年下幼馴染アルファの執着〜なかったことにはさせない〜

ひなた翠

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第四章:不機嫌の原因

気まずい朝

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 シャワーを浴びて、着替えを済ませた。

 鏡に映る自分の身体を見つめると、身体中にに赤い痕がいくつも残っていた。キスマークと、軽く歯を立てられた跡。シャツの襟で隠れる位置だったが、見るたびに昨夜のことを思い出してしまう。

 リビングに戻ると、海斗が既に着替えを済ませていた。

 Tシャツとジーンズという普段着でソファにに座り、リュックの中を確認していた。オープンキャンパスの準備をしているのだろう。準備が終わると海斗は僕の方を見ずに、スマートフォンの画面を見始める。

「朝ごはん、作るね」

 僕が声をかけると、海斗は小さく頷くだけで言葉を返してくれなかった。視線も合わせてくれない。冷たい態度に、胸が痛んだ。

 キッチンに立って、朝食の準備を始めた。

 冷蔵庫から卵とベーコンを取り出して、フライパンを火にかける。目玉焼きを作り、ベーコンを焼き、トーストを焼く。僕とは視線を合わせくれないのに、朝食を作っているときは海斗の視線を感じる。顔をあげると、スッと顔を背けられてしまう。

 料理の続きを始めると、海斗の冷たい視線が突き刺さった。

(言いたいことがあるなら、言ってほしい)

 テーブルに朝食を並べた。

 目玉焼きとベーコン、トーストとサラダ。いつもより品数が少ない。昨夜のことで、頭が上手く働かなかった。海斗が席に座り、僕も向かいに座る。

「いただきます」

 二人で手を合わせた。昨夜までは、自然に会話が弾んでいたのに、今朝は沈黙が支配していた。フォークがお皿に触れる音だけが、部屋に響いている。

 海斗が目玉焼きを口に運んだ。
 咀嚼する音が聞こえる。海斗は何も言わず、黙々と食べていた。

「海ちゃん」

 声をかけた。海斗が顔を上げて、僕を見る。深い黒瞳が、僕を捉えている。冷たい視線ではないが、いつもの優しさもない。ただ、じっと僕を見つめてきた。

「昨夜のこと……」
 言いかけて、言葉が詰まった。海斗の表情を窺いながら、言葉を探す。

「今は、話したくない」
 海斗が静かに怒りを抑えながら低い声で返事をした。明らかに苛立っている。海斗は視線を逸らして、また食事に戻った。

(――海ちゃん、不機嫌だ)

 僕が怒らせたのはわかっている。
 沈黙が、また部屋を支配する。僕もトーストを口に運んだが、味がしなかった。

 海斗は黙々と食事を続けていた。
 苛々しつつも、海斗は全てを平らげていた。僕は全然、食べられずにトーストを二口で食べただけで、手が止まっていた。

「ごちそうさま」

 海斗が手を合わせると、立ち上がって、食器をシンクに運ぶ。僕も慌てて立ち上がろうとしたが、海斗が先に食器を洗い始めた。水が流れる音が、静かなキッチンに響く。

「僕が洗うよ」
 声をかけたが、海斗は首を横に振った。

「いい。すぐ終わるから」
 冷たい返事だった。僕は何も言えずに、椅子に座った。

 海斗が食器を洗い終えて、リビングに戻った。

 リュックを背負って、玄関に向かう。僕も後を追って、玄関まで見送りに行った。海斗が靴を履いて、ドアノブに手をかける。

「行ってきます」
 海斗が小さく言った。僕の方を見ずに、ドアを開ける。

「行ってらっしゃい。気をつけてね」
 僕が声をかけると、海斗は小さく頷いた。

 ドアがゆっくりと閉まり、室内は静寂に包まれた。微かに残る海斗の匂いが、僕の胸をチクチクと刺激してくる。

(朝起きて、僕はなんて言えばよかったんだ?)
 
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