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7本の赤いバラ
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「雪村さん、お疲れ様です。お部屋までご案内しますね」
勤務を終えて事務所を出ると、めぐはその足でホテルに向かった。
フロントで待っていた長谷部が、笑顔でめぐを客室へと案内する。
「こちらのお部屋です、どうぞ」
「ありがとうございます。わあ、ランタンが正面に見えますね」
「今夜は特に数も多くて綺麗です。ごゆっくりご覧ください。それからこちらも、もしよろしければ」
そう言って長谷部は、テーブルの上のプレートに被せてあったカバーを取った。
美しく盛り付けられたオードブルやデザートが並んでいる。
「えっ、これを私に?」
「はい、あとはシャンパンも。今お注ぎしますね。雪村さん、ソファにどうぞ」
めぐがソファに座ると、長谷部は白いナフキンを手に、慣れた様子でスマートにシャンパンを空けてグラスに注ぐ。
「どうぞ。お口に合えばいいのですが」
「ありがとうございます」
ひと口飲んでから「美味しい」とめぐはうっとり呟いた。
「長谷部さん」
「はい、なんでしょう?」
「初めてお会いした日におっしゃってましたよね。『たったひと晩だとしても、私達ホテルマンはお客様の人生に寄り添いたいと思っています』って。私、長谷部さんのその気持ちを今しみじみと感じています」
うつむいてそう言ってから、めぐは顔を上げて長谷部に笑いかけた。
「このひと晩はきっと私の心を救ってくれる。私にとって、忘れられない夜になると思います。長谷部さん、ありがとうございました」
儚げなめぐの笑顔に、長谷部は思わず息を呑む。
胸が苦しくなるほど美しく、切ないめぐの表情。
本当は今、思い切り泣きたいのではないだろうか?
それを必死に堪えて笑ってみせるめぐの辛さはいかばかりかと、長谷部は心が痛んだ。
(このまま自分が立ち去れば、彼女は一人泣き崩れてしまうかもしれない。声を上げてひと晩中涙するのかもしれない。それは、氷室さんと別れた辛さから?失恋を胸に抱えて、一人寂しく眠れない夜を過ごさなくてはいけないのか)
そう思うと、この場を去るのを躊躇した。
「雪村さん」
「はい」
「今夜、私はずっとフロントにおります。何かあれば真夜中でもご連絡ください」
めぐはじっと長谷部を見つめたあと、柔らかい笑顔をみせた。
「ありがとうございます、心強いです。長谷部さん、夜勤大変でしょうけどお身体大切になさってくださいね」
こんな時に他人の心配などしなくてもいいのに、と長谷部はもどかしくなる。
(自分に出来ることはないのだろうか。少しでも彼女の心を癒やしたい)
思案しながら口を開く。
「雪村さん、お食事が終わる頃に食器を下げに参りますね。何か他にご入用のものはありますか?」
「いいえ、大丈夫です」
「かしこまりました。では1時間後にまた立ち寄らせていただきます」
「はい、ありがとうございます」
にこやかに笑って、長谷部は一度部屋を出る。
何か自分に出来ることはないか、と必死に考えを巡らせながらフロントに戻った。
◇
「綺麗だな……」
バルコニーから空に浮かぶランタンを見つめて、めぐはポツリと呟く。
「どんな願いも叶いそう。叶うのかな?私の願いも」
ランタンを作った時、願い事を書こうとして書けなかった。
心のままに描いたのはブルースターの絵。
(ずっと私を支えてくれた宝物。寂しいな……)
思わず胸元に手を当てる。
いつもそこにあったあのネックレス。
なくなって寂しいのはきっとネックレスだけではなく、弦との心の絆。
「……信じ合う心」
ブルースターの花言葉も、弦との絆も、急に自分の中から消えてしまった。
そのことがこんなにも寂しく心細いとは。
(きっと今まで頼り過ぎてたんだよね、氷室くんに。これからは一人でしっかりしなきゃ。氷室くんが好きになった人と結ばれて、幸せになるのを喜ばなきゃ)
そう自分に言い聞かせた時、気持ちとは裏腹に涙がこぼれ落ちた。
「どうして泣くのよ、こんなんじゃだめ」
けれどそう思えば思うほど、とめどなく涙は溢れてくる。
「何が悲しいの?どうして涙が出てくるの?」
泣きながら自分に問う。
「おかしいよ。だって私、失恋した訳でもないのに」
声に出してそう言い聞かせるが、涙は止まらない。
しゃがみ込み嗚咽をもらしながら、胸元をギュッと拳で握った。
気持ちを吐き出すように身体を震わせて泣き続ける。
その時、ふいにドアのチャイムが鳴った。
めぐはハッと我に返る。
(きっと長谷部さんだ)
慌てて涙を拭いて立ち上がり、気持ちを整えてからドアを開けた。
すると……
「えっ?」
目の前に大きな深紅のバラの花束があって、めぐは息を呑む。
(なに、どういうこと?)
呆然としながら花束を見つめていると、ふっと頭上で誰かが笑みをもらす気配がした。
「サプライズ、お好きではなかったですか?」
顔を上げると長谷部が気まずそうに笑っている。
「え?あの、このお花は?」
「あなたがひと晩過ごすお部屋を、少しでも明るく飾りたくて」
そう言うと長谷部は、めぐの顔を見てハッと目を見開いた。
「雪村さん、泣いてましたか?」
「え?いえ!あの。これは今、驚いて目が潤んだだけで」
咄嗟に顔をそむけるめぐを、長谷部は身を屈めて覗き込んだ。
「目が真っ赤です。冷やしましょう。ソファに座ってください」
有無を言わさずめぐをソファに促すと、アイスペールから氷を取り出してタオルにくるむ。
めぐの隣に座ると左手でめぐの首の後ろを支え、右手に持ったタオルでめぐの目を冷やした。
「少し冷たいですよ」
「はい。……気持ちいい」
「気持ちいいのは充血している証拠です。明日もお仕事ですよね?取材を受けるのに、目が腫れたら大変だ」
「確かに。ありがとうございます、長谷部さん」
しばらく冷やしてから「これくらいでいいかな?」と長谷部はタオルを外した。
「うん、だいぶ腫れも引きましたね。これなら大丈夫そうだ」
「ありがとうございました、長谷部さん」
「どういたしまして。今、お花も飾りますね」
立ち上がると長谷部はバラと一緒に持って来ていた花瓶に生ける。
めぐはその様子を見守った。
「とっても綺麗……。何本あるんですか?」
「25本です」
「そんなにあるんですね。でも12本でも108本でもないから、本数の意味はないんですよね?」
すると花を整えていた手を止めて、長谷部は振り返る。
「ありますよ。25本の赤いバラを贈る意味」
「えっ、そうなんですか?なんて意味なんですか?」
「それは内緒です」
「えー、気になります。教えてください」
「いいえ、教えません」
頑なな長谷部にめぐはふくれっ面になる。
が、ふと思いついてスマートフォンを手に取った。
めぐの意図に気づいた長谷部が、慌てて止める。
「雪村さん!検索しちゃだめです」
だがひと足早く、めぐは答えを知る。
25本の赤いバラの花束の意味は……
『あなたの幸せを祈っています』
目にした途端、またしてもめぐの瞳が涙で潤む。
「え、ちょっと、雪村さん?大丈夫ですか?」
心配そうに焦り出す長谷部に、めぐは泣きながら笑ってみせた。
「ふふっ、やっぱり長谷部さんはロマンチストです」
「そうかな、ごめん。ちょっとキザだったな」
「いえ、嬉しいです」
目に涙をいっぱい溜めながら嬉しそうに微笑むめぐに、長谷部は切なさを感じながらも頷いた。
◇
翌朝。
めぐはすっきりとした顔でフロントに現れる。
「長谷部さん、夕べは本当にありがとうございました」
「どういたしまして。ゆっくりお休みになれましたか?」
「はい、気持ちも身体も元気になりました」
「それは良かった。そのお花、雪村さんのお仕事中はここでお預かりして水揚げしておきますよ」
長谷部は、めぐが手にしている25本のバラの花束に目をやってそう言う。
「え、いいんですか?」
「はい。勤務が終わる頃にお届けに上がりますね」
「いえ、そんな。私がこちらに取りに伺います。時間も読めませんから」
「承知しました。お待ちしております」
めぐはお礼を言って長谷部に花束を託した。
「ではチェックアウトをお願いします」
そう言ってめぐが財布を取り出すと、長谷部は軽く首を振って微笑んだ。
「お支払いは結構です」
「え、なぜですか?」
「ささやかながら、私からの日頃の感謝の気持ちとしてお受け取りください」
「え?いえいえ、全然ささやかな金額ではないですよね?」
「ささやかですよ。雪村さんにはドレスモデルの件でも大変お世話になっていますから。カタログも好評で、いつか改めてお礼をしたいと思っていました」
「でも、まさかそんな……」
数万円もする宿泊代にシャンパンに食事、しかもバラの花束ももらっているのだ。
そんな大きな額を長谷部に負担してもらう訳にはいかない。
だが長谷部も譲らなかった。
「本当に結構ですから。雪村さん、お仕事に遅れますよ。それにほら、後ろにチェックアウトのお客様も並ばれていますし」
「あ!すみません」
めぐは振り返って慌てて頭を下げる。
「では、あの。取り敢えずこの場は失礼いたします」
「はい。ご利用いただき誠にありがとうございました」
また後ほど、と長谷部に断ってめぐはホテルをあとにした。
◇
(うーん、本当にこのままって訳にはいかないよね)
出社して更衣室で制服に着替えながら、めぐは考え込む。
(勤務後に花束を受け取りに行った時に、支払いさせてもらおう)
長谷部は夜勤明けで帰っているかもしれないが、他のスタッフに事情を話せば大丈夫だろう。
そう思い、めぐは勤務後に再びホテルに向かった。
(えっ!長谷部さん、まだ勤務中なの?)
エントランスに入りロビーを横切ってフロントに行くと、カウンターで接客している長谷部の姿があった。
めぐは驚きつつ、少し離れた場所で見守る。
案内を終えてお辞儀をしながらゲストを見送った長谷部が、めぐに気づいてにこっと笑いかける。
隣のスタッフに声をかけてからフロントを出て来た。
「雪村さん、お疲れ様です」
「お疲れ様です。長谷部さん、夜勤明けでもうお帰りかと思ってました」
「ええ。朝の8時で勤務を終えて、仮眠室で休んでいました。今日はオフなのでもう帰ります」
「え?オフなのに、もしかして私を待っていてくださったのでしょうか」
「いえ、いつもの流れですよ。車で来ているので、夜勤明けは少し睡眠を取ってから帰るようにしているんです。お花を持って来ますので、ロビーのソファでお待ちいただけますか?」
「はい、分かりました」
長谷部はスマートな身のこなしで踵を返し、バックオフィスへと姿を消した。
めぐはふかふかのソファに座って、改めてロビーを見渡す。
夏休みが終わったばかりの平日のせいかそこまで混雑しておらず、ゲストの様子も比較的落ち着いた雰囲気だった。
(それにしても高級感でいっぱいだな、ここは。毎日こんな素敵な空間で働けたら、私も長谷部さんみたいな優雅な身のこなしを会得出来るのかな)
そんなことを思いながら待っていると、やがて私服らしいサマージャケット姿の長谷部が花束を持って戻って来た。
「雪村さん、お待たせしました」
めぐは立ち上がって花束を受け取る。
「ありがとうございます。とっても綺麗ですね」
改めて赤いバラに顔を寄せて微笑むと、すぐ近くで「素敵!」と声が上がった。
「いいなあ、私もプレゼントされたい」
彼氏におねだりしているらしい声が聞こえてきて、めぐは思わずうつむく。
(そういうのじゃないんだけど……)
すると長谷部が少し考える素振りのあと、めぐに尋ねた。
「雪村さん、もしよろしければご自宅まで車でお送りしましょうか?」
「ええ!?いえ、そんな。電車で帰りますので」
「でも電車の中で注目を集めてしまうかもしれません。私が差し上げたばかりにそんな思いをさせるのは心苦しいので、どうか送らせてください」
「いえ、本当に大丈夫ですから。それより長谷部さん、夕べのお支払いをさせてください」
「お気になさらず。というより、もう決済してしまったので今さら変更は出来ないのです」
「では私が長谷部さんにその分の金額をお支払いしますので」
食い下がると長谷部は困ったように眉根を寄せてから、めぐの背中に手を添えてエントランスへと促した。
「とにかくここを出ましょう。ゲストの目がありますので」
「あ、そうですね」
私服に着替えているが、恐らく支配人だと気づかれてしまうのだろう。
めぐは黙って長谷部に続いてホテルを出た。
「雪村さん、実はお話ししたいことがあるんです。車の中で聞いていただけないでしょうか?」
「え?はい、分かりました」
ホテルの裏手にある駐車場に行くと、長谷部は従業員用のスペースに停まっていた白いセダンのドアを開ける。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
めぐが助手席に乗り込むと、長谷部は静かにドアを閉めてから運転席に回った。
「運転しながらお話ししますね。雪村さん、ご自宅はどの辺りですか?」
「えっとここから3つ西隣の駅が最寄りです」
「あ、私と方角同じですね。じゃあそちらに向かいます。シートベルト締めてください」
「はい」
花束を片手に持ち替えて、めぐはシートベルトを締めた。
長谷部はゆっくりと車を走らせる。
性格の表れだろうか、丁寧に慎重に運転する長谷部に、めぐはそっと隣から様子をうかがった。
「ん?どうかしましたか?」
「いえ、あの。長谷部さんって運転もジェントルマンだなと思って」
「え?ははは!そんなこと初めて言われました」
「とっても優しい運転ですよね。彼女さんには言われませんか?」
「あれ?彼女いるように見えましたか?もしいたら、あなたにバラの花束を贈ったりはしませんよ」
言われてめぐは、それはそうだと頷く。
「そうですよね、失礼しました」
「いえ。それより今回25本のバラをあなたに贈りましたが、本当は7本贈りたかったんですよ」
「7本、ですか?それにも意味が?」
「そうです」
「えっと、検索してもいいですか?」
長谷部はクスッと笑ってから、めぐをチラリと横目で見た。
「だめです」
「えー、知りたいです」
「あとで教えますから、検索はしないでください」
「教えていただけるんですね?それなら検索しないでお待ちしています」
「ははっ!はい、少々お待ちください」
楽しそうな長谷部につられて、めぐも思わず頬を緩める。
やがてめぐの最寄駅が近づいた。
「雪村さん、私が信用ならなければ駅で降ろしますが、ご迷惑でなければご自宅までお送りします」
「ふふっ、では自宅までお願いします」
「はい。どちらまで参りましょう?」
「そこの信号を左に曲がって直進してください」
「かしこまりました」
どこまでも紳士的な口調のまま、長谷部はめぐの自宅マンションまで運転する。
「このマンションです」
めぐが指差すと、長谷部はロータリーに車を停めた。
「長谷部さん、本当にありがとうございました。あの、お支払いを……」
「雪村さん、それについてはもう忘れてください。代わりに私の話を聞いてくれますか?」
「え、はい」
めぐは居住まいを正して長谷部に向き直る。
「まず、赤いバラの本数の意味からお伝えします。7本贈るのは『ずっとあなたが好きでした』という意味です」
「え……?」
「私のあなたへの気持ちそのものです。雪村さん、私は初めてお会いした時からずっとあなたが好きでした。けれどその時あなたは氷室さんとつき合っていましたよね?幸せそうなあなたの笑顔を見て、氷室さんから奪うことはしたくなかった。あなたが幸せならそれでいい、本気でそう思い自分の気持ちをしまい込んでいました」
真剣な目で真っ直ぐに見つめられ、めぐは言葉が出て来ない。
「そんなあなたが夕べ涙を流すのを見て、私は胸が締めつけられました。あなたにはいつも笑顔でいてほしい。氷室さんと別れた辛さを抱えたあなたは、今はまだ氷室さんの事しか考えられないと思います。だけど雪村さん、どうか忘れないでください。私があなたを守りたいと思っていることを。少しずつ氷室さんから心が離れたら、私のことを思い出してください。私はずっと、いつまででも待ちます。あなたが私に目を向けてくれるのを。そしてその時は改めて気持ちを伝えさせてください。7本の赤いバラと一緒に」
そう言うと長谷部は運転席のドアを開けて車を降り、助手席のドアを外から開けた。
「どうぞ」
差し出された手を借りて、めぐも車を降りる。
向かい合うと、うつむいたままのめぐに長谷部は笑いかけた。
「雪村さん、そんな困った顔しないで。泣きたくなったらいつでも会いに来てください。氷室さんへの未練の言葉でも、何でも聞きますから。どんなあなたでも、私は今のあなたを受け止めます」
「……長谷部さん」
「今は私のことなんて、微塵も考えられないでしょう?それでいいんです。まずはゆっくり休んで美味しいものでも食べて、元気になってくださいね」
「はい、ありがとうございます」
「それじゃあ、おやすみなさい」
「おやすみなさい。送ってくださってありがとうございました」
めぐは頭を下げてからマンションのエントランスに入る。
振り返ると、長谷部はその場に佇んだまま優しく笑って手を振った。
勤務を終えて事務所を出ると、めぐはその足でホテルに向かった。
フロントで待っていた長谷部が、笑顔でめぐを客室へと案内する。
「こちらのお部屋です、どうぞ」
「ありがとうございます。わあ、ランタンが正面に見えますね」
「今夜は特に数も多くて綺麗です。ごゆっくりご覧ください。それからこちらも、もしよろしければ」
そう言って長谷部は、テーブルの上のプレートに被せてあったカバーを取った。
美しく盛り付けられたオードブルやデザートが並んでいる。
「えっ、これを私に?」
「はい、あとはシャンパンも。今お注ぎしますね。雪村さん、ソファにどうぞ」
めぐがソファに座ると、長谷部は白いナフキンを手に、慣れた様子でスマートにシャンパンを空けてグラスに注ぐ。
「どうぞ。お口に合えばいいのですが」
「ありがとうございます」
ひと口飲んでから「美味しい」とめぐはうっとり呟いた。
「長谷部さん」
「はい、なんでしょう?」
「初めてお会いした日におっしゃってましたよね。『たったひと晩だとしても、私達ホテルマンはお客様の人生に寄り添いたいと思っています』って。私、長谷部さんのその気持ちを今しみじみと感じています」
うつむいてそう言ってから、めぐは顔を上げて長谷部に笑いかけた。
「このひと晩はきっと私の心を救ってくれる。私にとって、忘れられない夜になると思います。長谷部さん、ありがとうございました」
儚げなめぐの笑顔に、長谷部は思わず息を呑む。
胸が苦しくなるほど美しく、切ないめぐの表情。
本当は今、思い切り泣きたいのではないだろうか?
それを必死に堪えて笑ってみせるめぐの辛さはいかばかりかと、長谷部は心が痛んだ。
(このまま自分が立ち去れば、彼女は一人泣き崩れてしまうかもしれない。声を上げてひと晩中涙するのかもしれない。それは、氷室さんと別れた辛さから?失恋を胸に抱えて、一人寂しく眠れない夜を過ごさなくてはいけないのか)
そう思うと、この場を去るのを躊躇した。
「雪村さん」
「はい」
「今夜、私はずっとフロントにおります。何かあれば真夜中でもご連絡ください」
めぐはじっと長谷部を見つめたあと、柔らかい笑顔をみせた。
「ありがとうございます、心強いです。長谷部さん、夜勤大変でしょうけどお身体大切になさってくださいね」
こんな時に他人の心配などしなくてもいいのに、と長谷部はもどかしくなる。
(自分に出来ることはないのだろうか。少しでも彼女の心を癒やしたい)
思案しながら口を開く。
「雪村さん、お食事が終わる頃に食器を下げに参りますね。何か他にご入用のものはありますか?」
「いいえ、大丈夫です」
「かしこまりました。では1時間後にまた立ち寄らせていただきます」
「はい、ありがとうございます」
にこやかに笑って、長谷部は一度部屋を出る。
何か自分に出来ることはないか、と必死に考えを巡らせながらフロントに戻った。
◇
「綺麗だな……」
バルコニーから空に浮かぶランタンを見つめて、めぐはポツリと呟く。
「どんな願いも叶いそう。叶うのかな?私の願いも」
ランタンを作った時、願い事を書こうとして書けなかった。
心のままに描いたのはブルースターの絵。
(ずっと私を支えてくれた宝物。寂しいな……)
思わず胸元に手を当てる。
いつもそこにあったあのネックレス。
なくなって寂しいのはきっとネックレスだけではなく、弦との心の絆。
「……信じ合う心」
ブルースターの花言葉も、弦との絆も、急に自分の中から消えてしまった。
そのことがこんなにも寂しく心細いとは。
(きっと今まで頼り過ぎてたんだよね、氷室くんに。これからは一人でしっかりしなきゃ。氷室くんが好きになった人と結ばれて、幸せになるのを喜ばなきゃ)
そう自分に言い聞かせた時、気持ちとは裏腹に涙がこぼれ落ちた。
「どうして泣くのよ、こんなんじゃだめ」
けれどそう思えば思うほど、とめどなく涙は溢れてくる。
「何が悲しいの?どうして涙が出てくるの?」
泣きながら自分に問う。
「おかしいよ。だって私、失恋した訳でもないのに」
声に出してそう言い聞かせるが、涙は止まらない。
しゃがみ込み嗚咽をもらしながら、胸元をギュッと拳で握った。
気持ちを吐き出すように身体を震わせて泣き続ける。
その時、ふいにドアのチャイムが鳴った。
めぐはハッと我に返る。
(きっと長谷部さんだ)
慌てて涙を拭いて立ち上がり、気持ちを整えてからドアを開けた。
すると……
「えっ?」
目の前に大きな深紅のバラの花束があって、めぐは息を呑む。
(なに、どういうこと?)
呆然としながら花束を見つめていると、ふっと頭上で誰かが笑みをもらす気配がした。
「サプライズ、お好きではなかったですか?」
顔を上げると長谷部が気まずそうに笑っている。
「え?あの、このお花は?」
「あなたがひと晩過ごすお部屋を、少しでも明るく飾りたくて」
そう言うと長谷部は、めぐの顔を見てハッと目を見開いた。
「雪村さん、泣いてましたか?」
「え?いえ!あの。これは今、驚いて目が潤んだだけで」
咄嗟に顔をそむけるめぐを、長谷部は身を屈めて覗き込んだ。
「目が真っ赤です。冷やしましょう。ソファに座ってください」
有無を言わさずめぐをソファに促すと、アイスペールから氷を取り出してタオルにくるむ。
めぐの隣に座ると左手でめぐの首の後ろを支え、右手に持ったタオルでめぐの目を冷やした。
「少し冷たいですよ」
「はい。……気持ちいい」
「気持ちいいのは充血している証拠です。明日もお仕事ですよね?取材を受けるのに、目が腫れたら大変だ」
「確かに。ありがとうございます、長谷部さん」
しばらく冷やしてから「これくらいでいいかな?」と長谷部はタオルを外した。
「うん、だいぶ腫れも引きましたね。これなら大丈夫そうだ」
「ありがとうございました、長谷部さん」
「どういたしまして。今、お花も飾りますね」
立ち上がると長谷部はバラと一緒に持って来ていた花瓶に生ける。
めぐはその様子を見守った。
「とっても綺麗……。何本あるんですか?」
「25本です」
「そんなにあるんですね。でも12本でも108本でもないから、本数の意味はないんですよね?」
すると花を整えていた手を止めて、長谷部は振り返る。
「ありますよ。25本の赤いバラを贈る意味」
「えっ、そうなんですか?なんて意味なんですか?」
「それは内緒です」
「えー、気になります。教えてください」
「いいえ、教えません」
頑なな長谷部にめぐはふくれっ面になる。
が、ふと思いついてスマートフォンを手に取った。
めぐの意図に気づいた長谷部が、慌てて止める。
「雪村さん!検索しちゃだめです」
だがひと足早く、めぐは答えを知る。
25本の赤いバラの花束の意味は……
『あなたの幸せを祈っています』
目にした途端、またしてもめぐの瞳が涙で潤む。
「え、ちょっと、雪村さん?大丈夫ですか?」
心配そうに焦り出す長谷部に、めぐは泣きながら笑ってみせた。
「ふふっ、やっぱり長谷部さんはロマンチストです」
「そうかな、ごめん。ちょっとキザだったな」
「いえ、嬉しいです」
目に涙をいっぱい溜めながら嬉しそうに微笑むめぐに、長谷部は切なさを感じながらも頷いた。
◇
翌朝。
めぐはすっきりとした顔でフロントに現れる。
「長谷部さん、夕べは本当にありがとうございました」
「どういたしまして。ゆっくりお休みになれましたか?」
「はい、気持ちも身体も元気になりました」
「それは良かった。そのお花、雪村さんのお仕事中はここでお預かりして水揚げしておきますよ」
長谷部は、めぐが手にしている25本のバラの花束に目をやってそう言う。
「え、いいんですか?」
「はい。勤務が終わる頃にお届けに上がりますね」
「いえ、そんな。私がこちらに取りに伺います。時間も読めませんから」
「承知しました。お待ちしております」
めぐはお礼を言って長谷部に花束を託した。
「ではチェックアウトをお願いします」
そう言ってめぐが財布を取り出すと、長谷部は軽く首を振って微笑んだ。
「お支払いは結構です」
「え、なぜですか?」
「ささやかながら、私からの日頃の感謝の気持ちとしてお受け取りください」
「え?いえいえ、全然ささやかな金額ではないですよね?」
「ささやかですよ。雪村さんにはドレスモデルの件でも大変お世話になっていますから。カタログも好評で、いつか改めてお礼をしたいと思っていました」
「でも、まさかそんな……」
数万円もする宿泊代にシャンパンに食事、しかもバラの花束ももらっているのだ。
そんな大きな額を長谷部に負担してもらう訳にはいかない。
だが長谷部も譲らなかった。
「本当に結構ですから。雪村さん、お仕事に遅れますよ。それにほら、後ろにチェックアウトのお客様も並ばれていますし」
「あ!すみません」
めぐは振り返って慌てて頭を下げる。
「では、あの。取り敢えずこの場は失礼いたします」
「はい。ご利用いただき誠にありがとうございました」
また後ほど、と長谷部に断ってめぐはホテルをあとにした。
◇
(うーん、本当にこのままって訳にはいかないよね)
出社して更衣室で制服に着替えながら、めぐは考え込む。
(勤務後に花束を受け取りに行った時に、支払いさせてもらおう)
長谷部は夜勤明けで帰っているかもしれないが、他のスタッフに事情を話せば大丈夫だろう。
そう思い、めぐは勤務後に再びホテルに向かった。
(えっ!長谷部さん、まだ勤務中なの?)
エントランスに入りロビーを横切ってフロントに行くと、カウンターで接客している長谷部の姿があった。
めぐは驚きつつ、少し離れた場所で見守る。
案内を終えてお辞儀をしながらゲストを見送った長谷部が、めぐに気づいてにこっと笑いかける。
隣のスタッフに声をかけてからフロントを出て来た。
「雪村さん、お疲れ様です」
「お疲れ様です。長谷部さん、夜勤明けでもうお帰りかと思ってました」
「ええ。朝の8時で勤務を終えて、仮眠室で休んでいました。今日はオフなのでもう帰ります」
「え?オフなのに、もしかして私を待っていてくださったのでしょうか」
「いえ、いつもの流れですよ。車で来ているので、夜勤明けは少し睡眠を取ってから帰るようにしているんです。お花を持って来ますので、ロビーのソファでお待ちいただけますか?」
「はい、分かりました」
長谷部はスマートな身のこなしで踵を返し、バックオフィスへと姿を消した。
めぐはふかふかのソファに座って、改めてロビーを見渡す。
夏休みが終わったばかりの平日のせいかそこまで混雑しておらず、ゲストの様子も比較的落ち着いた雰囲気だった。
(それにしても高級感でいっぱいだな、ここは。毎日こんな素敵な空間で働けたら、私も長谷部さんみたいな優雅な身のこなしを会得出来るのかな)
そんなことを思いながら待っていると、やがて私服らしいサマージャケット姿の長谷部が花束を持って戻って来た。
「雪村さん、お待たせしました」
めぐは立ち上がって花束を受け取る。
「ありがとうございます。とっても綺麗ですね」
改めて赤いバラに顔を寄せて微笑むと、すぐ近くで「素敵!」と声が上がった。
「いいなあ、私もプレゼントされたい」
彼氏におねだりしているらしい声が聞こえてきて、めぐは思わずうつむく。
(そういうのじゃないんだけど……)
すると長谷部が少し考える素振りのあと、めぐに尋ねた。
「雪村さん、もしよろしければご自宅まで車でお送りしましょうか?」
「ええ!?いえ、そんな。電車で帰りますので」
「でも電車の中で注目を集めてしまうかもしれません。私が差し上げたばかりにそんな思いをさせるのは心苦しいので、どうか送らせてください」
「いえ、本当に大丈夫ですから。それより長谷部さん、夕べのお支払いをさせてください」
「お気になさらず。というより、もう決済してしまったので今さら変更は出来ないのです」
「では私が長谷部さんにその分の金額をお支払いしますので」
食い下がると長谷部は困ったように眉根を寄せてから、めぐの背中に手を添えてエントランスへと促した。
「とにかくここを出ましょう。ゲストの目がありますので」
「あ、そうですね」
私服に着替えているが、恐らく支配人だと気づかれてしまうのだろう。
めぐは黙って長谷部に続いてホテルを出た。
「雪村さん、実はお話ししたいことがあるんです。車の中で聞いていただけないでしょうか?」
「え?はい、分かりました」
ホテルの裏手にある駐車場に行くと、長谷部は従業員用のスペースに停まっていた白いセダンのドアを開ける。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
めぐが助手席に乗り込むと、長谷部は静かにドアを閉めてから運転席に回った。
「運転しながらお話ししますね。雪村さん、ご自宅はどの辺りですか?」
「えっとここから3つ西隣の駅が最寄りです」
「あ、私と方角同じですね。じゃあそちらに向かいます。シートベルト締めてください」
「はい」
花束を片手に持ち替えて、めぐはシートベルトを締めた。
長谷部はゆっくりと車を走らせる。
性格の表れだろうか、丁寧に慎重に運転する長谷部に、めぐはそっと隣から様子をうかがった。
「ん?どうかしましたか?」
「いえ、あの。長谷部さんって運転もジェントルマンだなと思って」
「え?ははは!そんなこと初めて言われました」
「とっても優しい運転ですよね。彼女さんには言われませんか?」
「あれ?彼女いるように見えましたか?もしいたら、あなたにバラの花束を贈ったりはしませんよ」
言われてめぐは、それはそうだと頷く。
「そうですよね、失礼しました」
「いえ。それより今回25本のバラをあなたに贈りましたが、本当は7本贈りたかったんですよ」
「7本、ですか?それにも意味が?」
「そうです」
「えっと、検索してもいいですか?」
長谷部はクスッと笑ってから、めぐをチラリと横目で見た。
「だめです」
「えー、知りたいです」
「あとで教えますから、検索はしないでください」
「教えていただけるんですね?それなら検索しないでお待ちしています」
「ははっ!はい、少々お待ちください」
楽しそうな長谷部につられて、めぐも思わず頬を緩める。
やがてめぐの最寄駅が近づいた。
「雪村さん、私が信用ならなければ駅で降ろしますが、ご迷惑でなければご自宅までお送りします」
「ふふっ、では自宅までお願いします」
「はい。どちらまで参りましょう?」
「そこの信号を左に曲がって直進してください」
「かしこまりました」
どこまでも紳士的な口調のまま、長谷部はめぐの自宅マンションまで運転する。
「このマンションです」
めぐが指差すと、長谷部はロータリーに車を停めた。
「長谷部さん、本当にありがとうございました。あの、お支払いを……」
「雪村さん、それについてはもう忘れてください。代わりに私の話を聞いてくれますか?」
「え、はい」
めぐは居住まいを正して長谷部に向き直る。
「まず、赤いバラの本数の意味からお伝えします。7本贈るのは『ずっとあなたが好きでした』という意味です」
「え……?」
「私のあなたへの気持ちそのものです。雪村さん、私は初めてお会いした時からずっとあなたが好きでした。けれどその時あなたは氷室さんとつき合っていましたよね?幸せそうなあなたの笑顔を見て、氷室さんから奪うことはしたくなかった。あなたが幸せならそれでいい、本気でそう思い自分の気持ちをしまい込んでいました」
真剣な目で真っ直ぐに見つめられ、めぐは言葉が出て来ない。
「そんなあなたが夕べ涙を流すのを見て、私は胸が締めつけられました。あなたにはいつも笑顔でいてほしい。氷室さんと別れた辛さを抱えたあなたは、今はまだ氷室さんの事しか考えられないと思います。だけど雪村さん、どうか忘れないでください。私があなたを守りたいと思っていることを。少しずつ氷室さんから心が離れたら、私のことを思い出してください。私はずっと、いつまででも待ちます。あなたが私に目を向けてくれるのを。そしてその時は改めて気持ちを伝えさせてください。7本の赤いバラと一緒に」
そう言うと長谷部は運転席のドアを開けて車を降り、助手席のドアを外から開けた。
「どうぞ」
差し出された手を借りて、めぐも車を降りる。
向かい合うと、うつむいたままのめぐに長谷部は笑いかけた。
「雪村さん、そんな困った顔しないで。泣きたくなったらいつでも会いに来てください。氷室さんへの未練の言葉でも、何でも聞きますから。どんなあなたでも、私は今のあなたを受け止めます」
「……長谷部さん」
「今は私のことなんて、微塵も考えられないでしょう?それでいいんです。まずはゆっくり休んで美味しいものでも食べて、元気になってくださいね」
「はい、ありがとうございます」
「それじゃあ、おやすみなさい」
「おやすみなさい。送ってくださってありがとうございました」
めぐは頭を下げてからマンションのエントランスに入る。
振り返ると、長谷部はその場に佇んだまま優しく笑って手を振った。
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