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第三章・伯爵家当主マリン
44・真実の告白
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僕は勇気を出そうと決めた。もしかしてその告白をすることによって嫌われてしまうかも知れない…そしてこの先何を言っても、信用して貰えなくなるかも。だけど…
例えそうなったとしても、僕はミシェルを決して恨まない!そのくらい有り得ない話だから。
「ミシェル、今から僕が言う事は誓って本当なんだ。信じて貰えるかは分からないし、実は僕も不安で一杯だよ…だけど敢えて言うよ?僕の前世はこの世界じゃない。かつて全く違う世界に生きていて、僕はその時の記憶も持っている。そしてその時の親友がレオ殿下だ。というのも二人共どういう訳か、今世も同じ世界に転生してしまったってこと。その前世を思い出したキッカケが僕が池で溺れた一年前…その頃から僕が何処となく変わったのをミシェルは既に気付いているよね?」
僕のその突拍子もない話を、ミシェルは真剣に聞いてくれている。いつものように冷静に見えるけど、きっと頭の中は相当混乱しているに違いない。そして…
「そしてこれからが一番重要な事なんだ。僕やレオにとって、この世界は小説の中…ミシェルを主人公とした物語の中なんだ。そんなの信じられないよね?そしてその小説は『真実の愛』が描かれているんだけど、その結末はミシェルとクリスが結婚する。物語の中ではクリスは女性…だからその違いはあるけど、間違いないのは僕とは結婚しない!ってこと。僕ことマリンは、ミシェルに捨てられてほんの数行で退場する脇役なんだよ!」
そこまで言い切って、僕はミシェルを見つめた。本当は信じて欲しい!だけど、無理じゃないか?って思う自分も居るんだ…そのくらい信じられない話だから。
ミシェルは僕の告白の間、言葉を挟む訳でもなく静かに聞いてくれた。そのことに凄く感謝をして、やっぱり僕の好きなミシェルだ…って思った。この先は好きでいさせてくれるかとうかも分からないけれど…
それから二人は暫くの間、押し黙ったままの時間を過ごす。告白は失敗か…もう二人の関係はお終いなの?って思いかけたその時…
「話はよく分かった。これまでのマリンの不可解な行動についてもそれで納得がいった。ずっと何故だ?って思っていたから…。だが正直に言うと、今全てを信じることは出来そうもない。この世界が『小説の中』なんだと言われてても、何が何だか分からないし、それによって私の気持ちを決めつけられるのも不快だ…」
僕はそうキッパリと言い切るミシェルを見ていた。そしてその気持ちはよく分かる…そんなの信じろって言うのが所詮無理だよ。不快か…当たり前だよね。そう思ったら急に物悲しい想いが沸き起こって、僕は泣きそうになる。
「だけど…他でもないマリンが言う事だから。私の愛するマリンが言うんだったら信じる!そんな荒唐無稽な話だが、これから私の家族になる君の言う事だから…私は信じることにする!」
そう言ってミシェルは、僕に向かって手を差し出して微笑む。その笑顔には一切の迷いのもなく、晴れやかなものだった。その顔を見ていたら…
僕の頬に涙が流れる…ポロポロと流れ落ちて、緊張して固く握っていた拳を濡らすほどに。
──もう終わりなんだと思った…二人の関係は元には戻れず、このまま離れることになったとしても、仕方がないんだと。そう切り捨てられてもおかしくないのに…
僕は涙でグシャグシャになった顔でミシェルに近付き、震える手でその手を掴んだ!
「あぁーん!ミシェル~!」
大好きだ!そんな感情を爆発させて、ミシェルにキツく抱き着いた。もう僕を離さないで!そう思いながら…
ミシェルは泣きじゃくる僕を抱き締め返して、顔を覗き込みながら「不細工だな!」ってクスッと笑う。
僕は史上最大の秘密を告白した緊張と、一番信じて欲しかった人にそうして貰えた安堵感とで、子供のようにミシェルの胸で泣き続けた。やがて泣き疲れて眠ってしまうまでミシェルは優しく僕の背を撫でで、大丈夫だよ?と言いながら抱き締め続けてくれたんだ。
例えそうなったとしても、僕はミシェルを決して恨まない!そのくらい有り得ない話だから。
「ミシェル、今から僕が言う事は誓って本当なんだ。信じて貰えるかは分からないし、実は僕も不安で一杯だよ…だけど敢えて言うよ?僕の前世はこの世界じゃない。かつて全く違う世界に生きていて、僕はその時の記憶も持っている。そしてその時の親友がレオ殿下だ。というのも二人共どういう訳か、今世も同じ世界に転生してしまったってこと。その前世を思い出したキッカケが僕が池で溺れた一年前…その頃から僕が何処となく変わったのをミシェルは既に気付いているよね?」
僕のその突拍子もない話を、ミシェルは真剣に聞いてくれている。いつものように冷静に見えるけど、きっと頭の中は相当混乱しているに違いない。そして…
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そこまで言い切って、僕はミシェルを見つめた。本当は信じて欲しい!だけど、無理じゃないか?って思う自分も居るんだ…そのくらい信じられない話だから。
ミシェルは僕の告白の間、言葉を挟む訳でもなく静かに聞いてくれた。そのことに凄く感謝をして、やっぱり僕の好きなミシェルだ…って思った。この先は好きでいさせてくれるかとうかも分からないけれど…
それから二人は暫くの間、押し黙ったままの時間を過ごす。告白は失敗か…もう二人の関係はお終いなの?って思いかけたその時…
「話はよく分かった。これまでのマリンの不可解な行動についてもそれで納得がいった。ずっと何故だ?って思っていたから…。だが正直に言うと、今全てを信じることは出来そうもない。この世界が『小説の中』なんだと言われてても、何が何だか分からないし、それによって私の気持ちを決めつけられるのも不快だ…」
僕はそうキッパリと言い切るミシェルを見ていた。そしてその気持ちはよく分かる…そんなの信じろって言うのが所詮無理だよ。不快か…当たり前だよね。そう思ったら急に物悲しい想いが沸き起こって、僕は泣きそうになる。
「だけど…他でもないマリンが言う事だから。私の愛するマリンが言うんだったら信じる!そんな荒唐無稽な話だが、これから私の家族になる君の言う事だから…私は信じることにする!」
そう言ってミシェルは、僕に向かって手を差し出して微笑む。その笑顔には一切の迷いのもなく、晴れやかなものだった。その顔を見ていたら…
僕の頬に涙が流れる…ポロポロと流れ落ちて、緊張して固く握っていた拳を濡らすほどに。
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「あぁーん!ミシェル~!」
大好きだ!そんな感情を爆発させて、ミシェルにキツく抱き着いた。もう僕を離さないで!そう思いながら…
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僕は史上最大の秘密を告白した緊張と、一番信じて欲しかった人にそうして貰えた安堵感とで、子供のようにミシェルの胸で泣き続けた。やがて泣き疲れて眠ってしまうまでミシェルは優しく僕の背を撫でで、大丈夫だよ?と言いながら抱き締め続けてくれたんだ。
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