【完結】ダンスパーティーで騎士様と。〜インテリ俺様騎士団長α×ポンコツ元ヤン転生Ω〜

亜沙美多郎

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本編

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 料理長はあの時の状況を本当に何も知らないようで、そこは安心したが、リアム様の噂をどこで聞いてきたのかは謎に包まれている。

「それがな、従業員だと言ったんだよ!!」

「何が?」

「リアム様の! 気になるひ・とっ!!」

 どうだ、驚いたか!? とでも言いたげに今度はテーブルに身を乗り出して言う。丸い腹がテーブルに支えてる。

「はぁぁ? じゃあ、取り巻きの女共はどうなるんだよ! 俺、あの日の客に散々なこと言われたんだぜ!」

 料理長は俺の聞いているのか、聞いていないのか、分からないような態度だ。俺の愚痴などそっちのけで話を進める。

「それでな、もうすぐ一ヶ月経つってのに、その人に会えないと言って……」

「ちょっと待って!? っていうか誰が言ったんだよ、その噂」

「人から人へと渡って、風にも乗りつつ俺のところまで話が来たんじゃないか。ホテルの従業員が言うんだ。間違いないだろう」

 ……それ、一番信用ないやつじゃん。


「それに、マヒロの教育係だったやつがいたんだろ?」

「ジェイク?」

 今度はジェイクの名前まで出てきた。あの日以来ジェイクとは会っていない。

 急にその名前を出されてドキリとした。

「ジェイクが、どうしたの?」

「うん、マヒロには俺がいるから安心しろって伝えてほしいって。それはマヒロの助っ人を頼みに来たやつが言ってたぜ」

 ジェイクは俺を怒っていないのか。

 もう友達どころか、会うことすらないと思っていた。

 もしまた会えるなら、あの日のお礼が言いたい。

「……で、そのパーティーはいつなの?」

「おっ! 行ってくれる気になったか? パーティーは明日だ。まあ、お前もあの日会場にいたからってくらいのもんだろう。そこは気負わなくてもいい。リアム様の気になる相手がマヒロなんて考え難いしな! ガハハ!! ……それよりも、仕事はしっかりこなしてくるんだぞ!」

「分かってるよ!!」

 高級ホテルの料理長が下品に笑いやがって……。絶対面白かって後々話を聞きたいだけじゃないか。

 結局、料理長からの話はそれだけだった。

 昇格への道のりはまだまだ遠そうだ。

 明日なんて……。気が重い。

 リアム様の姿なんて見たくもない。もし次も発情してしまったら……、今度こそ俺は職を失う。

 いや、でも前は抑制剤を飲んでなかったのが原因だ。

 あれ以来、先生の指示通りにちゃんと服用を続けてるし、きっと問題ないだろう。

 それに、何かあってもジェイクがまた助けてくれる……って!!

 もうジェイクにも迷惑はかけちゃダメだ。しっかりしろ、俺!!

 何を言っても引き受けたものは仕方ない。

 明日、俺がリアム様の気になる相手じゃなかったって分かればそれでいいんだから。

 気持ちを切り替えて、その日の仕事へと戻る。

 今日もバカほど忙しかった。

 毎日毎日、よくそんなに踊ってられるな。この世界の人たちは。

 ふぅっとため息を吐くと、下げられてきた皿の山に手を伸ばした。
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