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第71話
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「へえ……そりゃ凄いわ。人間だろうが他種族だろうが、夢を見ていようが見ていまいが、重要なのは実力で、他はどうでもいいってことね。まさにドライな、完全実力主義だわ」
そこで私とエリスは、話をやめた。
敵の気配を察知したからだ。
おっ。
来た来た。
岩壁にいくつかあいていた横穴から、身長140cm程度の、小さな魔物がわらわらと出てくる。爛々と輝く、異様に大きな眼球。そして、筋肉の張りつめた、ダークグリーンの肌。……これが、ゴブリンか。
数は、12体。
皆、しっかりとした甲冑や軽鎧を装着しており、手には剣、槍、短刀、クロスボウなど、様々な武器を持っている。12体の中でも、リーダーと思しき赤色の兜をかぶったゴブリンが『ぴいぃ』と指笛を鳴らすと、驚いたことに、ゴブリンたちは細かい指示をされることもなく、きちんとした陣形を組み、私とエリスを取り囲んだ。
私はちょっとだけビックリした感じで、隣のエリスに言う。
「なるほど。さっきあなた、『ゴブリンは集団戦が上手い』って言ってたけど、本当みたいね。丁寧に指示されてもいないのに、迷いなく私たちを包囲し、それぞれが、それぞれの攻撃範囲に上手く陣取ってる。何より感心するのは、ちゃんと、クロスボウの射線に仲間が入らないようにしてることだわ。相当実戦慣れしてるわね、こいつら」
「ええ。ゴブリンは、下手な軍隊よりも、よっぽど集団戦に慣れています。訓練などせず、ひたすら実戦の殺し合いで鍛え抜かれていますからね、実戦を生き抜いてきたゴブリンの大人は皆、経験豊富なつわものですよ」
その時、それまで一言も口を開かなかったゴブリンたちが、一斉に言葉を発し始めた。
「げぇげぇげぇ、げぇげぇげぇ」
「おんな、おんな、あたらしいおんな」
「おんな、おんな、おんなああああああああ!」
「おれ、ちちのでかいえるふ、もらう」
「ずるいぞ、おれも、ちちのでかいえるふ、ほしい」
「だめ。おまえ、もうかたほう、やる」
「やだ。おれ、ちちのでかいえるふ、ほしい」
「だめ、おまえ、ちちのでかくないほう」
「やだあああ。やだああああ。ちちのでかいほうがいいいい!」
「だめ! おまえ、ちちのでかくないほうでがまんする!」
「やだあああ! やだああああ! ちちのでかくないほう、やだああああ!」
イラッ。
……私は歯ぎしりをして、私の隣にいる乳のでかいエルフに言う。
「なんかムカつくわこいつら」
「お師匠様、落ち着いてください。ゴブリンはこちらの感情の乱れを敏感に察知します。そして、感情が乱れた人に対し……」
エリスの説明が終わる前に、何かが唸りを上げて飛んで来る。
それは、クロスボウの矢だった。
そこで私とエリスは、話をやめた。
敵の気配を察知したからだ。
おっ。
来た来た。
岩壁にいくつかあいていた横穴から、身長140cm程度の、小さな魔物がわらわらと出てくる。爛々と輝く、異様に大きな眼球。そして、筋肉の張りつめた、ダークグリーンの肌。……これが、ゴブリンか。
数は、12体。
皆、しっかりとした甲冑や軽鎧を装着しており、手には剣、槍、短刀、クロスボウなど、様々な武器を持っている。12体の中でも、リーダーと思しき赤色の兜をかぶったゴブリンが『ぴいぃ』と指笛を鳴らすと、驚いたことに、ゴブリンたちは細かい指示をされることもなく、きちんとした陣形を組み、私とエリスを取り囲んだ。
私はちょっとだけビックリした感じで、隣のエリスに言う。
「なるほど。さっきあなた、『ゴブリンは集団戦が上手い』って言ってたけど、本当みたいね。丁寧に指示されてもいないのに、迷いなく私たちを包囲し、それぞれが、それぞれの攻撃範囲に上手く陣取ってる。何より感心するのは、ちゃんと、クロスボウの射線に仲間が入らないようにしてることだわ。相当実戦慣れしてるわね、こいつら」
「ええ。ゴブリンは、下手な軍隊よりも、よっぽど集団戦に慣れています。訓練などせず、ひたすら実戦の殺し合いで鍛え抜かれていますからね、実戦を生き抜いてきたゴブリンの大人は皆、経験豊富なつわものですよ」
その時、それまで一言も口を開かなかったゴブリンたちが、一斉に言葉を発し始めた。
「げぇげぇげぇ、げぇげぇげぇ」
「おんな、おんな、あたらしいおんな」
「おんな、おんな、おんなああああああああ!」
「おれ、ちちのでかいえるふ、もらう」
「ずるいぞ、おれも、ちちのでかいえるふ、ほしい」
「だめ。おまえ、もうかたほう、やる」
「やだ。おれ、ちちのでかいえるふ、ほしい」
「だめ、おまえ、ちちのでかくないほう」
「やだあああ。やだああああ。ちちのでかいほうがいいいい!」
「だめ! おまえ、ちちのでかくないほうでがまんする!」
「やだあああ! やだああああ! ちちのでかくないほう、やだああああ!」
イラッ。
……私は歯ぎしりをして、私の隣にいる乳のでかいエルフに言う。
「なんかムカつくわこいつら」
「お師匠様、落ち着いてください。ゴブリンはこちらの感情の乱れを敏感に察知します。そして、感情が乱れた人に対し……」
エリスの説明が終わる前に、何かが唸りを上げて飛んで来る。
それは、クロスボウの矢だった。
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