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7話
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それから3日後、家庭教師を紹介してくれた。
正直、この3日間はかなり快適だった。
俺の護衛を交代でしてくれているヴィスさん(犬の獣人)とローレンさん(狐の獣人)も少しずつ話してくれるようになったし、1人で食べるのは少し寂しいけどご飯も美味しい。
文字もなぜか読めるのでここ3日間はずっと図書館にこもりっぱなしだ。
あとは、獣人の国だからか動物が多い。
室内にも大きい動物が普通に歩いている。
触りたいなぁ。
トラや豹などの肉食獣がいたときは驚いたけど、周りの人は驚いた様子もないしトラたちも襲う様子はない。
襲う様子がないどころか知性すら感じられる。
不躾な視線を浴びせてくる者もいたが俺もついじろじろ見てしまうのでお互い様だ。
後ろに控えていてくれるヴィスさんやローレンさんのお陰かトラブルもなく過ごせている。
「はじめまして。お会いできるのを楽しみにしておりました。フィレル・リスナーと申します」
ちっさ!
いや、正確には小さくはない。
172センチの俺より少し低いくらい。
ただ、ここの人はかなり大きい人が多いから見上げることの方が多かった。
男性は特に。
なんだかそれだけで親近感が湧き、嬉しい。
栗色の尻尾がとても大きくてふわふわしているがリスかなにかの獣人だろうか。
親しくなったら触らせてくれるかな?
「はじめまして。チヒロ・クリハラと申します。本日はよろしくお願いいたします」
「随分と可愛らしい方ですな。お陰様で老後の楽しみができました」
尻尾揺れてますけどー!
可愛いのは断然あなたの方です!
わしゃわしゃしたい....!
....ん?ちょっと待って、今老後って聞こえたような....。
「....老後って....、まだお若いではないですか」
「おや、ありがとうございます。ですがもう60手前の老骨ですよ」
「えっ!?」
み、見えない....!
40代って言われてもおかしくないんですけど!
獣人ってあんまり老けないのかな....。
「反応が素直ですなぁ。このままお話したいところですが早速始めましょうか。なにか聞きたいことはありますかな?」
「あ、はい。まずはこの世界の常識を、お金の事とか物価とか...。あとは地図なんかもあれば見たいです」
「分かりました。ただ、残念ながら地図はありません」
「え、ないんですか?」
「昔は不確かな物でも一応あったのですが全て破棄されました」
「え!?」
「もともと国同士の交わりもほとんどなく、生涯自国から出ない者がほとんどなのです。かくいう私もその1人でして」
鎖国国家、ということだろうか。
それなのによく俺受け入れてもらえたな....。
トリスさんが居なかったらと思うとちょっとゾッとする。
「なんでそんなに閉鎖的なんですか?」
「我らの種族は奴隷の時代が長すぎたのが原因ですな。今は奴隷制度は禁じられていますが差別はそう簡単にはなくなりません」
他にもエルフ、ドワーフなどの種族の国があり、どの国も閉鎖的なんだそうだ。
エルフなんかは国の場所すら分からないらしい。
そのなかでも人族の差別は特にひどく、戦争を引き起こすまでとなった。
なんでそこまで嫌うかわかんないけどそんなに嫌われてたら関わりたいとは思わないよなぁ....。
けど....
「....もったいない....」
思わずぽろっと漏れてしまった。
「ほう?勿体無い、ですか?」
あああ!しまった!なに言ってんだ俺!完全部外者が口挟んだら駄目だろ!
完全に失言。
かと思ったらフィレルさんは楽しそうににこにこしながら俺の言葉を待っている。
「すみません。部外者の俺がよく知りもせず....」
「よければなぜそう思ったのか聞きたいですな」
「.....まだ少ししかこちらにお世話になっていませんが、皆さんとてもいい人たちなので。それに皆さん可愛らしいし!それを知れば人とも仲良くなれると思うんですが...知り合う機会がないのはもったいない気がします」
「ほほう。我々ではなく人族が勿体無い、と」
「はい。だって皆さんは人を嫌っているわけじゃないんですよね?」
一部嫌いそうな人もいるとは思うけど、少なくとも自分は人だからと嫌がらせを受けた事がない。
「ふふ。そうですな。我々は個人を見て判断します。ただ、そうなったのもごく最近のことです。それもラディス殿下とトリス殿が国境を越え、何度も説き伏せてくださったお陰」
おお、やっぱトリスさんすごい人だったのか。
「あの方が治める国ならば協力を惜しむつもりはありません」
か、かっけぇ....!
可愛い見た目とは裏腹に芯のある物言いにグッときた。
ギャップ萌えってやつだ。
「そういえば、戦況はどんな感じなんですか?この3日間はとても静かでしたけど...」
「ああ、実はレムール側が一方的に召喚したものを送り込んでくるだけで未だ全面戦争にはなっていないんですよ」
「え、そうなんですか」
「ええ。国境付近の小競り合いはありますが被害はほとんどありません。ここは安全ですのでご安心ください」
そう言って微笑むフィレルさんはやっぱりかっこいい。
その後はお金や物価のことなどを教わった。
物価は日本よりも安い印象だ。お金は日本みたくお札はなく、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の4種類ある。
フィレルさんは計算が速いと褒めてくれたが算数ができたくらいで褒められても正直嬉しくはない。
ただ、馬鹿にしているとかそんなことはなく本気ですごいと思って言っているようだ。
あとは俺にもできそうな仕事があるか聞くと、計算が速いのは強みだという。
この国の人どんだけ計算苦手なのよ。
まあ強みがあるのはいいことだけど。
「チヒロ殿はお仕事をお探しですか?」
「はい。1人でも生きていけるようにしたいので」
「....少しご提案があるのですが聞いて頂けますかな?」
遠慮がちに言うフィレルさん顔が思ったより真剣な顔で、何を言われるのか少し緊張しながら待った。
正直、この3日間はかなり快適だった。
俺の護衛を交代でしてくれているヴィスさん(犬の獣人)とローレンさん(狐の獣人)も少しずつ話してくれるようになったし、1人で食べるのは少し寂しいけどご飯も美味しい。
文字もなぜか読めるのでここ3日間はずっと図書館にこもりっぱなしだ。
あとは、獣人の国だからか動物が多い。
室内にも大きい動物が普通に歩いている。
触りたいなぁ。
トラや豹などの肉食獣がいたときは驚いたけど、周りの人は驚いた様子もないしトラたちも襲う様子はない。
襲う様子がないどころか知性すら感じられる。
不躾な視線を浴びせてくる者もいたが俺もついじろじろ見てしまうのでお互い様だ。
後ろに控えていてくれるヴィスさんやローレンさんのお陰かトラブルもなく過ごせている。
「はじめまして。お会いできるのを楽しみにしておりました。フィレル・リスナーと申します」
ちっさ!
いや、正確には小さくはない。
172センチの俺より少し低いくらい。
ただ、ここの人はかなり大きい人が多いから見上げることの方が多かった。
男性は特に。
なんだかそれだけで親近感が湧き、嬉しい。
栗色の尻尾がとても大きくてふわふわしているがリスかなにかの獣人だろうか。
親しくなったら触らせてくれるかな?
「はじめまして。チヒロ・クリハラと申します。本日はよろしくお願いいたします」
「随分と可愛らしい方ですな。お陰様で老後の楽しみができました」
尻尾揺れてますけどー!
可愛いのは断然あなたの方です!
わしゃわしゃしたい....!
....ん?ちょっと待って、今老後って聞こえたような....。
「....老後って....、まだお若いではないですか」
「おや、ありがとうございます。ですがもう60手前の老骨ですよ」
「えっ!?」
み、見えない....!
40代って言われてもおかしくないんですけど!
獣人ってあんまり老けないのかな....。
「反応が素直ですなぁ。このままお話したいところですが早速始めましょうか。なにか聞きたいことはありますかな?」
「あ、はい。まずはこの世界の常識を、お金の事とか物価とか...。あとは地図なんかもあれば見たいです」
「分かりました。ただ、残念ながら地図はありません」
「え、ないんですか?」
「昔は不確かな物でも一応あったのですが全て破棄されました」
「え!?」
「もともと国同士の交わりもほとんどなく、生涯自国から出ない者がほとんどなのです。かくいう私もその1人でして」
鎖国国家、ということだろうか。
それなのによく俺受け入れてもらえたな....。
トリスさんが居なかったらと思うとちょっとゾッとする。
「なんでそんなに閉鎖的なんですか?」
「我らの種族は奴隷の時代が長すぎたのが原因ですな。今は奴隷制度は禁じられていますが差別はそう簡単にはなくなりません」
他にもエルフ、ドワーフなどの種族の国があり、どの国も閉鎖的なんだそうだ。
エルフなんかは国の場所すら分からないらしい。
そのなかでも人族の差別は特にひどく、戦争を引き起こすまでとなった。
なんでそこまで嫌うかわかんないけどそんなに嫌われてたら関わりたいとは思わないよなぁ....。
けど....
「....もったいない....」
思わずぽろっと漏れてしまった。
「ほう?勿体無い、ですか?」
あああ!しまった!なに言ってんだ俺!完全部外者が口挟んだら駄目だろ!
完全に失言。
かと思ったらフィレルさんは楽しそうににこにこしながら俺の言葉を待っている。
「すみません。部外者の俺がよく知りもせず....」
「よければなぜそう思ったのか聞きたいですな」
「.....まだ少ししかこちらにお世話になっていませんが、皆さんとてもいい人たちなので。それに皆さん可愛らしいし!それを知れば人とも仲良くなれると思うんですが...知り合う機会がないのはもったいない気がします」
「ほほう。我々ではなく人族が勿体無い、と」
「はい。だって皆さんは人を嫌っているわけじゃないんですよね?」
一部嫌いそうな人もいるとは思うけど、少なくとも自分は人だからと嫌がらせを受けた事がない。
「ふふ。そうですな。我々は個人を見て判断します。ただ、そうなったのもごく最近のことです。それもラディス殿下とトリス殿が国境を越え、何度も説き伏せてくださったお陰」
おお、やっぱトリスさんすごい人だったのか。
「あの方が治める国ならば協力を惜しむつもりはありません」
か、かっけぇ....!
可愛い見た目とは裏腹に芯のある物言いにグッときた。
ギャップ萌えってやつだ。
「そういえば、戦況はどんな感じなんですか?この3日間はとても静かでしたけど...」
「ああ、実はレムール側が一方的に召喚したものを送り込んでくるだけで未だ全面戦争にはなっていないんですよ」
「え、そうなんですか」
「ええ。国境付近の小競り合いはありますが被害はほとんどありません。ここは安全ですのでご安心ください」
そう言って微笑むフィレルさんはやっぱりかっこいい。
その後はお金や物価のことなどを教わった。
物価は日本よりも安い印象だ。お金は日本みたくお札はなく、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の4種類ある。
フィレルさんは計算が速いと褒めてくれたが算数ができたくらいで褒められても正直嬉しくはない。
ただ、馬鹿にしているとかそんなことはなく本気ですごいと思って言っているようだ。
あとは俺にもできそうな仕事があるか聞くと、計算が速いのは強みだという。
この国の人どんだけ計算苦手なのよ。
まあ強みがあるのはいいことだけど。
「チヒロ殿はお仕事をお探しですか?」
「はい。1人でも生きていけるようにしたいので」
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