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第二十六章
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「七星おめでとー」
「ななちゃん、おめでとー」
二人が一斉に言葉をくれ、ジュースの入ったグラスをカチンっと軽く当てる。
誕生日から一週間後のこと。
「ごめんなー当日お祝いに来れなくて」
「ごめんねー」
「仕方ないよー、みんないろいろ用事あるし。忙しいのに家まで来てくれてありがとう」
「ななちゃん大学生になっても相変わらずイイコ」
明がグラスを置いてぎゅっとすれば、
「七星はそのままでいろよなー」
大地も反対側からぎゅっとしてくれる。
相変わらずの二人に囲まれ、僕のほうがほっとする。
「樹は今年もだめかー。ガッコの夏期講習行ってる聞いてるけど、今日も?」
「んー……」
少し言い淀んで。
「もうお盆明けまでないはずなんだけど……」
「あー、ほんと、意固地なヤツだねぇ。そのうち我慢出来ずに会いに来るって思ったけど、大間違いかも。ボクの予想を上回ってるわ~」
呆れたように言う。
僕はくすっと笑って。
「ですね。いっくんならやり通す気がします」
はぁと明が大げさに溜息を吐く。
「でもお祝いの言葉とプレゼントは貰いました」
「ふーん」
「へぇなになに~何を貰ったの~」
大地は興味なさそうに相槌を打つが、明のほうは興味津々だ。そういえば、今まで貰ったプレゼントの話はしたことがなかったかも知れない。
僕は立ち上がってベランダに置いた鉢を抱えて見せた。
「これです」
「花?!」
二人同時に驚く。
(やっぱり、男に花って、可笑しいよね?)
二人の反応を見て改めてそう思う。ベランダに鉢を戻して元の場所に座る。
「ユーフォルビア・ダイアモンドフロストって言う花だそうですよ」
「へえ知らない名前だけど、可愛い花だねぇ。樹よくこんな花知ってるな。余り興味なさそうだけど」
「ですよね。卒業式の時にもくれたし」
僕の話を聞きながらスマホを弄っている明が「えっ?!」と声をあげた。
「昔の彼女とかにあげたことあるのかなー」
「そんなの聞いたことないけどぉ~」
隣にいるはずの明の声が後ろから聞こえる
「ね、これって」
「わ」
僕の背中に回って何やらこそこそと話しているようだ。
「城河、案外ロマンチストか」
あはははと二人で笑っている。
なんの話だろうと思っていると、また元の位置に戻って来た。
「それより、さっきの話初耳」
「さっきの話って?」
「だから~卒業式に花! だよ」
「ああ」
あの後それぞれ進学準備もあり話す機会もなかったし、大地の誕生日の時には今更って感じだった。
僕はスマホを開いて、撮ってあった写真を見せる。
「これなんですけど」
「あら、可愛い。ななちゃんに似合ってる感じ──チューリップと?」
やはりもう一種類の花の名は知らないらしい。
「ジャスミンっていう花だそうです」
「ジャスミンねぇ……なんかこの花にこだわりが」
明はまたもスマホを弄り始めた。
「どうでしょう? なんかいろいろ一人ごとのようなこと言って一人で完結してたんですけど」
「どんなこと?」
「ほんとは赤い薔薇が、とか。百八本とか三百六十五本あげたいとか」
「樹…………」
それを聞いて明が絶句した。
じっと僕の顔を見ている。
「メイさん? 穴空きそうです」
「あ、ごめん」
彼はがしがし頭を掻き始めた。
(わ、なに? そんな驚くような何かが?!)
ちょっと不安になっていると、
「アイツも大概まどろっこしいヤツだなぁ。はっきり言えばいいのに、それともカッコつけてるの?」
急に半分怒ったような口調だった。
「ななちゃんも花には余り興味ない感じかなー。リンク貼ったからあとで見てやって」
「え、あ、はい」
「たぶん必死で調べたんだろうから」
「?」
なんだかよくわからないまま、この話はぶちっと断ち切られた。
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