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本編
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ホテルを出る時に、ジェイクが見送りに来てくれた。
五日間はホテルで過ごすと思っていたが、予定よりもだいぶ早く出発する運びとなり、慌てて会いに来たそうだ。どこまでもいい奴だな、と思う。
番になった報告をすると、一瞬目を見開き、その後すぐニッコリと微笑んで「おめでとう」と言ってくれた。
「これからラミレス邸まで?」
「ああ、そうだ。君には随分世話になった。礼を言う」
「いえ、仕事ですので」
ジェイクは俺たちが番になったことは誰にも言わないから安心していいよ、と言う。
「マヒロ、またいつでも遊びにおいで」
「ジェイク、色々全部ありがとう。お前がいてくれて本当によかった」
とんでもない。と首を横に振る。
「さあ、乗って……」
ジェイクと握手を交わすと、リアム様に促され馬車へ乗り込んだ。
今日の馬車はカナリ広い。昨日乗った馬車とはランクが違う。
黒塗りのボディーに金ピカの装飾が施され、ドアには何かの紋章がデカデカと付いている。昨日乗ったのにはドアに小さな窓が付いているだけだったが、これには大きなガラス張りの窓があり、とても開放的だ。
まるで、おとぎ話のお姫様にでもなったかのような気分になる。
リアム様は優雅に街の様子を眺めている。
時折、こちらに手を振ってくる住人に手を振って応えていた。
やはり有名人なんだ。と感心して、俺は移動中ずっとリアム様を観察していた。
リラックスしているだろうに、背筋はピンと伸びていて、手の振り方なんかも気品溢れている……ように感じる。
業務用であろう笑顔だって、一般人とは違う気高さを醸し出している……気がする。
街の人はみんな嬉しそうにリアム様を見ていた。向かい合って座っている俺には誰も興味がないようで、誰とも目が合わなかった。
みんなリアム様に気づいて欲しくて一生懸命なのだ。
これが騎士団長の威厳というやつか。ホテルの中だけでは分からなかった、全く違う表情を垣間見ることができた。
やがて馬車は高い塀に沿って進む。どこまで続くんだろう……と思うほど長い真っ白な塀には、合間合間にロートアイアンのフェンスになっている部分があり、そこから中を伺うことができた。
敷地の中は度肝を抜かれるほどの豪邸と、緑豊かな庭には噴水も見えた。
(噴水とかあるんだ!?)
凄すぎる。どう見ても大金持ちの屋敷だ。
噂には聞いていたが、想像以上にゴージャスな家だった。
こんなの前世だとネットでしか見たことがない。生活感のない外観は、本当に人が住んでいるのかと不思議に思ってしまう。
塀沿いのずっと向こうに視線を送ると、人が立っているのが見える。
きっとあそこが門だろう。
「マヒロ、もうすぐ我が家だ」
街を離れた頃から無口だったリアム様が口を開く。
「え? 家なんて……どこにあるの?」
キョロキョロと辺りを見渡しても、豪邸の周辺にはなにもない。
馬車はスピードを落とし、この豪邸の門の前で停まった。
「待って!! まさか、リアム様の家って!!! ここですのか!?」
ビックリしすぎて声が裏返ってしまった。
門番が重いロートアイアンの門を両側へ開けていく。
完全に門が開くと、また前進し始めた。間違いなく馬車はこの豪邸の敷地内へと進んでいく。
何かの間違いではないのだろうか。
騎士団長ってこんな凄い家に住んでいるのか。
あんぐりと開いた口が塞がらない。
そんな俺の心情は無視して、馬車は滑らかな石畳の上を進み、噴水に沿って迂回し、その向こう側にある玄関の前で停まった。
「さあ、着いた」
馬車の扉が開かれた。
五日間はホテルで過ごすと思っていたが、予定よりもだいぶ早く出発する運びとなり、慌てて会いに来たそうだ。どこまでもいい奴だな、と思う。
番になった報告をすると、一瞬目を見開き、その後すぐニッコリと微笑んで「おめでとう」と言ってくれた。
「これからラミレス邸まで?」
「ああ、そうだ。君には随分世話になった。礼を言う」
「いえ、仕事ですので」
ジェイクは俺たちが番になったことは誰にも言わないから安心していいよ、と言う。
「マヒロ、またいつでも遊びにおいで」
「ジェイク、色々全部ありがとう。お前がいてくれて本当によかった」
とんでもない。と首を横に振る。
「さあ、乗って……」
ジェイクと握手を交わすと、リアム様に促され馬車へ乗り込んだ。
今日の馬車はカナリ広い。昨日乗った馬車とはランクが違う。
黒塗りのボディーに金ピカの装飾が施され、ドアには何かの紋章がデカデカと付いている。昨日乗ったのにはドアに小さな窓が付いているだけだったが、これには大きなガラス張りの窓があり、とても開放的だ。
まるで、おとぎ話のお姫様にでもなったかのような気分になる。
リアム様は優雅に街の様子を眺めている。
時折、こちらに手を振ってくる住人に手を振って応えていた。
やはり有名人なんだ。と感心して、俺は移動中ずっとリアム様を観察していた。
リラックスしているだろうに、背筋はピンと伸びていて、手の振り方なんかも気品溢れている……ように感じる。
業務用であろう笑顔だって、一般人とは違う気高さを醸し出している……気がする。
街の人はみんな嬉しそうにリアム様を見ていた。向かい合って座っている俺には誰も興味がないようで、誰とも目が合わなかった。
みんなリアム様に気づいて欲しくて一生懸命なのだ。
これが騎士団長の威厳というやつか。ホテルの中だけでは分からなかった、全く違う表情を垣間見ることができた。
やがて馬車は高い塀に沿って進む。どこまで続くんだろう……と思うほど長い真っ白な塀には、合間合間にロートアイアンのフェンスになっている部分があり、そこから中を伺うことができた。
敷地の中は度肝を抜かれるほどの豪邸と、緑豊かな庭には噴水も見えた。
(噴水とかあるんだ!?)
凄すぎる。どう見ても大金持ちの屋敷だ。
噂には聞いていたが、想像以上にゴージャスな家だった。
こんなの前世だとネットでしか見たことがない。生活感のない外観は、本当に人が住んでいるのかと不思議に思ってしまう。
塀沿いのずっと向こうに視線を送ると、人が立っているのが見える。
きっとあそこが門だろう。
「マヒロ、もうすぐ我が家だ」
街を離れた頃から無口だったリアム様が口を開く。
「え? 家なんて……どこにあるの?」
キョロキョロと辺りを見渡しても、豪邸の周辺にはなにもない。
馬車はスピードを落とし、この豪邸の門の前で停まった。
「待って!! まさか、リアム様の家って!!! ここですのか!?」
ビックリしすぎて声が裏返ってしまった。
門番が重いロートアイアンの門を両側へ開けていく。
完全に門が開くと、また前進し始めた。間違いなく馬車はこの豪邸の敷地内へと進んでいく。
何かの間違いではないのだろうか。
騎士団長ってこんな凄い家に住んでいるのか。
あんぐりと開いた口が塞がらない。
そんな俺の心情は無視して、馬車は滑らかな石畳の上を進み、噴水に沿って迂回し、その向こう側にある玄関の前で停まった。
「さあ、着いた」
馬車の扉が開かれた。
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