BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

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19話

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『ベルトレッド様が怪我して医務室に....!』

それだけ聞くと無意識に走りだしていた。

残り少ない魔力を使って全速力で走る。

落ち着け落ち着け落ち着け!
ベルは誰より強い!
治癒を扱える先生もいるし大丈夫!

そう思う一方で、ベルも治癒が使えるのに医務室に運ばれたということは、と最悪な想像までしてしまう。

「ベル!!」

医務室の扉を乱暴に開けながら叫んだ。

ベッドに腰掛けて驚いた顔をしたブルーの瞳と目が合う。
咄嗟に駆け寄って怪我がないか全身を触って確認した。

「っ、はぁ...はぁ、よかっ、た...」

目立った怪我はなく、治してもらえたんだと安心したら力が抜けて涙がぽろぽろと溢れてきた。

床に座り込みそうになる俺を支えてくれ、ベッドに座らせてくれた。

「あー、その、すまん....。怪我はしてないんだ....」

申し訳なさそうに言うベルを見て一瞬理解ができなかった。

「えっ、なに、騙したってこと....?なにそれ...。どれだけ心配したと思ってるの....?」

「っ、フィル——」

伸ばされた手を振り払って立ち上がった瞬間、眩暈がした。
魔力を使いすぎたためだろう。

倒れる...!
そう思ったがものすごい力で引き寄せられ、倒れることはなかった。

頭がくらくらして気づいたらベルにぎゅっと抱きしめられていた。

「っ、ベルっ、離してっ」

「悪かった。お前の友人にちゃんと話した方がいいと言われて。それに、そんな心配してくれるとは思わなかったんだ」

耳元で聞こえる声に自然と肌が粟立つ。

ルカが....?

「振られたと思ってたから、告白も困らせただけだと思ったから、諦めようとしてたんだ」

未だ強く抱きしめたまま耳元で囁く。

「だが泣くほど心配してくれたってことは、まだ少しは希望があるのか?」

「っ」

「なあ、フィルローゼ。俺の気持ちは迷惑なだけか?」

心臓の音がいやに大きく聞こえる。
これは、どちらの音なのだろう。

迷惑な、わけがない。自分の気持ちを自覚した今、まだ想ってくれていることに喜びしか感じない。

「気持ちは、嬉しい。ほんとに嬉しいよ。....でも、だからこそ、耐えられる自信がない....」

ゆっくりと体を離し、目を真っ直ぐに見つめられる。

「なにに?」

その視線に耐えられなくて俯いた。

「....ベルは長男でしょ?家督を継いだらどうしたって跡取りが必要になる」

でも、男では子供は産めない。
まだ居もしない相手に嫉妬してるだなんて引かれるだろうか。

それならそれでいいのかもしれない。
そしたらこれ以上好きにならなくて済む。

「.......それは、良いように捉えていいのか?」

「え?」

「俺の子を産むかもしれないやつがいるのが嫌なんだろ?それなら俺は家督を継がない」

「はぁ!?何言って....!」 

あまりの発言にばっと顔を上げる。

「もともと興味もない。俺はお前と一緒に居られるほうがいい」

「だ、だめだよ。嫌だっ。足枷になりたくない」

ふるふると顔を横に振るが、両頬を包まれ優しげなブルーの瞳に射抜かれて呼吸が一瞬止まる。

「足枷になどならん。俺はお前が好きだ。フィルローゼ」

「っ」

「頼む、お前も言ってくれ」

言って、いいのだろうか。これを言えばベルは家督の座を手放すかもしれないのに。
俺のわがままでそんなことさせていいのだろうか。

「でもっ、継がないなんて、そんなのやっぱり」

「そもそもまだ俺が継ぐことが決まってるわけではない。弟のほうが属性も恵まれてるし、素質もある」

本当に?それなら、わがままを言ってもいいのだろうか。許されるだろうか。

「フィルローゼ」

名前を呼ばれぼろぼろと涙が溢れる。

「....き....。...すき...。ベルが好き...」

言い終わった途端、唇を塞がれた。

「んぅ、っ、は、...んん....」

優しく、舌で上顎や舌裏など敏感な部分を撫でられる。
溢れた涙を指で優しく拭ってくれた。

今更泣いたのが恥ずかしくなってきた。

「ちょ、ちょっと離れて....。あっ?」

なんだか硬いものがお尻に当たった。
え、まさか?

「好きなやつに好きって言われたら勃つだろ」

いや、なに開き直ってんすか。
ちょっと!お尻揉まないでください!

「あっ、やだ。ベル、んっ」

「本当に嫌?」

うっ、その聞き方はずるい....!

「.....ここじゃ、やだ...」

ふっ、と笑ったと思ったら横抱きされて問答無用で医務室からベルの部屋へ連れて行かれた。
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