【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪

鈴菜

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惨劇

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見渡す限りの赤。
絶えず聴こえてくる絶叫。
鼻に残り続け取れない鉄の匂い。
なるほど、これが戦場ですか。

「勘違いをしないでください、お嬢様。本来ここまで酷くなるのは稀なことです。」

考えていたことが漏れていたみたい。
私の隣に立つ、執事服を着た青年が訂正しました。

「あら、シズ。また私をお嬢様なんて呼ぶの?名前で呼んでって、いつも言っているでしょう。」

「今は人目がありますので。」

私が拗ねてみても飄々と受け流す彼はシュパーズ。
私の専属執事であり、私が帝国の客人になってからの5年余りを共に過ごしてきた大事な人です。

帝国に来たばかりの頃。シズは原因不明の呪いに冒されており、それを解呪した私に忠誠を誓いました。
最初の頃は無邪気で可愛くて、弟がいればこんな感じなのかしら、と思っていたのだけれど最近はすっかり執事服がよく似合う美青年になっちゃったわね。
これはこれで眼福だけれど。

「それにしても…」

シズがテントの外に広がる惨状に視線を向け、不思議そうな顔をします。

「お嬢様の祖国の戦士たちはなぜ勝ち目も無い戦いをあんなに必死の覚悟でしているのでしょう。」

そう、今外では帝国が私の祖国を侵略するための戦いの真っ最中です。
剣や魔法で殺し合っている現場から少し離れたテントが私たちの待機している場所。
私はここで、重傷を負った帝国の戦士に癒やしの魔法を使う役目を担っています。

ええ、帝国の。
私は祖国にて偽聖女が処刑されてからは帝国の聖女として務めを果たしているのです。
帝国にも癒やしの魔法を使える人はいますが、私ほどの使い手はおらず帝国でも聖女と言われるようになってしまいました。
スローライフにも興味はあったのですけどね。

さて、そろそろシズの疑問に答えてあげますか。

「理由は大きく分けて2つあります。1つはあちらが仮初めとはいえ聖女を有しているからです。」

自称真の聖女にして妹のローデリカ。
姉を偽聖女として処刑した後は真面目に聖女の役目を果たしているみたいね。
まあ、私に比べて頭が良くないぶん教会に上手く使われているみたいだけれど。

真の聖女を名乗り、実際にその役目を果たしている人がいるのだから、これまでと変わらず致命傷も恐れない戦い方をしてしまうのでしょうね。

「そして2つ目は国内状況が混沌としているから、帝国軍を撃退したという良い報せを届けたいのよ。」

私がというべきか魔法人形がというべきかはともかくとして、前の聖女が行っていた貧困層への慈善活動を教会はすぐに取りやめた。
まあ利益どころか損ばかりだものね。

結果、国内で不満が次々と爆発。
噂では戦士の一部を帝国との戦争ではなく、治安維持に割かなければいけなくなるほどだとか。

一方で王城内はお花畑ムードみたい。
愛する者と国のために悪の聖女を討ったアダム王子は祝福され、近々フレンダとの正式な婚約が成されるのだとか。おめでたい話だわ。
そんな感じで国内状況を把握し解決することを怠り、連日お祭り騒ぎを楽しまれているそうです。

…まあ、王城の現状はたいへん優秀で帝国の皇帝陛下のお気に入りでもある彼女の工作によるものですが。

王城の者たちが目を覚まし、国内状況を正すまで帝国に敗北する訳にはいかない、というのが彼らの総意なのでしょうね。立派です。


けれど、戦況は帝国有利のまま変わりません。
同じく聖女を抱えているのでしたら、当然単純な軍事力が上の帝国が勝ちますよね。

さあ、そろそろ惨劇を終わらせましょう。

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