二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第163話

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 何故、そんなふうに思うのだろう。

 理由は、分かっていた。

 少女の二発目の蹴りだ。

 獣人の多くは、手と足に、猫のように出し入れ自由な爪を持っている。
 熟練の鍛冶師が仕上げた武器に勝るとも劣らない強度と鋭さを持つ爪を。

 気を失った少女の足を確認すると、やはり立派な爪があった。彼女はその爪をわざわざ引っ込めて蹴りを放ってきたのだ。みぞおちに獣人の爪が突き刺されば、まあ、私なら死にはしないものの、かなりのダメージを食らったのは間違いない。

 しかし、少女はそれをしなかった。

 思えば、一度目の蹴りも強烈ではあったものの、狙いが微妙に急所を外れていた。頭を軽くかすめさせて、大怪我をさせずに意識だけを奪おうとしたのかもしれない。

 何故、そんなことをするのか。

 私は思った。
 この子は、理由があって盗みを働いたが、根は優しい子ではないかと。

 少女の話を、聞いてみたかった。

 だから、待つことにした。
 彼女が意識を取り戻すのを。

 ベッドに寝かせて三十分ほど経つと、少女が目を覚ました。がバッと体を起こし、私の姿を見つけると、こちらから声をかける前に、尋ねてきた。

「さっきの技、なんニャ?」

「さっきの技?」

「僕を後ろから掴んで、ガーッて投げたやつニャ」

「ジャーマン・スープレックス。レスリングの技よ。痛かったかしら?」

「痛かったどころじゃないニャ。僕じゃなきゃ死んでたニャ」

 少女はジトッとした目でこちらを見つめながら、先程打ち付けた後頭部を擦る。

「ごめんなさいね。でも、あなたが私のお金を盗もうとしたのも悪いと思うけどね」

「盗もうとしたわけじゃないニャ。その、お金の匂いがしたから、ちょっとだけ借りようと思っただけニャ」

「へえ。お金に匂いがあるなんて、初めて聞いたわ」

「人間の嗅覚じゃ分からんニャ。でも僕たち獣人は鼻が利くから、たくさん金貨があるとすぐ分かるニャ」

 少女は自慢げにえっへんと胸を張った。

 この世界の通貨――ゴールドは、五種類のサイズの違う金貨からなる。

 親指の爪と同じ程度の大きさの1ゴールド金貨。それより一回り大きい10ゴールド金貨。それよりさらに一回り大きい100ゴールド金貨といった具合に、価値が上がるにつれて少しずつ大きくなるのだ。
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