二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第43話

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「えぇ~……でも、どんなタフガイだって、血の海に沈められたら、だいたいは死んじゃうでしょ……?」

「『血の海に沈めた』っていうのは、詩的な比喩表現です! ……いや、まあ、もの凄く血が出て、『あっ、このままじゃこの人、絶対死んじゃう』ってなった場面は、何度かありますけど……」

「ほら、やっぱり殺しちゃってるじゃないの」

「だから、殺してません! 出血多量でヤバイ感じになった人には、ちゃんとこの『エルフの秘薬』を使ってますから」

 そう言うと、エリスは懐から、きらりと輝く小瓶を取り出した。あのエルフィン・ジェイダイトと同じく、親指ほどのサイズの本当に小さな小瓶であり、中には薄紫色の液体が、半分ほど入っている。

 エリスは「どうぞ、ご確認ください」と言い、その小瓶を、私に手渡してくれた。
 私は、小瓶を手のひらの中で転がすようにしながら、揺れる液体を、じっと見る。

 なんだか、不思議な薬だわ……

 ついさっきは、薄紫色に見えたのに、太陽の光を受けたせいか、今度は琥珀色に見える。かと思えば、揺らめきの中、緑や赤にも変わっていき、最後には、七種類の色が一度に現れた。その七色の輝きは、変幻自在に姿を変える、液体状の虹を思わせた。

 見惚れたように小瓶の中身を見続ける私に、エリスはやや誇らしげに言う。

「この『エルフの秘薬』は、エルフの里でのみ採取できる薬草と毒草をいい感じにブレンドすることで完成する、奇跡の復活薬です。その効果は、まさに秘薬と呼ぶにふさわしく、一滴口に含むだけで、ありとあらゆる傷がだいたい完治し、ガンにも効いたり効かなかったりする、素晴らしいものなんですよ」

 早口でまくしたてられ、私は若干圧倒されながら頷いた。

「そ、そうなの。……で、結局、ガンには効くの? 効かないの?」

「すいません、それについては、まだエビデンスが足りないので、ハッキリとしたことは申し上げられません。エルフ薬学会の今後の調査と研究にご期待ください」

「そ、そう。まあ、ガンに効くかどうかはともかくとして、『ありとあらゆる傷がだいたい完治する』ってだけでも、充分価値のある秘薬だわ。一般のお店に流通してくれたら、たくさんの人が救われるでしょうけど、まあ、流通してないから、『秘薬』って言うんでしょうね」

「そうですね……エルフの多くは、人間の商人をあまり信用していませんし、エルフの作った薬が人間の商店に並ぶのは、難しいですね。それに、たとえエルフと人間の間に商業ネットワークがあったとしても、『エルフの秘薬』は、この小瓶程度の量でも、作るのにとても時間がかかりますから、普通の薬みたいに流通させることは不可能だと思います」
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