だって、君は210日のポラリス

大庭和香

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5.日常へ返す

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 結局、葬式はあげなかった。
 葬儀屋に頼んで用意してもらった簡素な後祭壇に、両親の骨を安置してある。

 新聞にお悔やみ情報を載せたことで、近所の人が弔問に顔を出してくれた。連絡をした両親の兄弟や従兄弟たちも顔を出し、喪主を務める俺の横で、理央は終始、細かいところに気を配ってくれた。

 そんな中で、思いがけない来客があった。
「遅くなって悪い。急のことでさ――」

 高校時代の友人たちだった。

「大丈夫か?」
「って、眞田いるし。相変わらずかよ」

 口々に出迎えた俺に声をかけながら、横に立つ理央に、ほっとしたような表情をみせた。

 仏間からリビングへ通すと、張りつめていた空気がほどけていった。少しずつ笑い声が混ざりはじめる。

「眞田、お前なんか、あか抜けた?」

「ってかさ」
 俺と理央を指さして、
「座る位置まで高校のときと変わってねぇし」

 笑い声がこぼれた。

 理央の見た目が変わっても、高校の頃と同じように、俺と理央が並んでいることを当たり前のように受け止めてくれる。
 痛みが、薄れた。

 名残惜しさもあって「泊まっていけよ」と言ったけれど、
「それはさすがに悪い」
 と、それぞれに帰っていってしまった。

「困ったことあったら、連絡しろよ」

 玄関先で、ずいぶん友達甲斐のあることを言われて、心がじんわり温かくなる。



 彼らの気配が消え、部屋が静かに冷えてゆく。
 テーブルの上を片づけながら、
「なあ。お前、そろそろ戻っておいたほうがいいんじゃね?」
 流しに向かう理央の背に、声をかけた。

「なんで?」 
 背中を向けたまま、問いが返ってくる。

「弔問客も落ち着いたし。大学、もう始まるじゃん」
「朔と一緒に戻るよ。それまで、こっちにいる」

 ようやく振り返った理央の顔が不満を滲ませていた。

「俺も、あといくつか手続きとか後始末を済ませたらそっちに戻るし。
 世話になった礼はそのときにさせて」
 
 言葉を重ねて、ようやく理央を頷かせた。
 

 その後の三日で、思いつく限りの手続きを役所や銀行で済ませた。
 一段落ついたところで、大学近くのアパートではなく、遠方に住む祖父を訪ねることにした。
 両親の骨を預けるためだ。


 葬儀のことで連絡をして初めて知ったのだが、祖父は裏山で足の骨を折っていた。
 連絡がなければ黙っているつもりだったらしい、その頑固さに思わず呆れる。

 納骨の前に墓の様子も見ておきたかったので、祖父の様子見も兼ねて、
 そのまま四十九日まで世話になることにした。
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