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第六十四話 あなたの隣で
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「えっ……ど、どうして……?」
思い出の場所にいた人物は、その思い出の登場人物その人だった。彼は二人の護衛をつけながら、本棚の前でボーっと何かを眺めている。
ど、どうしよう……まさかこんなところで会えるだなんて、思っていなかった。緊張と嬉しさと興奮で、心臓が凄いことになっている。体が熱すぎて、汗も止まらなくなっている。
なんて声をかけよう? そもそも、声をかけてもいいのだろうか? エルヴィン様と一緒にいる男性、明らかに護衛だよね?
こんな状態で話しかけて、護衛に排除されたらどうしよう? 声をかけたら、エルヴィン様に迷惑に思われてしまうかも?
色々な不安要素が私の中に渦巻いた結果、私は本棚の陰に隠れながら、ずっと会いたかった想い人を眺めることしか出来なかった。
「…………」
覗き見えるエルヴィン様は、なんだか少し痩せたような気がする。身振りは王族ということをもう隠していないのか、とても豪華な装飾がされた、カッコいい服を着ている。
でも、私としては……制服のエルヴィン様が、一番素敵だと思う。これだけは譲れないよ。
「……待ってても、会えるはずもないか……酷いことを言ったんだ。もう僕と会いたいなんて、思うわけ……」
エルヴィン様は、一冊の本を手に取る。それは、私は取れなくて困っていた本を、エルヴィン様が取ってくれた……思い出の本。
わざわざここに来て思い出の品を見てるってことは……私のことを捨てたんじゃないのよね? やっぱりあの時の言葉は嘘で、私にも、チャンスがあるってことだよね?
「エルヴィン様、そろそろお時間です」
「もう少しだけ居させてくれないかい? 久しぶりの自由時間なんだ……もう少しだけ満喫したい」
「わかりました。では、あと十分で」
「ありがとう。っと……ちょっとお手洗いに行ってくる」
「では、我々もお近くまでお供いたします」
さっきまでいたエルヴィン様達は、お手洗いに向かったみたい。その隙を突いて、さっきの本を出してっと……。
「エルヴィン様……」
話すのは無理でも、私の気持ちをエルヴィン様に届けることは出来るはず。なるべく簡潔に、私の気持ちをエルヴィン様に伝えないと。
「そうだ……!」
私は勉強用のノートの切れ端にメッセージを書いて、先ほど見ていた思い出の本にわかるように紙切れを挟んだ。
その切れ端には、『私はあなたの隣で、あなたとの永遠の愛を語りたい。必ずあなたを取り戻してみせます』と書き、本から見える部分に、アイリーンと書いておいた。
こんな形での告白になってしまったが、別に構わない。だって、必ず取り戻した後、自分の口で改めて告白するから。
……不思議ね。エルヴィン様の姿を見ただけで、さっきまであった負の感情が、どこかに行っちゃったよ。
やっぱりエルヴィン様は、私にとって特別な人なんだと、あらためて痛感させられた。
「あっ、戻ってきた」
戻ってきたエルヴィン様の表情は、やはり優れない。しかし、わざと外に出しておいた本に気づいたみたいで……。
「あれ、この本……どうして……それに何か挟まって……こ、これは……!? すまない、少しだけ席を外してくれ」
「なりません。我々はあなたの護衛なのです」
「別に近くにいるからいいだろう? 少し一人になりたいんだ」
「…………」
渋々といった感じで、護衛は少しエルヴィン様から離れた。その隙に、エルヴィン様は私の紙切れを手に取り……くすんでいた目に光を取り戻すと、辺りをキョロキョロと見渡し始めた。
マズい、このままだと見つかっちゃう。本番までに顔を合わせたらどうなるのかわからない以上、気づかれない方が得策だ。
だから私は、急いでその場から足音を立てずに逃げ出した。
****
■エルヴィン視点■
僕は、ずっとアイリーンのことが忘れられずにいた。一時もアイリーンことが頭から離れず、ミトラに何をされても興味がわかない。それくらい、アイリーンで頭がいっぱいだ。何も手が付けられない。
一応、結婚式が十二月に決まったから、それまでには体調を整えておかないと我が国の面子にかかってくるのだけど……。
まあそんな思いつめた状態の僕は、久しぶりに彼女と出会った図書館の中にある、とある本棚にやってきた。
ここで一生懸命腕を伸ばしていたアイリーンは、今思い出しても可愛くて顔がにやける。
「この紙、アイリーンが……」
アイリーンに取ってあげた、思い出の本には、さっき見た時には無かった紙切れが挟まっていた。
「中身は……『私はあなたの隣で、あなたとの永遠の愛を語りたい。必ずあなたを取り戻してみせます』だって……?」
彼女は、俺を取り戻そうとしているのか? それに、まだ俺のことを大切な人と思ってくれている……。
……わかっていたさ。家の前での告白も、キャンプファイヤーでの告白も。僕はそこまで鈍感じゃない。相手が愛する人なら尚更さ。
でも、僕は逃げられない定めからアイリーンを守るために、彼女を振った。なのに、このメッセージは……ははっ、全く君って人は……。
「……気持ちは嬉しいが、君を巻き込むわけには……」
アイリーンを守るために、僕は彼女を遠ざけた。なのに、彼女はこうしてまた僕の元にやって来て、僕を助けようとしている。
その気持ちに背き続けるのか……? そんなの、そんなの……出来るわけがない!
「ああ、わかったよ……」
賢いアイリーンのことだ。無策で動いているはずが無い。
なら僕は、なるべく怪しい動きをしないようにして、君達がこっちに来れやすい環境を作っておこう! そして、なにがあっても対処できるように、常日頃から警戒を怠らないようにしよう!
「本当にありがとう、アイリーン。全てが無事に片付いたら、その時は……」
思い出の場所にいた人物は、その思い出の登場人物その人だった。彼は二人の護衛をつけながら、本棚の前でボーっと何かを眺めている。
ど、どうしよう……まさかこんなところで会えるだなんて、思っていなかった。緊張と嬉しさと興奮で、心臓が凄いことになっている。体が熱すぎて、汗も止まらなくなっている。
なんて声をかけよう? そもそも、声をかけてもいいのだろうか? エルヴィン様と一緒にいる男性、明らかに護衛だよね?
こんな状態で話しかけて、護衛に排除されたらどうしよう? 声をかけたら、エルヴィン様に迷惑に思われてしまうかも?
色々な不安要素が私の中に渦巻いた結果、私は本棚の陰に隠れながら、ずっと会いたかった想い人を眺めることしか出来なかった。
「…………」
覗き見えるエルヴィン様は、なんだか少し痩せたような気がする。身振りは王族ということをもう隠していないのか、とても豪華な装飾がされた、カッコいい服を着ている。
でも、私としては……制服のエルヴィン様が、一番素敵だと思う。これだけは譲れないよ。
「……待ってても、会えるはずもないか……酷いことを言ったんだ。もう僕と会いたいなんて、思うわけ……」
エルヴィン様は、一冊の本を手に取る。それは、私は取れなくて困っていた本を、エルヴィン様が取ってくれた……思い出の本。
わざわざここに来て思い出の品を見てるってことは……私のことを捨てたんじゃないのよね? やっぱりあの時の言葉は嘘で、私にも、チャンスがあるってことだよね?
「エルヴィン様、そろそろお時間です」
「もう少しだけ居させてくれないかい? 久しぶりの自由時間なんだ……もう少しだけ満喫したい」
「わかりました。では、あと十分で」
「ありがとう。っと……ちょっとお手洗いに行ってくる」
「では、我々もお近くまでお供いたします」
さっきまでいたエルヴィン様達は、お手洗いに向かったみたい。その隙を突いて、さっきの本を出してっと……。
「エルヴィン様……」
話すのは無理でも、私の気持ちをエルヴィン様に届けることは出来るはず。なるべく簡潔に、私の気持ちをエルヴィン様に伝えないと。
「そうだ……!」
私は勉強用のノートの切れ端にメッセージを書いて、先ほど見ていた思い出の本にわかるように紙切れを挟んだ。
その切れ端には、『私はあなたの隣で、あなたとの永遠の愛を語りたい。必ずあなたを取り戻してみせます』と書き、本から見える部分に、アイリーンと書いておいた。
こんな形での告白になってしまったが、別に構わない。だって、必ず取り戻した後、自分の口で改めて告白するから。
……不思議ね。エルヴィン様の姿を見ただけで、さっきまであった負の感情が、どこかに行っちゃったよ。
やっぱりエルヴィン様は、私にとって特別な人なんだと、あらためて痛感させられた。
「あっ、戻ってきた」
戻ってきたエルヴィン様の表情は、やはり優れない。しかし、わざと外に出しておいた本に気づいたみたいで……。
「あれ、この本……どうして……それに何か挟まって……こ、これは……!? すまない、少しだけ席を外してくれ」
「なりません。我々はあなたの護衛なのです」
「別に近くにいるからいいだろう? 少し一人になりたいんだ」
「…………」
渋々といった感じで、護衛は少しエルヴィン様から離れた。その隙に、エルヴィン様は私の紙切れを手に取り……くすんでいた目に光を取り戻すと、辺りをキョロキョロと見渡し始めた。
マズい、このままだと見つかっちゃう。本番までに顔を合わせたらどうなるのかわからない以上、気づかれない方が得策だ。
だから私は、急いでその場から足音を立てずに逃げ出した。
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■エルヴィン視点■
僕は、ずっとアイリーンのことが忘れられずにいた。一時もアイリーンことが頭から離れず、ミトラに何をされても興味がわかない。それくらい、アイリーンで頭がいっぱいだ。何も手が付けられない。
一応、結婚式が十二月に決まったから、それまでには体調を整えておかないと我が国の面子にかかってくるのだけど……。
まあそんな思いつめた状態の僕は、久しぶりに彼女と出会った図書館の中にある、とある本棚にやってきた。
ここで一生懸命腕を伸ばしていたアイリーンは、今思い出しても可愛くて顔がにやける。
「この紙、アイリーンが……」
アイリーンに取ってあげた、思い出の本には、さっき見た時には無かった紙切れが挟まっていた。
「中身は……『私はあなたの隣で、あなたとの永遠の愛を語りたい。必ずあなたを取り戻してみせます』だって……?」
彼女は、俺を取り戻そうとしているのか? それに、まだ俺のことを大切な人と思ってくれている……。
……わかっていたさ。家の前での告白も、キャンプファイヤーでの告白も。僕はそこまで鈍感じゃない。相手が愛する人なら尚更さ。
でも、僕は逃げられない定めからアイリーンを守るために、彼女を振った。なのに、このメッセージは……ははっ、全く君って人は……。
「……気持ちは嬉しいが、君を巻き込むわけには……」
アイリーンを守るために、僕は彼女を遠ざけた。なのに、彼女はこうしてまた僕の元にやって来て、僕を助けようとしている。
その気持ちに背き続けるのか……? そんなの、そんなの……出来るわけがない!
「ああ、わかったよ……」
賢いアイリーンのことだ。無策で動いているはずが無い。
なら僕は、なるべく怪しい動きをしないようにして、君達がこっちに来れやすい環境を作っておこう! そして、なにがあっても対処できるように、常日頃から警戒を怠らないようにしよう!
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