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第8話:銭ゲバ社長のDIY魔改造
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第8話:銭ゲバ社長のDIY魔改造
「広っ! 何ですかここ、運動会でもするんですか!?」
がらんとした雑居ビルの二階。引っ越し初日、足を踏み入れた善さんが、反響する自分の声に驚いている。 二十坪。畳で言えば四十畳だ。六畳一間のボロアパートに比べれば、確かに宮殿みたいなもんだね。
「ケッ、カビ臭さは消えたけど、殺風景なとこ。ここにベッド並べんの?」
リオが部屋の隅にドカッと座り込み、コンビニおにぎりを頬張っている。
「そうさ。ここが、私たちの新たな『金脈』になる場所だよ」
私は腕組みをして、何もない空間を見渡した。 壁紙は薄汚れて黄ばんでいるし、床のPタイルは所々剥がれている。天井の蛍光灯はチカチカと点滅していて、まるでホラー映画のセットだ。
「さて、善さん。内装業者に見積もりを取ったら、いくらだって?」
「あ、はい。最低でも三百万はかかると……」
「三百万!? 馬鹿言っちゃいけないよ! そんな金があったら、老後のための高配当株を買うわ!」
私は即座に却下した。異世界じゃ、家なんて土魔法で一発だったのに、この国は何かにつけて金がかかる。
「じゃ、じゃあどうするんですか? このままじゃ、さすがに客商売は……」
「決まってるだろう。自分たちでやるのさ。DIYってやつだよ」
私はニヤリと笑い、両手をパンと打ち鳴らした。
「さあ、労働の時間だよ。善さん、リオ。あんたたちの潜在能力を、フル活用させてもらうからね!」
***
数時間後。 雑居ビルの二階は、戦場と化していた。
「うおおおおっ! 壁紙が! 壁紙が唸りを上げて貼られていくぅぅぅ!」
善さんが、人間離れした速度で両手を動かしている。 私の【超・身体強化(スーパー・ブースト)】と【作業効率化(ワーク・ヘイスト)】の二重がけを受けた彼は、今や熟練の職人十人分の働きを見せていた。 剥がれかけた古い壁紙を一瞬で剥ぎ取り、ホームセンターで買ってきた激安の白い壁紙を、空気を一切入れずにピシッと貼り付けていく。その目にも止まらぬ職人芸は、見ていて気持ちが良いほどだ。
「……なんで私がこんな肉体労働しなきゃなんないのよ」
一方、リオは文句を垂れながらも、巨大なパーテーション(中古オフィス用品店で格安ゲット)を軽々と持ち上げ、指定の位置に設置していく。彼女には【筋力増強(マッスル・アップ)】がかかっている。百キロ近い荷物も、発泡スチロールのように扱えるはずだ。
「文句言うんじゃないよ。あんたの借金返済のためだろうが。ほら、次は施術用ベッドの搬入だ!」
私は部屋の中央に陣取り、パイプ椅子に座ってお茶を飲みながら現場監督に徹していた。 自分には魔法がかけられないからね。これは適材適所ってやつさ。
「ひいぃぃっ! 社長、の、糊がなくなりました!」
「下の百均で買ってきな! ダッシュで!」
「了解ですぅぅぅ!」
残像を残して走り去る善さん。 これぞ魔法とブラック労働の融合。人件費ゼロの究極のコストカットだ。
日が暮れる頃には、廃墟のようだった部屋は劇的な変貌を遂げていた。
壁は真っ白になり、床には清潔感のあるクッションフロアが敷き詰められた。 部屋の中央には、真新しい施術用ベッドが二台並び(一台は予備)、入口付近にはリオが座る受付カウンターと、客が待つためのソファセット(リサイクルショップで五千円)が置かれている。 施術スペースと待合室は、リオが運んだパーテーションで区切られ、プライバシーも守られている。
「……すげえ。たった半日で、本当に店になっちまった」
リオが、汗を拭いながら信じられないといった顔で店内を見渡す。
「やればできるもんだね。しめて、材料費二十万円。業者の十分の一以下で済んだよ」
私は満足げに頷いた。浮いた二百八十万円は、私の心の貯金通帳にしっかりと記帳された。
「さあ、仕上げだ。善さん、表に看板を出しておいで」
「は、はい! ただいま!」
善さんは、私が夜なべして段ボールに書いた新しい看板を持って、外へと走っていった。
【祝・リニューアルオープン! 奇跡の整体院『コガネ』】 【場所が変わっても、ゴッドハンドは健在です!】
これで準備は整った。 明日からは、ここが新たな戦場だ。ボロアパート時代よりも快適な環境で、より効率的に、より多くの金を稼ぎ出す。
「……ふふっ。楽しみだねえ」
私は誰もいない真新しい店内で、一人ほくそ笑んだ。 新しい革の匂いと、わずかに残る糊の匂い。それは、これから始まる大儲けを予感させる、甘美な香りだった。
「広っ! 何ですかここ、運動会でもするんですか!?」
がらんとした雑居ビルの二階。引っ越し初日、足を踏み入れた善さんが、反響する自分の声に驚いている。 二十坪。畳で言えば四十畳だ。六畳一間のボロアパートに比べれば、確かに宮殿みたいなもんだね。
「ケッ、カビ臭さは消えたけど、殺風景なとこ。ここにベッド並べんの?」
リオが部屋の隅にドカッと座り込み、コンビニおにぎりを頬張っている。
「そうさ。ここが、私たちの新たな『金脈』になる場所だよ」
私は腕組みをして、何もない空間を見渡した。 壁紙は薄汚れて黄ばんでいるし、床のPタイルは所々剥がれている。天井の蛍光灯はチカチカと点滅していて、まるでホラー映画のセットだ。
「さて、善さん。内装業者に見積もりを取ったら、いくらだって?」
「あ、はい。最低でも三百万はかかると……」
「三百万!? 馬鹿言っちゃいけないよ! そんな金があったら、老後のための高配当株を買うわ!」
私は即座に却下した。異世界じゃ、家なんて土魔法で一発だったのに、この国は何かにつけて金がかかる。
「じゃ、じゃあどうするんですか? このままじゃ、さすがに客商売は……」
「決まってるだろう。自分たちでやるのさ。DIYってやつだよ」
私はニヤリと笑い、両手をパンと打ち鳴らした。
「さあ、労働の時間だよ。善さん、リオ。あんたたちの潜在能力を、フル活用させてもらうからね!」
***
数時間後。 雑居ビルの二階は、戦場と化していた。
「うおおおおっ! 壁紙が! 壁紙が唸りを上げて貼られていくぅぅぅ!」
善さんが、人間離れした速度で両手を動かしている。 私の【超・身体強化(スーパー・ブースト)】と【作業効率化(ワーク・ヘイスト)】の二重がけを受けた彼は、今や熟練の職人十人分の働きを見せていた。 剥がれかけた古い壁紙を一瞬で剥ぎ取り、ホームセンターで買ってきた激安の白い壁紙を、空気を一切入れずにピシッと貼り付けていく。その目にも止まらぬ職人芸は、見ていて気持ちが良いほどだ。
「……なんで私がこんな肉体労働しなきゃなんないのよ」
一方、リオは文句を垂れながらも、巨大なパーテーション(中古オフィス用品店で格安ゲット)を軽々と持ち上げ、指定の位置に設置していく。彼女には【筋力増強(マッスル・アップ)】がかかっている。百キロ近い荷物も、発泡スチロールのように扱えるはずだ。
「文句言うんじゃないよ。あんたの借金返済のためだろうが。ほら、次は施術用ベッドの搬入だ!」
私は部屋の中央に陣取り、パイプ椅子に座ってお茶を飲みながら現場監督に徹していた。 自分には魔法がかけられないからね。これは適材適所ってやつさ。
「ひいぃぃっ! 社長、の、糊がなくなりました!」
「下の百均で買ってきな! ダッシュで!」
「了解ですぅぅぅ!」
残像を残して走り去る善さん。 これぞ魔法とブラック労働の融合。人件費ゼロの究極のコストカットだ。
日が暮れる頃には、廃墟のようだった部屋は劇的な変貌を遂げていた。
壁は真っ白になり、床には清潔感のあるクッションフロアが敷き詰められた。 部屋の中央には、真新しい施術用ベッドが二台並び(一台は予備)、入口付近にはリオが座る受付カウンターと、客が待つためのソファセット(リサイクルショップで五千円)が置かれている。 施術スペースと待合室は、リオが運んだパーテーションで区切られ、プライバシーも守られている。
「……すげえ。たった半日で、本当に店になっちまった」
リオが、汗を拭いながら信じられないといった顔で店内を見渡す。
「やればできるもんだね。しめて、材料費二十万円。業者の十分の一以下で済んだよ」
私は満足げに頷いた。浮いた二百八十万円は、私の心の貯金通帳にしっかりと記帳された。
「さあ、仕上げだ。善さん、表に看板を出しておいで」
「は、はい! ただいま!」
善さんは、私が夜なべして段ボールに書いた新しい看板を持って、外へと走っていった。
【祝・リニューアルオープン! 奇跡の整体院『コガネ』】 【場所が変わっても、ゴッドハンドは健在です!】
これで準備は整った。 明日からは、ここが新たな戦場だ。ボロアパート時代よりも快適な環境で、より効率的に、より多くの金を稼ぎ出す。
「……ふふっ。楽しみだねえ」
私は誰もいない真新しい店内で、一人ほくそ笑んだ。 新しい革の匂いと、わずかに残る糊の匂い。それは、これから始まる大儲けを予感させる、甘美な香りだった。
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