追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ

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第123話(リーゼル視点)

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「どうして? 理解に苦しむわ。この町の連中は、あいつのスキャンダルをきっかけに、アストラス家を蔑み、姉さんを蔑み、散々嫌がらせをしたじゃない。あんな奴ら、姉さんにとって、とてつもなく不愉快な連中でしょう? 死のうが生きようがどうでもいい……ううん、むしろ、死んでほしいと思うのが、普通じゃない?」

 脳裏に、苦い記憶が去来する。

 確かにフェルヴァの言う通り、俺は、この町の人たちに、かなりの嫌がらせを受けた。誹謗中傷は当たり前、時には、命の危険を感じるようなことも、多々あった。子供の姿に変えられたことで、誰も、俺がリーゼル・アストラスだとは気づかなくなり、その嫌がらせがなくなったのは、皮肉である。

 俺は、長く、重たいため息を漏らしてから、ゆっくりと口を開いた。

「……親父のしたことを思えば、この町の人々がアストラス家の人間を軽蔑するのは当たり前だ。俺は、誰のことも恨んじゃいない」

「ふぅん……さっすが姉さん、人間ができてるわねぇ。ふふ、それにしても、ふふっ、ふふっ、ふふふっ」

「何がおかしい」

「いえ、『親父』『親父』って、あんなけがらわしいゴミのことを、よくもそんなふうに呼べるものだと思って。何の罪もない、無垢な子供たちを欲望のはけ口にしていた、きたならしいクズ。紳士ぶった仮面の下に、下劣な本性を隠していた変態野郎。私なんて、あの声と顔を思い出すだけでゾッとするわ」

 容赦のない罵倒だった。

 俺自身も、親父のしたことは最低だし、おぞましいと思うが、不思議なことに、それでも、妹が父親の悪口を言うのを聞くのは、胸が痛かった。

「そうだな……その通りだ。確かに、親父のしたことは、けがらわしいと思う。でも、俺にとっては、優しい親父だった。だからきっと、心の底から、軽蔑しきれないんだと思う……家族の情って、そういうものだろう?」

 俺の問いかけに、まさしく『吐きそう』といった顔で、フェルヴァは言葉を返す。

「私の前で『家族』とか『情』とか、二度と言わないで。吐き気がするわ」

「フェルヴァ……」

「まあ、いいわ。姉さんがちゃんとルールを守るなら、とりあえず、この町の人間には手を出さない。約束してあげる。……それじゃ、いったんお別れね。半年の間にプラチナカードを集めて、姉さんが再び私に会いに来てくれるのを、楽しみに待ってるわ」

 そして俺は、フェルヴァと決別した。
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