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第十二話 直球な想い
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屋敷で働いていた男性に、港町にある大きな図書館の場所を教えてもらった私は、再び港町へとやってきた。
「シエル様、足元に気を付けてお降りください」
「うん、ありがとう……って、ここまで全然疑問に思わなかったけど、どうしてラルフも来てくれたの? クリスティア様とお話はいいの?」
「私はあなたの執事ですので、お供するのは当然です。お話は終わったので、ご安心を」
そっか、終わったのなら安心……なのかな? 恋心を学ぶための本を手に入れるために、その相手と一緒に図書館に行くって、なんだか少し変な気がする。
でも……まあいっか! ラルフと一緒に行動をするのは、恋心とか関係なしに凄く嬉しいし!
「わぁ、この町の図書館って大きい……そういえば、ラルフはもうマーチャント家を出てバーランド家に戻ったんだから、私の執事じゃないんじゃないかな?」
図書館に入る前に、私は疑問に思ったことをラルフに投げかけると、ラルフはいつも通りの調子で話し始めた。
「仰る通り、私はもうマーチャント家には仕えておりませんし、家にも帰りました。ですが、私はあなたの執事をやめたつもりはありません。そして可能なら執事としてだけではなく、あなたの未来の夫として、一生尽くすつもりです」
「そ、そうなんだ……」
お、夫って……確かにそうなる未来は来るかもしれないけど……なんか、急に直球な言葉を投げかけてくるようになったと感じるのは、私の気のせい?
「それに、どんな用とはいえ、あなたと二人きりで行動が出来るのはデートですからね。これを逃す手はありません」
「やっぱり直球になってる!?」
「直球? はて、球は投げておりませんが……」
「そういう意味じゃないよー!」
やっぱり直球になってる! そういえば、しっかり自分の気持ちを伝えるって言ってだけど……こういう感じだったんだね! 凄すぎて言葉にならない!
「で、でもやっぱり普通に考えたら変だよ。侯爵家の人は、家を追い出された人に仕えたり、告白をしたり、デートをしたりしないよ。明らかに身分差がありすぎて、おかしいって思われるよ」
「世間ではそうかもしれませんが、自らをそれに落とし込む必要は無いかと存じます」
「う、うぅ~……」
そう言われてしまうと、何も言い返せない。だって、誰かに迷惑をかけてないし、自由にしていいことだと思うから。
これって、どうすればいいんだろう。少なくとも、執事は辞めてくれれば、普通の関係に近づけるのに。
そうだ、大嫌いって言って怒らせたら、執事なんてやめてやる! って思ってもらえないかな? 全く心に思っていないことだけど、バカな私には、こんな子供みたいな方法しか思いつかない。
「ら、ラルフ!」
「はい」
「だ、だだだ……だい……だい……!!」
「シエル様?」
「うぅぅぅ……!!」
い、言えない! 私のことをずっと想ってくれて、ずっと近くで私の味方をしてくれた人に、大嫌いなんて口が裂けても言えないよ!
「だだだ……大好き!」
「…………」
「あっ……」
咄嗟に大嫌いとは真逆の言葉が出た私は、あまりにも恥ずかしすぎて、体中を真っ赤にさせた。
た、確かにラルフのことは大好きだけど! 何も間違ってないけど! 心の底からそう思っているけどぉぉぉぉ!!
「私も大好きですよ、シエル様」
「ち、ちがっ……いや、なにも違くはないんだけど!」
「あらあら、こんな所で告白なんて、大胆ねぇ」
「ひゅーひゅー! お幸せになー!」
「えっ!?」
なんて言い訳をしようか頭を悩ませていると、たまたま通りがかった人達に見られ、なぜか祝福されてしまった。
な、なんでこんなことに!? も、もう恥ずかしすぎてお嫁に行けないよー!!
****
「な、なんか凄く疲れた……」
「お疲れ様です、シエル様」
「……う、うん……ラルフ……付き合ってくれてありがとう……」
あの後、バーランド家に用意された私の部屋に戻ってきた私は、ベッドにうつ伏せで倒れていた。
人前であんな大胆なことを言っちゃうなんて……今思い出しても、恥ずかしすぎて死んじゃいたいくらいだ。
よくこんな状態で、本を借りられたなぁ……そこだけは自分を褒めてもいいかも……。
「お気を確かに、シエル様。私は嬉しかったですよ。またお聞かせいただきたいくらいです」
「ま、また言ったら、今度こそ恥ずかしさで死んじゃうって!」
「ご安心ください。もしシエル様が旅立たれたら、私もすぐに後を追いますので」
「愛が重いよ!? ラルフにはもっと長生きしてもらわないと!」
なんだかんだで、ラルフの言葉に言い返すくらいの元気は残っているみたい。
「とりあえず、借りてきた本でも読んで、気晴らししようかな……」
「かしこまりました。すぐにお出しします」
ラルフは今日私が借りてきた本を、テーブルの上に置いてくれた。大小様々な本達を、合計で二十冊借りている。
普通の人なら、数が多すぎると思うかもしれないけど、これでも一応読書には慣れてるから、これくらいの量ならそんなに時間はかからずに読みきれる。
「これは有名な男女の冒険譚……これは恋愛物語……これはとある夫婦の実話を本にしたもの……先程は気づきませんでしたが、全部恋愛関連でございますか?」
「うん。私は恋心がよくわからないから、こういうのを読んで、恋心がどういうものかを理解しようと思って。そうすれば、ラルフの恋心とか、ラルフに対する私の気持ちの正体がわかって、誠実に返事が出来ると思ったんだ」
ラルフに自分の考えを伝えてから、早速一冊手に取って読み始めてみる――が、私は即座にその本を勢いよく閉じた。
今読もうとしていたのは、とある恋愛小説だったんだけど……冒頭から、その……濡れ場から始まってて……庶民の女の子が、王子様に襲われるって感じで……それにビックリして閉じちゃったの。
「な、なんで今に限ってこんな場面から始まるの!? 恥ずかしすぎて意識が飛びそう……あれ、ラルフ?」
また恥ずかしい所を見られてしまったと思い、ラルフに弁明をしようとしたら、なぜかラルフは私に背を向け、右手で頭を抱えていた。
「どうかしたの? もしかして、調子が悪い?」
「いえ……私のために、こんなに勉強をしようとしてくれたあなたの優しさと愛情に、心を打たれていただけです」
「さ、さすがにそれは大げさな気もするけど?」
「大げさなものですか。ずっと想っていた相手が自分のために動いてくれる。こんなに幸せなことはありません。やはり、あなたに心を奪われたのは、必然だったのです」
私の元に戻ってくると、そのまま私の手を取るラルフ。その目はとてもまっすぐで、輝いていた。
ら、ラルフの目を見てるだけでドキドキしちゃう。見慣れたもののはずなのに、気持ち一つでこんなにも変わっちゃうんだね。
「あ、その……せ、せっかく借りてきたんだから、ゆっくり読まないとなー! だ、だから一人にしてほしいなー! なんて……」
「かしこまりました。では食事の時間になったらお呼びいたしますので、ごゆっくり」
恥ずかしさに耐えかねて誤魔化したら、ラルフは素直に部屋を出て行った。
……悪いことをしちゃったかな……はぁ、もっと私にラルフの気持ちを全部受け止められるくらいの、恋愛の経験があれば……。
今更そんなことを言っても、仕方がないんだけどね。さあ、片っ端から読んで恋心を少しでも理解しなきゃ! 根性で頑張るぞー!
「シエル様、足元に気を付けてお降りください」
「うん、ありがとう……って、ここまで全然疑問に思わなかったけど、どうしてラルフも来てくれたの? クリスティア様とお話はいいの?」
「私はあなたの執事ですので、お供するのは当然です。お話は終わったので、ご安心を」
そっか、終わったのなら安心……なのかな? 恋心を学ぶための本を手に入れるために、その相手と一緒に図書館に行くって、なんだか少し変な気がする。
でも……まあいっか! ラルフと一緒に行動をするのは、恋心とか関係なしに凄く嬉しいし!
「わぁ、この町の図書館って大きい……そういえば、ラルフはもうマーチャント家を出てバーランド家に戻ったんだから、私の執事じゃないんじゃないかな?」
図書館に入る前に、私は疑問に思ったことをラルフに投げかけると、ラルフはいつも通りの調子で話し始めた。
「仰る通り、私はもうマーチャント家には仕えておりませんし、家にも帰りました。ですが、私はあなたの執事をやめたつもりはありません。そして可能なら執事としてだけではなく、あなたの未来の夫として、一生尽くすつもりです」
「そ、そうなんだ……」
お、夫って……確かにそうなる未来は来るかもしれないけど……なんか、急に直球な言葉を投げかけてくるようになったと感じるのは、私の気のせい?
「それに、どんな用とはいえ、あなたと二人きりで行動が出来るのはデートですからね。これを逃す手はありません」
「やっぱり直球になってる!?」
「直球? はて、球は投げておりませんが……」
「そういう意味じゃないよー!」
やっぱり直球になってる! そういえば、しっかり自分の気持ちを伝えるって言ってだけど……こういう感じだったんだね! 凄すぎて言葉にならない!
「で、でもやっぱり普通に考えたら変だよ。侯爵家の人は、家を追い出された人に仕えたり、告白をしたり、デートをしたりしないよ。明らかに身分差がありすぎて、おかしいって思われるよ」
「世間ではそうかもしれませんが、自らをそれに落とし込む必要は無いかと存じます」
「う、うぅ~……」
そう言われてしまうと、何も言い返せない。だって、誰かに迷惑をかけてないし、自由にしていいことだと思うから。
これって、どうすればいいんだろう。少なくとも、執事は辞めてくれれば、普通の関係に近づけるのに。
そうだ、大嫌いって言って怒らせたら、執事なんてやめてやる! って思ってもらえないかな? 全く心に思っていないことだけど、バカな私には、こんな子供みたいな方法しか思いつかない。
「ら、ラルフ!」
「はい」
「だ、だだだ……だい……だい……!!」
「シエル様?」
「うぅぅぅ……!!」
い、言えない! 私のことをずっと想ってくれて、ずっと近くで私の味方をしてくれた人に、大嫌いなんて口が裂けても言えないよ!
「だだだ……大好き!」
「…………」
「あっ……」
咄嗟に大嫌いとは真逆の言葉が出た私は、あまりにも恥ずかしすぎて、体中を真っ赤にさせた。
た、確かにラルフのことは大好きだけど! 何も間違ってないけど! 心の底からそう思っているけどぉぉぉぉ!!
「私も大好きですよ、シエル様」
「ち、ちがっ……いや、なにも違くはないんだけど!」
「あらあら、こんな所で告白なんて、大胆ねぇ」
「ひゅーひゅー! お幸せになー!」
「えっ!?」
なんて言い訳をしようか頭を悩ませていると、たまたま通りがかった人達に見られ、なぜか祝福されてしまった。
な、なんでこんなことに!? も、もう恥ずかしすぎてお嫁に行けないよー!!
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「な、なんか凄く疲れた……」
「お疲れ様です、シエル様」
「……う、うん……ラルフ……付き合ってくれてありがとう……」
あの後、バーランド家に用意された私の部屋に戻ってきた私は、ベッドにうつ伏せで倒れていた。
人前であんな大胆なことを言っちゃうなんて……今思い出しても、恥ずかしすぎて死んじゃいたいくらいだ。
よくこんな状態で、本を借りられたなぁ……そこだけは自分を褒めてもいいかも……。
「お気を確かに、シエル様。私は嬉しかったですよ。またお聞かせいただきたいくらいです」
「ま、また言ったら、今度こそ恥ずかしさで死んじゃうって!」
「ご安心ください。もしシエル様が旅立たれたら、私もすぐに後を追いますので」
「愛が重いよ!? ラルフにはもっと長生きしてもらわないと!」
なんだかんだで、ラルフの言葉に言い返すくらいの元気は残っているみたい。
「とりあえず、借りてきた本でも読んで、気晴らししようかな……」
「かしこまりました。すぐにお出しします」
ラルフは今日私が借りてきた本を、テーブルの上に置いてくれた。大小様々な本達を、合計で二十冊借りている。
普通の人なら、数が多すぎると思うかもしれないけど、これでも一応読書には慣れてるから、これくらいの量ならそんなに時間はかからずに読みきれる。
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「うん。私は恋心がよくわからないから、こういうのを読んで、恋心がどういうものかを理解しようと思って。そうすれば、ラルフの恋心とか、ラルフに対する私の気持ちの正体がわかって、誠実に返事が出来ると思ったんだ」
ラルフに自分の考えを伝えてから、早速一冊手に取って読み始めてみる――が、私は即座にその本を勢いよく閉じた。
今読もうとしていたのは、とある恋愛小説だったんだけど……冒頭から、その……濡れ場から始まってて……庶民の女の子が、王子様に襲われるって感じで……それにビックリして閉じちゃったの。
「な、なんで今に限ってこんな場面から始まるの!? 恥ずかしすぎて意識が飛びそう……あれ、ラルフ?」
また恥ずかしい所を見られてしまったと思い、ラルフに弁明をしようとしたら、なぜかラルフは私に背を向け、右手で頭を抱えていた。
「どうかしたの? もしかして、調子が悪い?」
「いえ……私のために、こんなに勉強をしようとしてくれたあなたの優しさと愛情に、心を打たれていただけです」
「さ、さすがにそれは大げさな気もするけど?」
「大げさなものですか。ずっと想っていた相手が自分のために動いてくれる。こんなに幸せなことはありません。やはり、あなたに心を奪われたのは、必然だったのです」
私の元に戻ってくると、そのまま私の手を取るラルフ。その目はとてもまっすぐで、輝いていた。
ら、ラルフの目を見てるだけでドキドキしちゃう。見慣れたもののはずなのに、気持ち一つでこんなにも変わっちゃうんだね。
「あ、その……せ、せっかく借りてきたんだから、ゆっくり読まないとなー! だ、だから一人にしてほしいなー! なんて……」
「かしこまりました。では食事の時間になったらお呼びいたしますので、ごゆっくり」
恥ずかしさに耐えかねて誤魔化したら、ラルフは素直に部屋を出て行った。
……悪いことをしちゃったかな……はぁ、もっと私にラルフの気持ちを全部受け止められるくらいの、恋愛の経験があれば……。
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