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第十一話 恋心とは……?
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再び気絶してしまった私が目を覚ます頃には、時刻はお昼ぐらいになっていた。その間、ラルフはずっと私の近くにいて、看病をしてくれていたようだ。
「シエル様、先程は失礼いたしました」
「う、ううん……大丈夫だよ」
大丈夫なんかじゃない。生まれて初めて愛の告白なんてされたから、いまだに思い出すだけで胸がドキドキするし、体が熱くなっていくよ。
「突然のことで驚かれたことでしょう。しかし、私の言葉には嘘偽りはありません。努力家で前向きで明るく、少々世間知らずで放っておけないところも愛らしくて――」
「わー! 待って待って! それ以上言われたら、また倒れちゃうから!」
「それは残念です。まだ十分の一もお伝えしていないのですが……」
今のだけでも恥ずかしいのに、言おうと思ったらあと十倍は言えるの!? ラルフ……恐ろしい人だ……!
「ラルフの気持ちはとても嬉しいよ。私も、ラルフのことは大好きだからね。でもね、私って恋をしたことが無いし、告白をされたことも無いから……こういう時にどうすればいいかわからないし、私のこの好きって気持ちも、ラルフを恋愛対象としてみたものなのか、家族に向けるようなものなのか……それすらもわからない」
もしかしたら、ここでとりあえず気持ちに応えて、その後に恋心というのを知るというのが、正しい選択なのかもしれない。
でも……私はラルフに、そんな不誠実なことは絶対にしたくない。告白に応えるのなら、ちゃんと自分の気持ちを理解し、それが恋だったというのがわかって、はじめてちゃんと返事をしたい。
「ええ、存じております。あなたを守り、想いながら、お傍にずっとおりましたので」
「ラルフ……」
「無理に急いで、お返事をされなくて結構です。私は、これを機にしっかりと自分の気持ちを伝えたかっただけなのです。これからも、あなただけの執事としてお守りさせていただきます」
「っ!?」
ラルフは私の手を取ると、手の甲にそっと唇を重ねた。それをまじまじと見た私は、体中を真っ赤にさせてしまった。
こ、こういうの自体は社交界でよく見かけるし、私も小さい頃に、何度か男性にされたことはあるけど……ラルフの気持ちを知った後だと、自分でも驚くくらいドキドキしてる。
「さて、シエル様もお目覚めになられたことですし……私は少々席を外します」
「どこに行くの?」
「母上と少々お話に。すぐに戻りますので、ごゆっくりされていてください」
「うん、わかった。いってらっしゃい」
部屋を出て行こうとしたラルフは、突然足を止めて私の方へ振り返った。
「お伝えするのを忘れておりました。今までの私は、あなたへの気持ちを隠しておりましたが、今はその必要が無くなったので、しっかり自分の気持ちを伝える所存です。では」
ラルフはそれだけを言い残して、今度こそ部屋を出て行った。残された私は、枕に顔をうずめながら、うにゃぁぁぁぁぁ! と、変な声を出した。
「気持ちを伝えるって何!? もしかして、あんな凄いのがこれからも続くの!? 私、どうすればいいのぉ!?」
生まれて初めての告白。それも、貴族特有の政略結婚とかじゃなく、ちゃん愛のある告白だなんて……そんなの本当にこの世にあったんだって思うくらい、自分には縁のないことだった。
しかも、相手はラルフだよ? ずっと私を守ってくれていた執事だよ? 実はその正体は私が昔助けた子で、侯爵子息様だっていう事実のオマケ付き!? 信じられない!
「うぅ~……」
一人で唸りながら、試しにラルフとお付き合いをした時の妄想をしてみた。
『シエル様、愛しておりますよ』
『やっ……ダメだよラルフ……』
『我々はもう付き合っているのですから、これくらいは良いでしょう? ほら、こちらを向いて……』
『ら、ラルフ……』
「って、私はどんな妄想をしているの!?」
私の妄想、明らかに内容が酷すぎるよ!? 私はこんなにいやらしい子じゃないって!
……えっ、何を妄想したのかって? それは……は、恥ずかしくて言えないよ!!
「はぁ……まさか家を出た後に、告白されて悩む未来が来るなんて、想像もしてなかったよ……お付き合いをしたら、何をするのかな? やっぱりデートとか……手をつないだり、一緒に出掛けたり……」
あれ、それっていつも似たようなことを、ラルフとしているような? 私の行く所にはラルフも来てくれるし、手はエスコートをしてもらう時によく繋ぐし……あれれ?
「じゃ、じゃあもし結婚をした時は……えーっと……」
『シエル様、とても綺麗ですよ……』
『は、恥ずかしいよ……せめて明かりを……』
『明かりが無かったら、あなたの美しい顔が見られないじゃありませんか。さあ、私に身をゆだねて……』
「って! だから私は何を妄想してるのー!?」
さっき以上に恥ずかしい妄想をしてしまった私は、枕に何度も頭を打ち付けて煩悩を追い出した。
わ、私って思った以上にそういうのに興味があるのかな……そんなことは無いと思うだけどなぁ……。
「はぁ……」
結局自分の胸の中にある感情がよくわからないまま、ただ恥ずかしい妄想をして疲れただけだった。
……ううん、疲れている場合じゃない。告白って、凄く勇気がいることなんだよね。ラルフもきっと勇気を出して言ってくれたのに、私が疲れてのんびりしてたら、失礼だよ!
恋愛のことも、恋心のことも全然わからないけど、わからないなりに勉強すればいい。そうすれば、恋心のことだってきっと理解できる!
「……いや、ちょっと待って。勉強をするといっても、どうやって勉強をすればいいのかな?」
どうしよう、行動を起こそうと思った矢先につまずいてしまった。誰かお付き合いをしている人に聞くとか……うん、さすがに難易度が高そうだ。
そうなると、本で勉強するのが一番かな。とはいっても、恋愛の指南書みたいなのはあるかわからないし……恋愛小説でも読んでみようかな? そういった類の物語は、あまり読んだことがないから、丁度良い機会だ。
「港町に行けば、図書館とかあるかな……ラルフは今お話中だから聞くのは申し訳ないし、この屋敷で働いている人に聞いてみよっと!」
とりあえずの行動方針を決めた私は、小走りで部屋を後にした。
待っててねラルフ、必ず恋心について学んで、あなたにちゃんと返事が出来る私になるから!
……そ、その代わりと言っては何だけど……少し気持ちを伝えるのを控えてくれると嬉しいなーなんて……だって、あんなのが続いたら、体が持たないし……。
「シエル様、先程は失礼いたしました」
「う、ううん……大丈夫だよ」
大丈夫なんかじゃない。生まれて初めて愛の告白なんてされたから、いまだに思い出すだけで胸がドキドキするし、体が熱くなっていくよ。
「突然のことで驚かれたことでしょう。しかし、私の言葉には嘘偽りはありません。努力家で前向きで明るく、少々世間知らずで放っておけないところも愛らしくて――」
「わー! 待って待って! それ以上言われたら、また倒れちゃうから!」
「それは残念です。まだ十分の一もお伝えしていないのですが……」
今のだけでも恥ずかしいのに、言おうと思ったらあと十倍は言えるの!? ラルフ……恐ろしい人だ……!
「ラルフの気持ちはとても嬉しいよ。私も、ラルフのことは大好きだからね。でもね、私って恋をしたことが無いし、告白をされたことも無いから……こういう時にどうすればいいかわからないし、私のこの好きって気持ちも、ラルフを恋愛対象としてみたものなのか、家族に向けるようなものなのか……それすらもわからない」
もしかしたら、ここでとりあえず気持ちに応えて、その後に恋心というのを知るというのが、正しい選択なのかもしれない。
でも……私はラルフに、そんな不誠実なことは絶対にしたくない。告白に応えるのなら、ちゃんと自分の気持ちを理解し、それが恋だったというのがわかって、はじめてちゃんと返事をしたい。
「ええ、存じております。あなたを守り、想いながら、お傍にずっとおりましたので」
「ラルフ……」
「無理に急いで、お返事をされなくて結構です。私は、これを機にしっかりと自分の気持ちを伝えたかっただけなのです。これからも、あなただけの執事としてお守りさせていただきます」
「っ!?」
ラルフは私の手を取ると、手の甲にそっと唇を重ねた。それをまじまじと見た私は、体中を真っ赤にさせてしまった。
こ、こういうの自体は社交界でよく見かけるし、私も小さい頃に、何度か男性にされたことはあるけど……ラルフの気持ちを知った後だと、自分でも驚くくらいドキドキしてる。
「さて、シエル様もお目覚めになられたことですし……私は少々席を外します」
「どこに行くの?」
「母上と少々お話に。すぐに戻りますので、ごゆっくりされていてください」
「うん、わかった。いってらっしゃい」
部屋を出て行こうとしたラルフは、突然足を止めて私の方へ振り返った。
「お伝えするのを忘れておりました。今までの私は、あなたへの気持ちを隠しておりましたが、今はその必要が無くなったので、しっかり自分の気持ちを伝える所存です。では」
ラルフはそれだけを言い残して、今度こそ部屋を出て行った。残された私は、枕に顔をうずめながら、うにゃぁぁぁぁぁ! と、変な声を出した。
「気持ちを伝えるって何!? もしかして、あんな凄いのがこれからも続くの!? 私、どうすればいいのぉ!?」
生まれて初めての告白。それも、貴族特有の政略結婚とかじゃなく、ちゃん愛のある告白だなんて……そんなの本当にこの世にあったんだって思うくらい、自分には縁のないことだった。
しかも、相手はラルフだよ? ずっと私を守ってくれていた執事だよ? 実はその正体は私が昔助けた子で、侯爵子息様だっていう事実のオマケ付き!? 信じられない!
「うぅ~……」
一人で唸りながら、試しにラルフとお付き合いをした時の妄想をしてみた。
『シエル様、愛しておりますよ』
『やっ……ダメだよラルフ……』
『我々はもう付き合っているのですから、これくらいは良いでしょう? ほら、こちらを向いて……』
『ら、ラルフ……』
「って、私はどんな妄想をしているの!?」
私の妄想、明らかに内容が酷すぎるよ!? 私はこんなにいやらしい子じゃないって!
……えっ、何を妄想したのかって? それは……は、恥ずかしくて言えないよ!!
「はぁ……まさか家を出た後に、告白されて悩む未来が来るなんて、想像もしてなかったよ……お付き合いをしたら、何をするのかな? やっぱりデートとか……手をつないだり、一緒に出掛けたり……」
あれ、それっていつも似たようなことを、ラルフとしているような? 私の行く所にはラルフも来てくれるし、手はエスコートをしてもらう時によく繋ぐし……あれれ?
「じゃ、じゃあもし結婚をした時は……えーっと……」
『シエル様、とても綺麗ですよ……』
『は、恥ずかしいよ……せめて明かりを……』
『明かりが無かったら、あなたの美しい顔が見られないじゃありませんか。さあ、私に身をゆだねて……』
「って! だから私は何を妄想してるのー!?」
さっき以上に恥ずかしい妄想をしてしまった私は、枕に何度も頭を打ち付けて煩悩を追い出した。
わ、私って思った以上にそういうのに興味があるのかな……そんなことは無いと思うだけどなぁ……。
「はぁ……」
結局自分の胸の中にある感情がよくわからないまま、ただ恥ずかしい妄想をして疲れただけだった。
……ううん、疲れている場合じゃない。告白って、凄く勇気がいることなんだよね。ラルフもきっと勇気を出して言ってくれたのに、私が疲れてのんびりしてたら、失礼だよ!
恋愛のことも、恋心のことも全然わからないけど、わからないなりに勉強すればいい。そうすれば、恋心のことだってきっと理解できる!
「……いや、ちょっと待って。勉強をするといっても、どうやって勉強をすればいいのかな?」
どうしよう、行動を起こそうと思った矢先につまずいてしまった。誰かお付き合いをしている人に聞くとか……うん、さすがに難易度が高そうだ。
そうなると、本で勉強するのが一番かな。とはいっても、恋愛の指南書みたいなのはあるかわからないし……恋愛小説でも読んでみようかな? そういった類の物語は、あまり読んだことがないから、丁度良い機会だ。
「港町に行けば、図書館とかあるかな……ラルフは今お話中だから聞くのは申し訳ないし、この屋敷で働いている人に聞いてみよっと!」
とりあえずの行動方針を決めた私は、小走りで部屋を後にした。
待っててねラルフ、必ず恋心について学んで、あなたにちゃんと返事が出来る私になるから!
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