年下幼馴染アルファの執着〜なかったことにはさせない〜

ひなた翠

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第三章:抑えきれない欲望

目覚めるオメガの甘い本能

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「海ちゃん、もういいから……入れて」

 懇願の言葉が、口から零れ落ちた。恥ずかしさも、羞恥心も、もう残っていなかった。ただ、海斗に抱かれたいという欲求だけが、今の僕を突き動かしている。

 海斗が嬉しそうに口元を緩めると服を脱ぎ始めた。

「はーちゃん、ちょっと待ってね」

 Tシャツを脱ぎ捨てて、ズボンも脱いでいく。鍛えられた身体が月明かりに照らされて、筋肉の起伏が浮かび上がる。

 広い肩幅、引き締まった腹筋、逞しい太腿。全てが、男性としての魅力に満ちていた。汗で濡れた肌が、月光を受けて艶めかしく光っている。

(海ちゃん、格好いい。僕だけのものにしたい)
 僕以外の人を見て欲しくない。

 下着も脱ぎ捨てられて、海斗が全裸になった。

 熱く反り返ったものが、目に入った。大きく、太く、先端から蜜が滲んでいる。月明かりを受けて、濡れた先端が光っている。

(大きくない? 海ちゃんの――)

 あんなに大きなものが、僕の中に入るのだろうか。指三本分では、慣らしたとは言えない。

 海斗が僕の足を開かせた。

 膝を抱えられて、大きく開脚させられる。恥ずかしい姿勢に、顔が熱くなる。一番見られたくない場所が、海斗の目の前に晒されている。海斗が僕の間に入り込んで、熱いものが秘所に押し当てられた。

「海ちゃん、この格好、恥ずかしいよ」
「はーちゃん、綺麗だよ――入れるよ」

 海斗が囁いた。優しい声だったが、熱を帯びている。先端が孔を押し広げて、ゆっくりと侵入してくる。海斗の熱が、僕の中に入ってきた。

「あ、ああっ」
 声が漏れた。

(太い……苦しいっ。海ちゃんの、大きい)

 指よりもずっと太くて、入口が裂けそうなくらいに押し広げられていく。痛みはないが、圧迫感が強い。
 身体が、海斗の剛直を受け入れようと必死に広がっていく。内壁が伸ばされて、海斗の熱を包み込んでいく。

 海斗が腰を進めていく。

 少しずつ、ゆっくりと、奥へと侵入してくる。内壁が押し広げられて、身体の奥が満たされていく。海斗の熱が、身体の一番奥まで届いていく。

「全部、入ったよ」

 海斗が優しく囁いた。僕の額にキスを落として、髪を撫でてくれる。身体が繋がっている。海斗と、一つになっている。その事実に、胸が熱くなった。涙が溢れそうになるのを、必死にこらえる。

「はーちゃん、動くよ」
 海斗が動き始める。

 ゆっくりと腰を引き、また押し込んでくる。内壁が擦られて、快感が走る。出し入れを繰り返されるたびに、身体が上下に揺さぶられた。ベッドが軋む音に、擦られるたびに鳴る水音、二人の肌が触れ合う乾いた音が、静かな夜に響き渡り淫靡な空間になる。

「あ、ん、ああっ」
 声が止まらない。海斗の動きに合わせて、喘ぎ声が漏れていく。

「海ちゃん……気持ち、いい――ああっ、んぅ」
 もう何も考えられない。ただ、海斗に抱かれている幸せだけが、心も身体を満たしていく。

「はーちゃん」
 海斗が甘い吐息で名前を呼んだ。その声を聞くだけで、身体が蕩けていく。

「もっと……呼んで、海ちゃん……僕を呼んで」
「はーちゃん――遥、遥……」

(海ちゃん、もっと僕だけを見て。僕だけを求めて)

 海斗の動きが速くなった。

 激しく腰を打ち付けられて、奥を突かれる。敏感な場所を執拗に擦られて、快感が積み重なっていった。息が荒くなり、汗が止まらない。

「ああぁ、海ちゃん……イクっ、イッちゃう――」

 三度目の絶頂が、迫ってくる。

 下腹部に熱が集まっていき、身体が限界を迎えようとしている。海斗が中にいるまま頂点を迎えるなんて、どうなってしまうのだろうか。

「海ちゃん、もう、あ、ああっ」

 言葉にならない声が漏れる。海斗が奥を突き上げてきて、限界を超えた。身体の奥から、快感が爆発していく。全身が痙攣して、内壁が海斗を締め付けた。海斗のものを、離したくないと身体が訴えている。視界が白く染まり、意識が飛びそうになる。

 三度目の頂点は、今までないくらい満足感があった。

 身体が激しく痙攣して、海斗の背中に爪を立ててしまう。内壁が収縮して、海斗を奥まで引き込もうとする。海斗が小さく呻いて、動きを一瞬止めた。海斗も僕に締め付けられて、気持ちいいのだろうか。

 呻いた声に艶があった。

「気持ちいい、はーちゃん」

 僕の痙攣が落ち着く前に、また動き始めて、さらに激しく突き上げてくる。頂点を迎えた直後の敏感な身体に、容赦なく快感が叩き込まれていく。もう無理だと思うのに、身体は正直に反応してしまう。

「海ちゃん、待って、待って……またすぐに――あああっ」
 四度目の絶頂が、すぐに訪れた。

 さっきよりも早く、快楽の波が押し寄せてくる。身体が震えて、声にならない叫びが喉から漏れる。ただ、喘ぎ声だけが部屋に響き渡った。

 海斗は僕の痙攣がおさまる前にまた激しく突き上げてくる。五度目、六度目と――もう数えられないくらい絶頂を味わう。

 頂点を迎えるたびに、身体が痙攣して、意識が軽く飛ぶ。でも海斗が動きを止めないから、すぐに強い快感で意識を取り戻すと同時に絶頂がきてしまう。

 身体が、自分の体液でベトベトになっていた。もう吐き出される精液もないようで、絶頂を迎えても何も出ない。
 汗と、蜜と、涙で、全身が濡れていた。

 快感に溺れて、何も考えられなくなっている。海斗の温もりだけが、確かに感じられる。海斗の匂いに包まれて、海斗の熱に満たされて、全てが幸せだった。

「海ちゃん、好き……」

 意識の底から、想いが溢れてきた。隠していた気持ちが、抑えきれずに口から零れ落ちる。海斗に手を伸ばして、抱きついた。海斗の背中に腕を回して、強く抱きしめる。汗で濡れた肌が、密着していく。

「はーちゃん」
 海斗の動きが、さらに激しくなった。

 奥を何度も突かれて、快感が限界を超えていく。海斗の呼吸も荒くなり、汗が僕の身体に滴り落ちてくる。海斗も、もう限界なのだろうか。

「はーちゃん、俺も、好きだ」
 海斗が囁いた。

 その言葉を聞いた瞬間、僕はまた頂点を迎えてしまった。身体が激しく痙攣して、内壁が海斗を締め付けていく。
 海斗が奥で止まった。

 熱いものが、最奥に注がれていくのが分かった。海斗が絶頂を迎えている。僕の中で、海斗が達している。脈動するものが、身体の奥で熱を放っていく。ドクン、ドクンと、海斗の鼓動が伝わってくる。

 身体の奥が、海斗の熱で満たされている。温かくて、心地よくて、幸せだった。こんなに幸せな瞬間は、今まで経験したことがない。

 海斗が僕を見つめていた。

 汗で濡れた顔で、優しく微笑んでいる。僕も笑顔を返そうとしたが、涙が溢れてきた。嬉しかった。海斗に抱かれて、海斗に愛されて、幸せで涙が止まらなかった。

「もっと欲しい。もっと――海ちゃんのを僕に注いで」

 自分でも信じられない言葉が、口から出てきた。足を開いて、海斗を誘う。もう一度、海斗に抱かれたい。もっと深く繋がりたい。海斗の熱で、もっと満たされたい。

 海斗の口元が緩んだ。
 嬉しそうに笑って、僕の額にキスを落とす。頬にキスをして、唇にキスをして、優しく愛おしむように触れてくる。

「たくさん注いでやる。俺の子を産んでよ、はーちゃん」
 海斗が囁いた。

「産む! 海ちゃんの子……産みたい」

 また腰を動かし始めて、二度目の交わりが始まる。さっきよりも優しく、ゆっくりと、愛おしむように抱かれていく。海斗の手が、僕の身体を撫でていく。髪を撫で、頬を撫で、首筋を撫でていく。

 ただ、海斗の温もりに包まれて、幸せな時間が流れていった。海斗のキスを受けて、海斗に抱かれて、海斗の中で絶頂を迎えて、全てが夢のようだった。

 気がつくと、窓から朝日が差し込んでいて、部屋が明るくなっている。鳥のさえずりが聞こえて、新しい一日が始まっていた。カーテンの隙間から差し込む光が、ベッドを照らしている。

(あれ……いつの間に寝てたんだろう)

 目が覚め、覚醒していくと身体の異変に気づく。

 全身が怠く、力が入らない。身体のあちこちが痛い。特に腰が怠くて痛かった。動こうとすると、筋肉痛のような痛みが走る。

 ベッドから出ようとして、抵抗を感じて視線を動かすと大きな腕が、僕の身体を抱き締めていた。
背中に、誰かの体温が密着している。規則正しい呼吸が、首筋にかかっていた。心臓の音が、背中越しに伝わってくる。

(海ちゃん――)

 海斗が、僕を抱き締めて眠っている。裸の身体が密着していて、肌と肌が触れ合っている。海斗の腕の中で、僕は守られるように抱かれていた。

 昨晩の記憶が、蘇ってきた。後半の記憶はもう朧げで、ただ淫らに海斗を求めて足を広げて、恥ずかしい言葉を発していたのを思い出した。

(ヒートって恐ろしい)

 理性を失い、本能だけでアルファを求めて身体を貪る。動物本来の行動と言えば、それまでだが――大学受験のために宿代わりに泊まっただけの海斗に、なんてことしてしまったのだろうと後悔の念が生まれた。

 脳内が、真っ白になった。
 やってしまった。海斗と、寝てしまった。一番やってはいけないことをしてしまった。

 ベッドに男二人が裸で抱き合って寝ている。

(僕はなんのために、一人暮らしを始めたんだ! 海ちゃんをオメガの本能で襲わないためなのに)

 これでは一人暮らしの意味がない。

 でも身体は、楽になっている。

 ヒートの熱は引いていて、火照りも疼きもない。いつもなら、ヒートになったら三日三晩、ひたすら強い欲求との戦いで疲弊するのに。

 突然のヒートだったが、海斗に抱かれたことで一晩で収まったようだった。身体は満たされて、疲労感だけが残っている。海斗の熱が、まだ身体の奥に残っているのがわかる。

(ああ、どうしよう――)
 激しい後悔が、胸を襲ってきた。

(何をしているんだ、僕は)

 大学のオープンキャンパスのために来た初日に、海斗に迷惑をかけてしまった。

 ヒートになって、海斗に助けてもらって、抱いてもらった。海斗のためにならない。社会人として、年上として、もっとしっかりしなければいけないのに。海斗は高校生で、まだ十八歳なのに。僕が、海斗を守らなければいけない立場なのに。

 将来のある海斗を、巻き込んでしまった。
 海斗を強く抱き締めている腕を見つめた。

 太くて、逞しい腕。守るように、僕を抱いている。温かくて、心地よくて、このまま抱かれていたいと思ってしまう。海斗の匂いに包まれて、海斗の温もりを感じて、幸せな感覚が広がっていく。

 海斗が目を覚ました。

 腕の力が強くなり、僕をさらに強く抱き締めてくる。首筋にキスを落とされて、身体が震えた。優しいキスが、何度も首筋に落とされていく。

「おはよう、はーちゃん」

 海斗が嬉しそうに笑った。朝日を浴びた海斗の顔は、幸せそうに輝いていた。昨夜のことを、全く後悔していない表情だ。むしろ、満足しているような笑顔だった。僕を抱けたことが、嬉しくて仕方ないという顔をしている。

 僕は海斗の腕から抜け出して、身体を起こした。

 シーツを身体に巻きつけて、裸を隠す。海斗が不思議そうな顔で、僕を見つめていた。笑顔が消えて、不安そうな表情になっていく。

「海ちゃん……昨日のことはなかったことにしよう。これは――事故、みたいなものだから。お互いに忘れよう」
 僕は努めて冷静に言った。海斗の表情が、一瞬で凍りついた。笑顔が消えて、信じられないという顔になる。

「は?」

 海斗の声が、低く沈んだ。不機嫌な色が、瞳に浮かんでいく。眉が寄せられて、ムッとした表情になった。深い黒瞳が、僕を睨みつけてくる。

「なんで忘れる前提で話すんだよ」

 海斗がベッドから起き上がった。裸のまま立ち上がって、部屋を出ていく。ドアが勢いよく閉められて、大きな音が響いた。壁が震えるほどの音に、僕の身体も震えた。

(だって海ちゃんはまだ高校生なんだよ)
 一人残された部屋で、僕はシーツを握りしめた。

 怒らせてしまった。

(これでいいんだ。これが最善の選択だから)

 自分に言い聞かせた。海斗との関係を、元に戻さなければならない。幼馴染として、兄のような存在として、それ以上の関係になってはいけない。昨夜は、ヒートのせいだった。僕が悪かった。海斗に迷惑をかけてしまった。

 胸が痛んだ。
 海斗は優しいから、ヒートで苦しんでいる僕を助けてくれた。ただそれだけだ

(忘れよう)

 昨夜のことを忘れて、海斗との距離を保たなければならない。
 僕みたいな、取り柄のないオメガではなく――もっと素敵な人がいる。

 僕の感情とは裏腹に海斗の熱が、まだ身体の奥に残っていた。海斗の匂いが、まだ鼻腔に残ってまるで香水みたいに僕の身体に纏っていた。

(海ちゃん……好き)
 シーツを握りしめる手が、震えていた。
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