19 / 25
19話
しおりを挟む
『ベルトレッド様が怪我して医務室に....!』
それだけ聞くと無意識に走りだしていた。
残り少ない魔力を使って全速力で走る。
落ち着け落ち着け落ち着け!
ベルは誰より強い!
治癒を扱える先生もいるし大丈夫!
そう思う一方で、ベルも治癒が使えるのに医務室に運ばれたということは、と最悪な想像までしてしまう。
「ベル!!」
医務室の扉を乱暴に開けながら叫んだ。
ベッドに腰掛けて驚いた顔をしたブルーの瞳と目が合う。
咄嗟に駆け寄って怪我がないか全身を触って確認した。
「っ、はぁ...はぁ、よかっ、た...」
目立った怪我はなく、治してもらえたんだと安心したら力が抜けて涙がぽろぽろと溢れてきた。
床に座り込みそうになる俺を支えてくれ、ベッドに座らせてくれた。
「あー、その、すまん....。怪我はしてないんだ....」
申し訳なさそうに言うベルを見て一瞬理解ができなかった。
「えっ、なに、騙したってこと....?なにそれ...。どれだけ心配したと思ってるの....?」
「っ、フィル——」
伸ばされた手を振り払って立ち上がった瞬間、眩暈がした。
魔力を使いすぎたためだろう。
倒れる...!
そう思ったがものすごい力で引き寄せられ、倒れることはなかった。
頭がくらくらして気づいたらベルにぎゅっと抱きしめられていた。
「っ、ベルっ、離してっ」
「悪かった。お前の友人にちゃんと話した方がいいと言われて。それに、そんな心配してくれるとは思わなかったんだ」
耳元で聞こえる声に自然と肌が粟立つ。
ルカが....?
「振られたと思ってたから、告白も困らせただけだと思ったから、諦めようとしてたんだ」
未だ強く抱きしめたまま耳元で囁く。
「だが泣くほど心配してくれたってことは、まだ少しは希望があるのか?」
「っ」
「なあ、フィルローゼ。俺の気持ちは迷惑なだけか?」
心臓の音がいやに大きく聞こえる。
これは、どちらの音なのだろう。
迷惑な、わけがない。自分の気持ちを自覚した今、まだ想ってくれていることに喜びしか感じない。
「気持ちは、嬉しい。ほんとに嬉しいよ。....でも、だからこそ、耐えられる自信がない....」
ゆっくりと体を離し、目を真っ直ぐに見つめられる。
「なにに?」
その視線に耐えられなくて俯いた。
「....ベルは長男でしょ?家督を継いだらどうしたって跡取りが必要になる」
でも、男では子供は産めない。
まだ居もしない相手に嫉妬してるだなんて引かれるだろうか。
それならそれでいいのかもしれない。
そしたらこれ以上好きにならなくて済む。
「.......それは、良いように捉えていいのか?」
「え?」
「俺の子を産むかもしれないやつがいるのが嫌なんだろ?それなら俺は家督を継がない」
「はぁ!?何言って....!」
あまりの発言にばっと顔を上げる。
「もともと興味もない。俺はお前と一緒に居られるほうがいい」
「だ、だめだよ。嫌だっ。足枷になりたくない」
ふるふると顔を横に振るが、両頬を包まれ優しげなブルーの瞳に射抜かれて呼吸が一瞬止まる。
「足枷になどならん。俺はお前が好きだ。フィルローゼ」
「っ」
「頼む、お前も言ってくれ」
言って、いいのだろうか。これを言えばベルは家督の座を手放すかもしれないのに。
俺のわがままでそんなことさせていいのだろうか。
「でもっ、継がないなんて、そんなのやっぱり」
「そもそもまだ俺が継ぐことが決まってるわけではない。弟のほうが属性も恵まれてるし、素質もある」
本当に?それなら、わがままを言ってもいいのだろうか。許されるだろうか。
「フィルローゼ」
名前を呼ばれぼろぼろと涙が溢れる。
「....き....。...すき...。ベルが好き...」
言い終わった途端、唇を塞がれた。
「んぅ、っ、は、...んん....」
優しく、舌で上顎や舌裏など敏感な部分を撫でられる。
溢れた涙を指で優しく拭ってくれた。
今更泣いたのが恥ずかしくなってきた。
「ちょ、ちょっと離れて....。あっ?」
なんだか硬いものがお尻に当たった。
え、まさか?
「好きなやつに好きって言われたら勃つだろ」
いや、なに開き直ってんすか。
ちょっと!お尻揉まないでください!
「あっ、やだ。ベル、んっ」
「本当に嫌?」
うっ、その聞き方はずるい....!
「.....ここじゃ、やだ...」
ふっ、と笑ったと思ったら横抱きされて問答無用で医務室からベルの部屋へ連れて行かれた。
それだけ聞くと無意識に走りだしていた。
残り少ない魔力を使って全速力で走る。
落ち着け落ち着け落ち着け!
ベルは誰より強い!
治癒を扱える先生もいるし大丈夫!
そう思う一方で、ベルも治癒が使えるのに医務室に運ばれたということは、と最悪な想像までしてしまう。
「ベル!!」
医務室の扉を乱暴に開けながら叫んだ。
ベッドに腰掛けて驚いた顔をしたブルーの瞳と目が合う。
咄嗟に駆け寄って怪我がないか全身を触って確認した。
「っ、はぁ...はぁ、よかっ、た...」
目立った怪我はなく、治してもらえたんだと安心したら力が抜けて涙がぽろぽろと溢れてきた。
床に座り込みそうになる俺を支えてくれ、ベッドに座らせてくれた。
「あー、その、すまん....。怪我はしてないんだ....」
申し訳なさそうに言うベルを見て一瞬理解ができなかった。
「えっ、なに、騙したってこと....?なにそれ...。どれだけ心配したと思ってるの....?」
「っ、フィル——」
伸ばされた手を振り払って立ち上がった瞬間、眩暈がした。
魔力を使いすぎたためだろう。
倒れる...!
そう思ったがものすごい力で引き寄せられ、倒れることはなかった。
頭がくらくらして気づいたらベルにぎゅっと抱きしめられていた。
「っ、ベルっ、離してっ」
「悪かった。お前の友人にちゃんと話した方がいいと言われて。それに、そんな心配してくれるとは思わなかったんだ」
耳元で聞こえる声に自然と肌が粟立つ。
ルカが....?
「振られたと思ってたから、告白も困らせただけだと思ったから、諦めようとしてたんだ」
未だ強く抱きしめたまま耳元で囁く。
「だが泣くほど心配してくれたってことは、まだ少しは希望があるのか?」
「っ」
「なあ、フィルローゼ。俺の気持ちは迷惑なだけか?」
心臓の音がいやに大きく聞こえる。
これは、どちらの音なのだろう。
迷惑な、わけがない。自分の気持ちを自覚した今、まだ想ってくれていることに喜びしか感じない。
「気持ちは、嬉しい。ほんとに嬉しいよ。....でも、だからこそ、耐えられる自信がない....」
ゆっくりと体を離し、目を真っ直ぐに見つめられる。
「なにに?」
その視線に耐えられなくて俯いた。
「....ベルは長男でしょ?家督を継いだらどうしたって跡取りが必要になる」
でも、男では子供は産めない。
まだ居もしない相手に嫉妬してるだなんて引かれるだろうか。
それならそれでいいのかもしれない。
そしたらこれ以上好きにならなくて済む。
「.......それは、良いように捉えていいのか?」
「え?」
「俺の子を産むかもしれないやつがいるのが嫌なんだろ?それなら俺は家督を継がない」
「はぁ!?何言って....!」
あまりの発言にばっと顔を上げる。
「もともと興味もない。俺はお前と一緒に居られるほうがいい」
「だ、だめだよ。嫌だっ。足枷になりたくない」
ふるふると顔を横に振るが、両頬を包まれ優しげなブルーの瞳に射抜かれて呼吸が一瞬止まる。
「足枷になどならん。俺はお前が好きだ。フィルローゼ」
「っ」
「頼む、お前も言ってくれ」
言って、いいのだろうか。これを言えばベルは家督の座を手放すかもしれないのに。
俺のわがままでそんなことさせていいのだろうか。
「でもっ、継がないなんて、そんなのやっぱり」
「そもそもまだ俺が継ぐことが決まってるわけではない。弟のほうが属性も恵まれてるし、素質もある」
本当に?それなら、わがままを言ってもいいのだろうか。許されるだろうか。
「フィルローゼ」
名前を呼ばれぼろぼろと涙が溢れる。
「....き....。...すき...。ベルが好き...」
言い終わった途端、唇を塞がれた。
「んぅ、っ、は、...んん....」
優しく、舌で上顎や舌裏など敏感な部分を撫でられる。
溢れた涙を指で優しく拭ってくれた。
今更泣いたのが恥ずかしくなってきた。
「ちょ、ちょっと離れて....。あっ?」
なんだか硬いものがお尻に当たった。
え、まさか?
「好きなやつに好きって言われたら勃つだろ」
いや、なに開き直ってんすか。
ちょっと!お尻揉まないでください!
「あっ、やだ。ベル、んっ」
「本当に嫌?」
うっ、その聞き方はずるい....!
「.....ここじゃ、やだ...」
ふっ、と笑ったと思ったら横抱きされて問答無用で医務室からベルの部屋へ連れて行かれた。
173
あなたにおすすめの小説
ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない
北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。
ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。
四歳である今はまだ従者ではない。
死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった??
十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。
こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう!
そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!?
クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
タチですが異世界ではじめて奪われました
雪
BL
「異世界ではじめて奪われました」の続編となります!
読まなくてもわかるようにはなっていますが気になった方は前作も読んで頂けると嬉しいです!
俺は桐生樹。21歳。平凡な大学3年生。
2年前に兄が死んでから少し荒れた生活を送っている。
丁度2年前の同じ場所で黙祷を捧げていたとき、俺の世界は一変した。
「異世界ではじめて奪われました」の主人公の弟が主役です!
もちろんハルトのその後なんかも出てきます!
ちょっと捻くれた性格の弟が溺愛される王道ストーリー。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる