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本編
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「マヒロ? どうして降りない?」
リアム様が俺に手を差し出しているが、俺は馬車の一番奥で身を縮め、降りようとはしなかった。
「リアム様の家が、こんな豪邸だなんて聞いてない!!」
「それはそうだ。言った記憶もない」
「なんで言ってはくれなかったですか?」
リアム様がまた馬車に乗り込んできた。大きなため息を吐いて言う。
「言えばマヒロは付いて来たか?」
「………………」
そんなの来ないに決まっている。全速力で逃げた自信がある。
「ここって王様が住む所? なのでしょ?」
「そうではない。別に普通だろう」
こんな豪邸が普通なわけないだろう!!
「俺は騎士団長がこんなお金持ちなんて、今初めて知ったですよ!!」
「まあ、そう怪訝な顔をするな。可愛い顔が台無しだ。私の部屋へ案内しよう」
今度こそ俺の手を取ると、リアム様に引っ張り出され玄関の前に降り立ってしまった。
リアム様は適当な召使いに声を掛け、ティータイムの準備を命じた。
部屋までの移動中、俺はなるべくリアム様の背中に顔を埋め、周りが見えないようにした。
番になる前に、なんでもっと素性調査をしなかったのか、自分の馬鹿さ加減にうんざりしてしまう。
これだから、いつまで経ってもポンコツなんだ!!
でもこんな大事なプロフィールは初めに言うべきではないのか? それを黙って番になって、こんな所に連れて来られても、結局は周囲に反対されて追い出されて……路頭に迷って……。
(死ぬ!? 俺、死ぬ??)
嫌だ。そんなの嫌だ!!
発情していたとはいえ、なぜリアム様を煽ったりしたんだ、俺の馬鹿野郎!!
何? 後悔しても遅い? それを分かっているから今こうして後悔してるんだろう!!
(歯型が消えてたりしてないかな……)
そっと頸を撫でてみる。そこにはしっかりと歯型の痕が刻み込まれていた。
「歯型が消えていたら、逃げたか?」
なんで俺が考えていることがバレたんだ!!
番になったらΩの気持ちが読み取れるとか?
「そ、そんなわけ……」
背中に顔を埋めたまま答える。
「前を見ないと転ぶよ」
……その時は道づれにしてやる。それでちょっとは痛い目にあって、その俺様ご都合主義を反省しろ。
っていうか、どこまで進めばリアム様の部屋に着くんだ? もう角を何回曲がったかも分からない。
これから、この豪邸で住むって……ことだよな?
環境が変わりすぎて、理解が追いつかない。心の準備すらできないまま連れて来られたんだ。
いっそここの使用人にしてもらえないか、後で交渉してみよう。
「ほら、マヒロ。着いたよ」
ドアの開く音がした。ようやくリアム様の背中から顔を上げ、室内を見渡した。
「ひっっっろーーー!!!」
さっきまでいたホテルの部屋もかなり広々としていたが、そんなのは比にもならない。
部屋に入るとすぐにリビングのように広い空間が広がっている。リアム様一人の部屋のはずなのに、ソファーなんて五人くらい座れるんじゃないか?
ということはこことは別に寝室があるんだよな? 収納とかも一切ここには置かれてない。
ここは、ゆっくりするためだけの部屋ということか!!
南向きのガラス張りのドアからバルコニーへと続いている。
きっと、さっきの噴水なんかも見下ろせるのだろう。
こんな贅沢な環境で育てば、そりゃ誰でも俺様に育つに決まっている。
「マヒロ、早速で悪いが仕事があるんだ。夕方までここでゆっくり休んでいてくれ。眠くなれば、あの奥の扉が寝室だ」
「ハイ、ドーゾ。イッテラッシャイ」
自分の想像以上に俺は緊張している。
引きつった笑顔をリアム様に向けた。
リアム様が俺に手を差し出しているが、俺は馬車の一番奥で身を縮め、降りようとはしなかった。
「リアム様の家が、こんな豪邸だなんて聞いてない!!」
「それはそうだ。言った記憶もない」
「なんで言ってはくれなかったですか?」
リアム様がまた馬車に乗り込んできた。大きなため息を吐いて言う。
「言えばマヒロは付いて来たか?」
「………………」
そんなの来ないに決まっている。全速力で逃げた自信がある。
「ここって王様が住む所? なのでしょ?」
「そうではない。別に普通だろう」
こんな豪邸が普通なわけないだろう!!
「俺は騎士団長がこんなお金持ちなんて、今初めて知ったですよ!!」
「まあ、そう怪訝な顔をするな。可愛い顔が台無しだ。私の部屋へ案内しよう」
今度こそ俺の手を取ると、リアム様に引っ張り出され玄関の前に降り立ってしまった。
リアム様は適当な召使いに声を掛け、ティータイムの準備を命じた。
部屋までの移動中、俺はなるべくリアム様の背中に顔を埋め、周りが見えないようにした。
番になる前に、なんでもっと素性調査をしなかったのか、自分の馬鹿さ加減にうんざりしてしまう。
これだから、いつまで経ってもポンコツなんだ!!
でもこんな大事なプロフィールは初めに言うべきではないのか? それを黙って番になって、こんな所に連れて来られても、結局は周囲に反対されて追い出されて……路頭に迷って……。
(死ぬ!? 俺、死ぬ??)
嫌だ。そんなの嫌だ!!
発情していたとはいえ、なぜリアム様を煽ったりしたんだ、俺の馬鹿野郎!!
何? 後悔しても遅い? それを分かっているから今こうして後悔してるんだろう!!
(歯型が消えてたりしてないかな……)
そっと頸を撫でてみる。そこにはしっかりと歯型の痕が刻み込まれていた。
「歯型が消えていたら、逃げたか?」
なんで俺が考えていることがバレたんだ!!
番になったらΩの気持ちが読み取れるとか?
「そ、そんなわけ……」
背中に顔を埋めたまま答える。
「前を見ないと転ぶよ」
……その時は道づれにしてやる。それでちょっとは痛い目にあって、その俺様ご都合主義を反省しろ。
っていうか、どこまで進めばリアム様の部屋に着くんだ? もう角を何回曲がったかも分からない。
これから、この豪邸で住むって……ことだよな?
環境が変わりすぎて、理解が追いつかない。心の準備すらできないまま連れて来られたんだ。
いっそここの使用人にしてもらえないか、後で交渉してみよう。
「ほら、マヒロ。着いたよ」
ドアの開く音がした。ようやくリアム様の背中から顔を上げ、室内を見渡した。
「ひっっっろーーー!!!」
さっきまでいたホテルの部屋もかなり広々としていたが、そんなのは比にもならない。
部屋に入るとすぐにリビングのように広い空間が広がっている。リアム様一人の部屋のはずなのに、ソファーなんて五人くらい座れるんじゃないか?
ということはこことは別に寝室があるんだよな? 収納とかも一切ここには置かれてない。
ここは、ゆっくりするためだけの部屋ということか!!
南向きのガラス張りのドアからバルコニーへと続いている。
きっと、さっきの噴水なんかも見下ろせるのだろう。
こんな贅沢な環境で育てば、そりゃ誰でも俺様に育つに決まっている。
「マヒロ、早速で悪いが仕事があるんだ。夕方までここでゆっくり休んでいてくれ。眠くなれば、あの奥の扉が寝室だ」
「ハイ、ドーゾ。イッテラッシャイ」
自分の想像以上に俺は緊張している。
引きつった笑顔をリアム様に向けた。
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