婚約破棄令嬢、不敵に笑いながら敬愛する伯爵の元へ

あめり

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50話 ラストは大団円で その1

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 それから、どのくらいの時間が経過したのか……アイリーンはずっと、アルガス伯爵の帰りを待ち続けていた。彼が住まう伯爵邸で……。


「おかしい、おかしいわ……! なにか、なにかあったのよ……!」

「アイリーン様……落ち着いてください。焦ったところで、結果が変わるわけではありません」

「やめてよ、ミランダ……。大丈夫よ、絶対に大丈夫……!」


 冷静にその場に立つミランダと、ソファに座りながら取り乱しているアイリーンの構図。彼女はとてもアルガスのことを心配していた。アルガスは無事に帰って来る! そう約束したのだから……。


「なあ」

「なによ?」

「これはなんの冗談や?」

「うるさいわね、せっかく作った緊張感が台無しじゃない」


 現在、アイリーンが居るのは伯爵邸の応接室だ。傍らにはミランダが座っていたが、対面のソファには、タイネーブの姿がある。


「……もう、心配し過ぎて損しちゃったっていうか……」


「だからって変な演出せんといてや~~」


「しかし、随分と上手く行ったようですね……」


 ミランダとしても決死の作戦かと思っていただけに、タイネーブがソファに座って話していることに違和感を覚えている。彼女も、劇的なシーンを想像し、涙ながらに帰りを待つ悲劇のヒロインを連想していたのだ。

 しかし、現実はそうはならなかった。ゲシュタルト王国の中央部の力は想像以上に衰退しており、民衆への弾圧の協力も作戦通りに遂行できたのだ。アランドロ女王国の介入も疑われることなく、予定通りに中央部を鎮圧することに成功した。

 それから、3日ほどが経過している現在となっている─────

「ウィンドミルとか、私の父親も失脚するでしょうね……」

「やろな。まあ、戦後処理? 的なものはアルガス伯爵の領分やからな。詳しいことは、帰ってきてから聞いたらええやん」

「わかったわ」


 アイリーンとしてはほどんど思い出はないが、リグド・ヴァルハーツも含めて頂点の者達は失脚するだろうと言われている。隣国の情勢であるため、どのようになるかの情報は遅れて入ってしまうわけだ。現段階では確定情報はまだない。

 
 アイリーンは「蒼き月のカンパニュラ」のルートについて考えていた。ゲーム通りには行かないはずだが、本来であればウィンドミル、リグド、アイリーンの3人は失脚か死亡という流れになる……。アイリーン自体はそれを免れたが、他の二人は犠牲になってしまうだろう。


「バッドエンドを回避するための生贄……そういう見方もできるのが微妙なところだけど」

「ん? どないしたんや、アイリーン?」

「ううん、なんでもないわ」

 独り言を聞かれたアイリーンは、慌てて首を振りタイネーブに釈明していた。

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