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【幕間】不憫な子
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私は今、地獄の日々を味わっています。
それも全て聖女リュミエラのせい。
私の生まれた帝国はカリスマに満ち溢れた皇帝陛下が周辺諸国をまとめ上げ、泰平の世を成しています。
私も帝国の暗部一族の子として生を受けたからには、祖国にこの身全てを捧げる覚悟を決め、幼少の頃から鍛錬を欠かしませんでした。
その甲斐あって、10才の時には帝国に対立する国の偵察任務を承りました。
かの国は軍事的に優れた力を持つわけではありませんでしたが、聖女なる者を抱えていたのです。
帝国にも癒やしの魔法を使える者は何人かいますが、聖女は別格の存在と言われていました。
眉唾物と一蹴できないのは、実際にかの国との戦争に参加した戦士たちの証言が原因です。
「奴らは狂っている。腕を失おうが、足が折れようがお構いなしに攻めて来るんだ。死なない限り、聖女に治してもらえるからって。」
通常、癒やしの魔法は損傷が大き過ぎると元の身体に戻せません。けれど、聖女は生きてさえいれば健康体にまで治せると言うのです。
先生たちは聖女が常人を超えた癒やしの魔法の才能を持つ人物なのだろう、と考えていました。
それも間違いでは無かったのですけどね…
私がかつて受けた偵察任務はその聖女がどの様な人物か見定め、また可能であれば弱点を探すこと。
ついでに情報収集の結果、かの国の王子が聖女のもとを訪れる日も分かりました。
この2人を調査し、さらに可能であれば毒の1つでも仕込むつもりでした。
「まったく、可愛いスパイですこと。」
思い出しただけで、震えが止まりません。
慢心はあった。油断もしていた。
けれど、聖女が街で普通に歩いているなんて想定してしなかったし、あんな化け物だとも…
「安心しなさい。半殺しにとどめてあげる。私なら元に戻してあげられるわ。」
半殺し?
下半身を魔法で吹っ飛ばしたのが半殺し?
それが本気なら、お前は本当の化け物だ。
無意識に自分の足に触れてしまう。
あの日、私の腰から下は一度消滅しました。
今私に生えている足は聖女が治したものです。
「ねえ、あなたの身体を治してあげる。その代わり、私の親友になってくださる?」
命惜しさに、首がもげそうなほど強く頷きました。
何度も。何度も。
こちらこそお願いします、と口にして。
それから国に戻ってしばらくは平和な毎日を満喫していました。
けれど、今でも思い出します。
朝起きた時、昼座っている時、夜寝る時。
何度も足を触って、あるのを確かめたことを。
だから、あの日。聖女が帝国に来た日。
私は遠くから彼女の姿を見ただけで恐怖で腰が抜け、ペタンと床に座ってしまいました。
逃げたくても足が動かない絶望に震える私の方へ悠々と歩いてきた彼女は微笑んで声をかけてきました。
「あら、久しぶりね。親友の私に再会した感動で立つことすら出来ないといったところ?」
その言葉を聞いた時点で意識が途切れました。
後で教えてもらいましたが、意識を失った私は白目をむいて泡を吹いていたそうです。
それだけで、それだけで終わっていればまだ良かったのですが、私の絶望は終わりません。
「我が盟友、聖女リュミエラの願いを聞き彼女の祖国を滅ぼすこととなった。彼女の親友であるお前には、計画に全面協力してもらう。」
皇帝陛下の仰ることは絶対です。
それに、私は聖女に逆らえません。
こうして私は聖女の婚約者である王子の心を奪う女、フレンダの役をさせられることとなりました。
最後には聖女の手で滅ぼされる役を。
それも全て聖女リュミエラのせい。
私の生まれた帝国はカリスマに満ち溢れた皇帝陛下が周辺諸国をまとめ上げ、泰平の世を成しています。
私も帝国の暗部一族の子として生を受けたからには、祖国にこの身全てを捧げる覚悟を決め、幼少の頃から鍛錬を欠かしませんでした。
その甲斐あって、10才の時には帝国に対立する国の偵察任務を承りました。
かの国は軍事的に優れた力を持つわけではありませんでしたが、聖女なる者を抱えていたのです。
帝国にも癒やしの魔法を使える者は何人かいますが、聖女は別格の存在と言われていました。
眉唾物と一蹴できないのは、実際にかの国との戦争に参加した戦士たちの証言が原因です。
「奴らは狂っている。腕を失おうが、足が折れようがお構いなしに攻めて来るんだ。死なない限り、聖女に治してもらえるからって。」
通常、癒やしの魔法は損傷が大き過ぎると元の身体に戻せません。けれど、聖女は生きてさえいれば健康体にまで治せると言うのです。
先生たちは聖女が常人を超えた癒やしの魔法の才能を持つ人物なのだろう、と考えていました。
それも間違いでは無かったのですけどね…
私がかつて受けた偵察任務はその聖女がどの様な人物か見定め、また可能であれば弱点を探すこと。
ついでに情報収集の結果、かの国の王子が聖女のもとを訪れる日も分かりました。
この2人を調査し、さらに可能であれば毒の1つでも仕込むつもりでした。
「まったく、可愛いスパイですこと。」
思い出しただけで、震えが止まりません。
慢心はあった。油断もしていた。
けれど、聖女が街で普通に歩いているなんて想定してしなかったし、あんな化け物だとも…
「安心しなさい。半殺しにとどめてあげる。私なら元に戻してあげられるわ。」
半殺し?
下半身を魔法で吹っ飛ばしたのが半殺し?
それが本気なら、お前は本当の化け物だ。
無意識に自分の足に触れてしまう。
あの日、私の腰から下は一度消滅しました。
今私に生えている足は聖女が治したものです。
「ねえ、あなたの身体を治してあげる。その代わり、私の親友になってくださる?」
命惜しさに、首がもげそうなほど強く頷きました。
何度も。何度も。
こちらこそお願いします、と口にして。
それから国に戻ってしばらくは平和な毎日を満喫していました。
けれど、今でも思い出します。
朝起きた時、昼座っている時、夜寝る時。
何度も足を触って、あるのを確かめたことを。
だから、あの日。聖女が帝国に来た日。
私は遠くから彼女の姿を見ただけで恐怖で腰が抜け、ペタンと床に座ってしまいました。
逃げたくても足が動かない絶望に震える私の方へ悠々と歩いてきた彼女は微笑んで声をかけてきました。
「あら、久しぶりね。親友の私に再会した感動で立つことすら出来ないといったところ?」
その言葉を聞いた時点で意識が途切れました。
後で教えてもらいましたが、意識を失った私は白目をむいて泡を吹いていたそうです。
それだけで、それだけで終わっていればまだ良かったのですが、私の絶望は終わりません。
「我が盟友、聖女リュミエラの願いを聞き彼女の祖国を滅ぼすこととなった。彼女の親友であるお前には、計画に全面協力してもらう。」
皇帝陛下の仰ることは絶対です。
それに、私は聖女に逆らえません。
こうして私は聖女の婚約者である王子の心を奪う女、フレンダの役をさせられることとなりました。
最後には聖女の手で滅ぼされる役を。
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