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本編
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途中からは意識を失っていた。
リアム様はベッドに俺を寝かせて以来、一度たりとも触れてこなかった。
俺を探していたと言っておきながら、ヒートで苦しんでいるΩを目の前に触れもしないなんて……。
どうやらあのまま朝までぐっすりと眠っていたらしく、目が覚めると、窓から朝日が差し込んでいた。
「目が覚めたようだな。気分は?」
「えっ? リ、リアム様? なんで?」
ベッドに腰を下ろして俺の寝顔を眺めている。
いつからそうしてたんだろう。
「昨夜は先生が強めの抑制剤を注射してくれた。今日一日くらいは保つみたいだが……」
「あの。なんでリアム様が俺をこんなところに連れてきた……ましたか?」
訳がわからない。
選ばれる理由がない。
厨房の下っ端の下っ端である俺が。しかもΩの俺が。
「ずっと君を探していたんだ。あの日、私と目が合ったのを忘れたとは言わせないよ? 強く惹きつけられたはずなのだから」
「どうして、そんなの言いきれますのか? 俺が覚えてないって言ってしまうと、どうなることですの?」
「……無理して敬語を使わなくていい。あの従業員には親しく喋っていただろう?」
「ジェイクは……。同志みたいなものですのに……」
リアム様は声を出して笑った。
笑顔は意外にも無邪気で驚いた。
(こんな顔で笑うんだ)
「わ、笑っても!! リアム様が偉い人だってくらいは分かりますから!!」
「じゃあ、お願いするとしよう。普通に喋ってくれ。昨日の従業員とのように」
そんな簡単に言われても、直ぐにできるもんじゃない。
「聞いても良いのですか?」
「なんだ?」
「なんで俺を探してたの? ……でしょう、か?」
「君が、私の運命の番だからだよ」
「はぁぁあああっっ??? なんで? そんなの一回会っただけで分かるわけない!! ……ですけども」
つい、リアム様に向かってガンを飛ばしてしまった。
でも今のはリアム様が悪い。突然『運命の番』なんて言われて驚かないヤツなんていない。
それにしても、思わず若かりし頃の癖が出ちゃうとは、俺もまだまだ……
「なんだ? 誘っているのか?」
睨んでるんだよ!! なんでこの顔が誘ってる顔に映るんだ?
ベッドのクッションを一つ掴み、勢いつけて顔を埋めた。
「そんな上目遣いで頬を膨らますなんて、直ぐにでも私を欲しているのかと思うじゃないか。しかし、たった一目で運命を感じたのは、私だけではないだろう?」
枕の上から指を突っ込み覗き込む。
「何よりの証拠が、君のそのヒートだ。一回目では確信が持てなかった。だからどうしても、もう一度会いたかったのだ」
「で、まんまと俺がヒートを起こした……」
「そうだ」
俺は枕から目だけを出し、それでも視線は外して尋ねた。
「それだけで運命の番なんて決めつけていい……大丈夫なの? ですかな?」
「今は抑制剤が効いているから平気だろうが、それが切れたら……。次こそは自覚する他ないと思うよ」
リアム様は至って穏やかなままだ。
きっと俺がどんなに言い返しても、上手く丸め込まれるんだ。
「……じゃあ、なんで昨日、少しも触れなかったの?」
「君は触れてほしかった?」
「ちがっ!! そんなんじゃなくて!!」
「……やっと私の顔を見たね」
吸い込まれそうな瞳はグリーン掛かっていて、一度目が合ってしまえば逸らせなくなる。
「昨日の状態で私が君に触れてしまえば、もう君が会ってくれなくなることくらい分かる」
「じゃあ、俺とリアム様には次もあるってこと?」
「ある」
「なんで言い切れますのですか?」
「君は私のことが好きだよ。本能でね」
リアム様は満足そうに微笑んで、「朝食を食べよう」と言って立ち上がった。
リアム様はベッドに俺を寝かせて以来、一度たりとも触れてこなかった。
俺を探していたと言っておきながら、ヒートで苦しんでいるΩを目の前に触れもしないなんて……。
どうやらあのまま朝までぐっすりと眠っていたらしく、目が覚めると、窓から朝日が差し込んでいた。
「目が覚めたようだな。気分は?」
「えっ? リ、リアム様? なんで?」
ベッドに腰を下ろして俺の寝顔を眺めている。
いつからそうしてたんだろう。
「昨夜は先生が強めの抑制剤を注射してくれた。今日一日くらいは保つみたいだが……」
「あの。なんでリアム様が俺をこんなところに連れてきた……ましたか?」
訳がわからない。
選ばれる理由がない。
厨房の下っ端の下っ端である俺が。しかもΩの俺が。
「ずっと君を探していたんだ。あの日、私と目が合ったのを忘れたとは言わせないよ? 強く惹きつけられたはずなのだから」
「どうして、そんなの言いきれますのか? 俺が覚えてないって言ってしまうと、どうなることですの?」
「……無理して敬語を使わなくていい。あの従業員には親しく喋っていただろう?」
「ジェイクは……。同志みたいなものですのに……」
リアム様は声を出して笑った。
笑顔は意外にも無邪気で驚いた。
(こんな顔で笑うんだ)
「わ、笑っても!! リアム様が偉い人だってくらいは分かりますから!!」
「じゃあ、お願いするとしよう。普通に喋ってくれ。昨日の従業員とのように」
そんな簡単に言われても、直ぐにできるもんじゃない。
「聞いても良いのですか?」
「なんだ?」
「なんで俺を探してたの? ……でしょう、か?」
「君が、私の運命の番だからだよ」
「はぁぁあああっっ??? なんで? そんなの一回会っただけで分かるわけない!! ……ですけども」
つい、リアム様に向かってガンを飛ばしてしまった。
でも今のはリアム様が悪い。突然『運命の番』なんて言われて驚かないヤツなんていない。
それにしても、思わず若かりし頃の癖が出ちゃうとは、俺もまだまだ……
「なんだ? 誘っているのか?」
睨んでるんだよ!! なんでこの顔が誘ってる顔に映るんだ?
ベッドのクッションを一つ掴み、勢いつけて顔を埋めた。
「そんな上目遣いで頬を膨らますなんて、直ぐにでも私を欲しているのかと思うじゃないか。しかし、たった一目で運命を感じたのは、私だけではないだろう?」
枕の上から指を突っ込み覗き込む。
「何よりの証拠が、君のそのヒートだ。一回目では確信が持てなかった。だからどうしても、もう一度会いたかったのだ」
「で、まんまと俺がヒートを起こした……」
「そうだ」
俺は枕から目だけを出し、それでも視線は外して尋ねた。
「それだけで運命の番なんて決めつけていい……大丈夫なの? ですかな?」
「今は抑制剤が効いているから平気だろうが、それが切れたら……。次こそは自覚する他ないと思うよ」
リアム様は至って穏やかなままだ。
きっと俺がどんなに言い返しても、上手く丸め込まれるんだ。
「……じゃあ、なんで昨日、少しも触れなかったの?」
「君は触れてほしかった?」
「ちがっ!! そんなんじゃなくて!!」
「……やっと私の顔を見たね」
吸い込まれそうな瞳はグリーン掛かっていて、一度目が合ってしまえば逸らせなくなる。
「昨日の状態で私が君に触れてしまえば、もう君が会ってくれなくなることくらい分かる」
「じゃあ、俺とリアム様には次もあるってこと?」
「ある」
「なんで言い切れますのですか?」
「君は私のことが好きだよ。本能でね」
リアム様は満足そうに微笑んで、「朝食を食べよう」と言って立ち上がった。
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