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15 過去の清算
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ずっと、怖かった。
結婚が決まってから、ブライアンは頻繁に私に愛情表現をしてくれていた。
でもそれは、傷付いた私を慰める為の優しい嘘なんじゃないかって・・・。
彼を信じたい気持ちと信じきれない気持ちで、常に揺れていた。
彼と親密になる程に、その揺れは大きくなっていった。
また、信じた人に裏切られてしまうんじゃないかって、怯えてたのだ。
「好きです、アイリス。
お願いだから、どこへも行かないで・・・・・・」
ああ、彼が望んでいるのは、リネット様じゃなかった。
ちゃんと私の事を愛してくれていたんだ。
辛そうに眉根を寄せて懇願する彼を見て、やっと心からそう思えた。
だけど、ブライアンの方は、まだ不安そうな顔をしていて・・・・・・。
「・・・俺、見てしまったんです。
兄上との思い出の品を、アイリスが大事に持っているのを」
思い出の品?
はて?何のことやら。
「手紙と指輪が・・・」
ああ、成る程。
そう言えば、あの時、封筒を持って執務室に戻って来たブライアンは、急に私を抱き締めたりして、なんだか様子がおかしかった。
「ちょっと待ってて」
そう言って席を立った私は、自室へと向かった。
机の引き出しの中から、それを取り出す。
(まさか、こんなにブライアンを苦しめる事になるなんて・・・・・・。
こんな事なら、サッサと捨ててしまえば良かった)
「貴方が見たのは、コレね?」
自室から戻って来た私は、ブライアンの隣に寄り添う様に座った。
テーブルの上に置いたのは、一通の手紙と小さな指輪のケース。
「そうです」
「もし良かったら、コレは、貴方が持っておいてくれない?」
私は指輪のケースを、スッと彼の前へと差し出した。
「その指輪、チャールズが騎士になった時の初めてのお給料で買ってくれた物なの」
「・・・・・・」
唇を噛んで俯くブライアン。
いけない、また誤解させてしまった。
「待って、違うの。
貴方が考えている様な意味じゃなくて・・・。
いつか、チャールズがお金に困った時に、伯爵家に助けを求めるかもしれないでしょう?
でも、お義父様達はとても怒っているから、彼をお許しにならないかもしれない。
だから、その時は、この指輪だけでも返してあげようと思って。
コレは、彼が自分で稼いだお金で買った物だから。
結構良い石がついてるし、売れば平民としてなら数ヶ月くらいは生きられるんじゃないかと思うの。
私が持っていると貴方に誤解をさせてしまうのなら、貴方が持っておいて、その時が来たらチャールズに渡してあげて」
チャールズから貰った他のプレゼントは、全て処分した。
おそらく伯爵家のお金で買った物ばかりだろうと思ったから。
その殆どは換金して、伯爵領内の孤児院や修道院に寄付をした。
だけど、婚約指輪だけは、彼が自分のお給料で買ってくれた物だと知っていたから、どうしても勝手に処分する事が出来なかったのだ。
「兄上の思い出に浸る為に取っておいたのかと・・・」
「そんな訳無いじゃない。
だって、私の婚約者だった彼はもう死んだのよ」
そう思ってくれと、彼自身が望んだのだから。
自分勝手に死んだ人間を、いつまでも想い続けてあげる程お人好しでは無いのだ。
「手紙は・・・ラブレターでは?」
「いいえ。読んでみる?」
「良いんですか?」
私は封筒から中身を出して、ブライアンに手渡した。
その内容に目を通したブライアンの顔が、見る見る内に怒りに染まって行く。
「こんな酷い手紙、なぜ取ってあるのですか?
直ぐに暖炉に焚べれば良かったのに!」
その手紙は、チャールズが駆け落ちした際に残した置き手紙。
「自分への戒めにしようと思って。
客観的に見た自分の価値は、それ程高く無いんだって、忘れない様に。
親しい人に裏切られる事もあるんだって、無条件に信じちゃいけないんだって、忘れない様に」
「そんな・・・」
眉間に深く皺を寄せたブライアンが、悲し気に呟く。
「・・・だけど、あんまり役には立たなかったみたいだわ」
彼の手から便箋を抜き取ってビリビリに破き、ゴミ箱に捨てた。
「だって、私、貴方を無条件に信じたいって思ってしまったの」
ブライアンの瞳が、大きく見開かれる。
その瞳には、私だけが映っていた。
「アイリス・・・」
「信じても、良い・・・、よね?」
「ええ、勿論です!
愛しています、アイリス」
「私もよ」
いつもの様にブライアンにギュッと抱きしめられると、大きな安心感に包まれる。
いつの間にか、ここが、彼の腕の中が、私の居場所になっていたのだ。
少し高い体温と彼の香りを感じながら、私はそっと目を閉じた。
結婚が決まってから、ブライアンは頻繁に私に愛情表現をしてくれていた。
でもそれは、傷付いた私を慰める為の優しい嘘なんじゃないかって・・・。
彼を信じたい気持ちと信じきれない気持ちで、常に揺れていた。
彼と親密になる程に、その揺れは大きくなっていった。
また、信じた人に裏切られてしまうんじゃないかって、怯えてたのだ。
「好きです、アイリス。
お願いだから、どこへも行かないで・・・・・・」
ああ、彼が望んでいるのは、リネット様じゃなかった。
ちゃんと私の事を愛してくれていたんだ。
辛そうに眉根を寄せて懇願する彼を見て、やっと心からそう思えた。
だけど、ブライアンの方は、まだ不安そうな顔をしていて・・・・・・。
「・・・俺、見てしまったんです。
兄上との思い出の品を、アイリスが大事に持っているのを」
思い出の品?
はて?何のことやら。
「手紙と指輪が・・・」
ああ、成る程。
そう言えば、あの時、封筒を持って執務室に戻って来たブライアンは、急に私を抱き締めたりして、なんだか様子がおかしかった。
「ちょっと待ってて」
そう言って席を立った私は、自室へと向かった。
机の引き出しの中から、それを取り出す。
(まさか、こんなにブライアンを苦しめる事になるなんて・・・・・・。
こんな事なら、サッサと捨ててしまえば良かった)
「貴方が見たのは、コレね?」
自室から戻って来た私は、ブライアンの隣に寄り添う様に座った。
テーブルの上に置いたのは、一通の手紙と小さな指輪のケース。
「そうです」
「もし良かったら、コレは、貴方が持っておいてくれない?」
私は指輪のケースを、スッと彼の前へと差し出した。
「その指輪、チャールズが騎士になった時の初めてのお給料で買ってくれた物なの」
「・・・・・・」
唇を噛んで俯くブライアン。
いけない、また誤解させてしまった。
「待って、違うの。
貴方が考えている様な意味じゃなくて・・・。
いつか、チャールズがお金に困った時に、伯爵家に助けを求めるかもしれないでしょう?
でも、お義父様達はとても怒っているから、彼をお許しにならないかもしれない。
だから、その時は、この指輪だけでも返してあげようと思って。
コレは、彼が自分で稼いだお金で買った物だから。
結構良い石がついてるし、売れば平民としてなら数ヶ月くらいは生きられるんじゃないかと思うの。
私が持っていると貴方に誤解をさせてしまうのなら、貴方が持っておいて、その時が来たらチャールズに渡してあげて」
チャールズから貰った他のプレゼントは、全て処分した。
おそらく伯爵家のお金で買った物ばかりだろうと思ったから。
その殆どは換金して、伯爵領内の孤児院や修道院に寄付をした。
だけど、婚約指輪だけは、彼が自分のお給料で買ってくれた物だと知っていたから、どうしても勝手に処分する事が出来なかったのだ。
「兄上の思い出に浸る為に取っておいたのかと・・・」
「そんな訳無いじゃない。
だって、私の婚約者だった彼はもう死んだのよ」
そう思ってくれと、彼自身が望んだのだから。
自分勝手に死んだ人間を、いつまでも想い続けてあげる程お人好しでは無いのだ。
「手紙は・・・ラブレターでは?」
「いいえ。読んでみる?」
「良いんですか?」
私は封筒から中身を出して、ブライアンに手渡した。
その内容に目を通したブライアンの顔が、見る見る内に怒りに染まって行く。
「こんな酷い手紙、なぜ取ってあるのですか?
直ぐに暖炉に焚べれば良かったのに!」
その手紙は、チャールズが駆け落ちした際に残した置き手紙。
「自分への戒めにしようと思って。
客観的に見た自分の価値は、それ程高く無いんだって、忘れない様に。
親しい人に裏切られる事もあるんだって、無条件に信じちゃいけないんだって、忘れない様に」
「そんな・・・」
眉間に深く皺を寄せたブライアンが、悲し気に呟く。
「・・・だけど、あんまり役には立たなかったみたいだわ」
彼の手から便箋を抜き取ってビリビリに破き、ゴミ箱に捨てた。
「だって、私、貴方を無条件に信じたいって思ってしまったの」
ブライアンの瞳が、大きく見開かれる。
その瞳には、私だけが映っていた。
「アイリス・・・」
「信じても、良い・・・、よね?」
「ええ、勿論です!
愛しています、アイリス」
「私もよ」
いつもの様にブライアンにギュッと抱きしめられると、大きな安心感に包まれる。
いつの間にか、ここが、彼の腕の中が、私の居場所になっていたのだ。
少し高い体温と彼の香りを感じながら、私はそっと目を閉じた。
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