二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第72話

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 私はそれを掴むと、そのまま360度回転し、矢を放ったゴブリンの眉間に、丁寧に矢をお返しする。今まさに自分が放った矢が眉間に突き刺さったことで、ゴブリンはポカンとした顔のまま、絶命した。

 エリスが、若干慌てたように言う。

「お、お師匠様。ゴブリンの放った矢を素手で掴んではいけません。矢じりはもちろんですが、シャフトの部分にも痺れ薬が塗られている可能性があります」

「大丈夫よ、見て」

 私は言いながら、手のひらをエリスに見せる。

 手のひらの表面には、うっすらと防御結界が張られており、いうなれば結界のグローブのようになっていたので、矢には直接触っていないのである。

 エリスは、ホッと息を吐き、胸をなでおろした。

「さすがはお師匠様です。余計な心配でしたね」

「それじゃ、残り11匹。ちゃっちゃと片付けちゃいましょうか。たとえゴブリンでも、大人しい魔物なら殺したくはないけど、死体を弄んではりつけにしたり、胸の大小で女の価値を決めるような奴らに容赦する必要はないわ。誰が貧乳のペチャパイよ。ぶっ殺すわよこのゴブリンども」

「お師匠様、落ち着いてください。ゴブリンたちも、そこまで言ってません。それにお師匠様の胸は、別に小さくないと思います。成人女性の平均的サイズです」

「フォローありがとう。それじゃ、行くわよ」

 そして、戦いが始まった。
 そして、戦いが終わった。

 エリスがさっき言った通り、ゴブリンは決して弱い魔物ではなかったが、飛び抜けて強くもない。ハッキリ言って、私たちの敵じゃなかった。私とエリスは、三十秒と経たないうちに11匹のゴブリンを叩き潰した。

 私は呼吸一つ乱さずに、言う。

「ま、こんなもんね。私としたことが、ちょっと頭に血が上ってムキになっちゃったかしら、おほほほ」

 そんな私に、ちょっとだけ拗ねたような目を向けながら、エリスが呟く。

「ほ、ほとんどのゴブリンをお師匠様がやっつけてしまったので、私、『魔防壁』の特訓をする暇もありませんでした……」

「ごめんごめん、あなたの特訓の邪魔をする気はなかったんだけど、つい……」

 たった今エリスが述べた『魔防壁』とは、この一ヶ月間、私が指導し続けている技のことだ。エリスの使う『エルフ式魔術ボクシング』は、エルフ族の高い魔力を、拳での攻撃に転用する武術であり、防御技術に関しては一般的なボクシングと同等で、魔力を使用する場面はない。

 そこで私は、閃いた。

 聖女の結界のように、魔力で防御壁を作れば、エリスの『エルフ式魔術ボクシング』は、弱点であった守備が強化され、より完成された武術になるに違いないと。……で、誕生したのが『魔防壁』である。
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