48 / 64
47.あらあらうふふ
しおりを挟む
「旦那さまは魔法の才能がおありで、才能だけじゃなくきちんと努力もされていて」
「ちょっと、アイシャ」
「作ってくれるお料理もおいしいですし、髪を乾かすのも丁寧ですし、あと、あと」
「アイシャ」
「目はピラカンサみたいできれいだし、髪はケルピーくらいさらさらだし、」
「それ褒めてる?」
お嬢さん方にノアの良いところをアピールしてみるものの、あまり成果は芳しくなかった。
何だか小さい子が一生懸命話してるなぁという感じで流されている気がする。やっぱりノアが1人で話す方が効率的なのでは。
ノアに目を向けてほしいのに、何故か皆私ばかりに注目してあらあらうふふと笑っている。
こんなとき大人だったら、ちゃんと聞いてもらえたのだろうか。早く大きくなりたい、と思う。お酒も飲めるし。
いや、大人になっていたら髪を乾かしてもらっていてはダメな感じがするけれども。
「ノア」
ノアを呼ぶ声に、そちらに視線を向ける。
背筋がピンと伸びた、背の高い女性が立っていた。
名前を呼ぶということは、ノアの知り合いだろうか。――少し、ノアに雰囲気が似ている、ような。
「……母さん」
ノアが何やら気まずそうに視線を逸らしながらそう呼んだ。
少し似ていると思ったけれど、そういうことなら似ていて当然だ。
招待してくれたお嬢さんが、ノアの家族も参加すると言っていたのを思い出した。
確か、家族同伴を条件にノアの参加が認められた――とか、そんな話だった気がする。
ノアは家族に迷惑をかけたと言っていた。家族が来ると言われたときのノアの表情も鑑みると――ノアは家族に、会いたくなさそうにしていた、と思う。
向こうから声を掛けてくるくらいだから、無視されているわけではなさそうだけれど……禁術のこと、よっぽど怒られてしまったのだろうか。
ノアのお母さん。ノアの家に出入りしていた頃には、姿を見たことがなかった。
ノアの母親ということはそれなりの年齢のはずだけれど、かなり若々しい印象だ。目鼻立ちはノアと似てくっきりしていて、綺麗な人だ、と思う。
髪の色はノアと同じで、少しだけ毛先に癖があるところも似ている。
瞳の色はノアとは違って、空のような青色だった。
その青色の瞳が、私に向けられる。アイシャの実家で何度も練習したお辞儀をしながら、挨拶をした。
「アイシャです! 好きな食べ物はりんごのパイとえんどう豆のスープです!」
元気にそう答えると、ノアのお母さんはきょとんとした顔で私を見つめていた。
少しの間面食らったように沈黙した彼女は、ふっと口元を緩めて、しゃがみこむ。
ほんの少し口角が上がっただけなのに、ずいぶん雰囲気が優しくなった気がして驚いた。
「ノアの母です。結婚式ではきちんと挨拶が出来なくて、ごめんなさい」
その言葉に、ただ首を横に振る。
おそらく結婚式では私の両親が断ったのだろう、と思っている。
神託だから従ったけれど、両親は結婚には前向きではなさそうだった。
お母様はずっと泣いていたし、お父様もお葬式みたいな顔だった。相手のご両親にご挨拶、なんて気持ちにはなれなかっただろう。
「神の決めたこととは言え――息子のために、あなたをご両親から引き離してしまったこと。ずっと、謝りたかった」
ノアのお母さんが、本当に痛ましそうに目を伏せる。
「ちょっと、アイシャ」
「作ってくれるお料理もおいしいですし、髪を乾かすのも丁寧ですし、あと、あと」
「アイシャ」
「目はピラカンサみたいできれいだし、髪はケルピーくらいさらさらだし、」
「それ褒めてる?」
お嬢さん方にノアの良いところをアピールしてみるものの、あまり成果は芳しくなかった。
何だか小さい子が一生懸命話してるなぁという感じで流されている気がする。やっぱりノアが1人で話す方が効率的なのでは。
ノアに目を向けてほしいのに、何故か皆私ばかりに注目してあらあらうふふと笑っている。
こんなとき大人だったら、ちゃんと聞いてもらえたのだろうか。早く大きくなりたい、と思う。お酒も飲めるし。
いや、大人になっていたら髪を乾かしてもらっていてはダメな感じがするけれども。
「ノア」
ノアを呼ぶ声に、そちらに視線を向ける。
背筋がピンと伸びた、背の高い女性が立っていた。
名前を呼ぶということは、ノアの知り合いだろうか。――少し、ノアに雰囲気が似ている、ような。
「……母さん」
ノアが何やら気まずそうに視線を逸らしながらそう呼んだ。
少し似ていると思ったけれど、そういうことなら似ていて当然だ。
招待してくれたお嬢さんが、ノアの家族も参加すると言っていたのを思い出した。
確か、家族同伴を条件にノアの参加が認められた――とか、そんな話だった気がする。
ノアは家族に迷惑をかけたと言っていた。家族が来ると言われたときのノアの表情も鑑みると――ノアは家族に、会いたくなさそうにしていた、と思う。
向こうから声を掛けてくるくらいだから、無視されているわけではなさそうだけれど……禁術のこと、よっぽど怒られてしまったのだろうか。
ノアのお母さん。ノアの家に出入りしていた頃には、姿を見たことがなかった。
ノアの母親ということはそれなりの年齢のはずだけれど、かなり若々しい印象だ。目鼻立ちはノアと似てくっきりしていて、綺麗な人だ、と思う。
髪の色はノアと同じで、少しだけ毛先に癖があるところも似ている。
瞳の色はノアとは違って、空のような青色だった。
その青色の瞳が、私に向けられる。アイシャの実家で何度も練習したお辞儀をしながら、挨拶をした。
「アイシャです! 好きな食べ物はりんごのパイとえんどう豆のスープです!」
元気にそう答えると、ノアのお母さんはきょとんとした顔で私を見つめていた。
少しの間面食らったように沈黙した彼女は、ふっと口元を緩めて、しゃがみこむ。
ほんの少し口角が上がっただけなのに、ずいぶん雰囲気が優しくなった気がして驚いた。
「ノアの母です。結婚式ではきちんと挨拶が出来なくて、ごめんなさい」
その言葉に、ただ首を横に振る。
おそらく結婚式では私の両親が断ったのだろう、と思っている。
神託だから従ったけれど、両親は結婚には前向きではなさそうだった。
お母様はずっと泣いていたし、お父様もお葬式みたいな顔だった。相手のご両親にご挨拶、なんて気持ちにはなれなかっただろう。
「神の決めたこととは言え――息子のために、あなたをご両親から引き離してしまったこと。ずっと、謝りたかった」
ノアのお母さんが、本当に痛ましそうに目を伏せる。
11
あなたにおすすめの小説
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』
星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】
経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。
なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。
「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」
階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。
全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに!
「頬が赤い。必要だ」
「君を、大事にしたい」
真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。
さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!?
これは健康管理?それとも恋愛?
――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
枯れ専モブ令嬢のはずが…どうしてこうなった!
宵森みなと
恋愛
気づけば異世界。しかもモブ美少女な伯爵令嬢に転生していたわたくし。
静かに余生——いえ、学園生活を送る予定でしたのに、魔法暴発事件で隠していた全属性持ちがバレてしまい、なぜか王子に目をつけられ、魔法師団から訓練指導、さらには騎士団長にも出会ってしまうという急展開。
……団長様方、どうしてそんなに推せるお顔をしていらっしゃるのですか?
枯れ専なわたくしの理性がもちません——と思いつつ、学園生活を謳歌しつつ魔法の訓練や騎士団での治療の手助けと
忙しい日々。残念ながらお子様には興味がありませんとヒロイン(自称)の取り巻きへの塩対応に、怒らせると意外に強烈パンチの言葉を話すモブ令嬢(自称)
これは、恋と使命のはざまで悩む“ちんまり美少女令嬢”が、騎士団と王都を巻き込みながら心を育てていく、
――枯れ専ヒロインのほんわか異世界成長ラブファンタジーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる