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5.日常へ返す
しおりを挟む結局、葬式はあげなかった。
葬儀屋に頼んで用意してもらった簡素な後祭壇に、両親の骨を安置してある。
新聞にお悔やみ情報を載せたことで、近所の人が弔問に顔を出してくれた。連絡をした両親の兄弟や従兄弟たちも顔を出し、喪主を務める俺の横で、理央は終始、細かいところに気を配ってくれた。
そんな中で、思いがけない来客があった。
「遅くなって悪い。急のことでさ――」
高校時代の友人たちだった。
「大丈夫か?」
「って、眞田いるし。相変わらずかよ」
口々に出迎えた俺に声をかけながら、横に立つ理央に、ほっとしたような表情をみせた。
仏間からリビングへ通すと、張りつめていた空気がほどけていった。少しずつ笑い声が混ざりはじめる。
「眞田、お前なんか、あか抜けた?」
「ってかさ」
俺と理央を指さして、
「座る位置まで高校のときと変わってねぇし」
笑い声がこぼれた。
理央の見た目が変わっても、高校の頃と同じように、俺と理央が並んでいることを当たり前のように受け止めてくれる。
痛みが、薄れた。
名残惜しさもあって「泊まっていけよ」と言ったけれど、
「それはさすがに悪い」
と、それぞれに帰っていってしまった。
「困ったことあったら、連絡しろよ」
玄関先で、ずいぶん友達甲斐のあることを言われて、心がじんわり温かくなる。
彼らの気配が消え、部屋が静かに冷えてゆく。
テーブルの上を片づけながら、
「なあ。お前、そろそろ戻っておいたほうがいいんじゃね?」
流しに向かう理央の背に、声をかけた。
「なんで?」
背中を向けたまま、問いが返ってくる。
「弔問客も落ち着いたし。大学、もう始まるじゃん」
「朔と一緒に戻るよ。それまで、こっちにいる」
ようやく振り返った理央の顔が不満を滲ませていた。
「俺も、あといくつか手続きとか後始末を済ませたらそっちに戻るし。
世話になった礼はそのときにさせて」
言葉を重ねて、ようやく理央を頷かせた。
その後の三日で、思いつく限りの手続きを役所や銀行で済ませた。
一段落ついたところで、大学近くのアパートではなく、遠方に住む祖父を訪ねることにした。
両親の骨を預けるためだ。
葬儀のことで連絡をして初めて知ったのだが、祖父は裏山で足の骨を折っていた。
連絡がなければ黙っているつもりだったらしい、その頑固さに思わず呆れる。
納骨の前に墓の様子も見ておきたかったので、祖父の様子見も兼ねて、
そのまま四十九日まで世話になることにした。
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