い込むことにしたんだ。……妹が怪物になっていくのを、認めたくなかったから」

「言ってる意味が、よく分からないんだけど……」

「そうだな、ごめん。おかしなことを言ったな。忘れてくれ」

 そして私たちは、廃教会の礼拝堂にたどり着いた。

 瓦礫だらけだった入り口部分や通路とは違い、礼拝堂は比較的しっかりと形が残っていて、ステンドグラスから月明かりが差し込み、非常に神秘的な雰囲気である。

 その月明かりの下。

 三つの人影があった。

 私は、思わず小声で「あっ」と声を漏らす。

 三つの人影の内、二人には見覚えがあったからである。

 柔らかそうな桃色の髪をした、優しげな瞳の女の子――リリエンヌ・リリアンヌ。そして、燃えるような赤髪で、こちらを射殺さんばかりに睨んでいるシャーリー・シャールだ。
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