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第六十三話 顔を覗かせる寂しさ
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エルヴィン様を助けるための準備を始めてから、一ヶ月の月日が経った。
あの日から、私とソーニャちゃんは、ゲオルク様達や周りの人達の心無い言葉や態度に耐えながら、ヴァーレシア先生の研究室に通って準備を進めていた。
「そういやよ、協力してもらう予定の奴から聞いたんだが、エルヴィンの結婚式の招待状が届いたってよ」
「本当ですか!?」
必死に水晶に魔力を注入していると、何かの本とにらめっこをしたままのヴァーレシア先生が、とんでもない発言をした。
「それはいつなんですか!?」
「二ヶ月後の二十四日だ」
二ヶ月後というと、十二月か……まだ時間があるように思えるけど、二ヶ月なんてきっとあっという間だろう。
「まったく、そんな日程にするなんて、良い趣味してるな」
「その日に何かあるんですか?」
「遠い国の風習で、その日はクリスマスイブというものが行われる日だ。家族や恋人と過ごし、互いにプレゼントを交換し合あう日と聞いたことがある」
そんな文化があるなんて、全然知らなかった。他国とも交流がある王族の人ならではの日程って感じがする。
「ま、この調子なら二ヶ月後には完成してるだろうよ。悠長な間抜け共に感謝しねーとな」
「いえ、感謝を送る相手は、ヴァーレシア先生にですよ」
「あん? だから、そんなもんはいらねーって言っただろうが。もう忘れたのか?」
「忘れてはいませんけど……あの、どうしてヴァーレシア先生はここまでしてくれるんですか?」
丁度良い機会だから、今までずっと気になっていた疑問を投げかけると、なんだか怪訝そうな顔を向けられてしまった。
「んだよ、迷惑ってか?」
「逆ですよ! 私、研究の邪魔をずっとしちゃってるのに、文句一つ言わずに手伝ってくれるのが、ちょっと不思議で」
「あー迷惑迷惑。お前らがいなければ、きっと今頃研究が終わって、魔法が完成してただろうなー」
基本的にひねくれ者のヴァーレシア先生は、驚く程の棒読みでわざと文句を言ってみせた。
「そうやってひねくれた発言するの、よくないですよ」
「お前みたいなガキンチョに説教されるようじゃ、俺もおしまいだな」
「またそうやって……」
「まあ理由はある。けど言わねぇ。何を言っても、お前には嘘が見抜かれるからな」
「そう、それですよ! どうしてヴァーレシア先生は、私の鼻のことを知っているんですか!?」
「さあな」
……ダメだ、これはいくら聞いても答えてもらえそうにない。
それに、こちらは手伝ってもらってる立場上、変に問い詰めたせいで途中で投げ出されたら困るし……もう黙っておこう。
「ふぅ……ただいま戻りました~」
「おかえり、ソーニャちゃん。調子はどう?」
「な、なんとか形になってきました……! ヴァーレシア先生は先生をしているだけあって、教えるのが上手なんですよ」
「そりゃそうだろ。本職を疎かにして退職させられたら、この環境を手放す羽目になる」
それはその通りなんだけど、普段から授業だるい、プリント作るの面倒とぼやいているのを聞いているから、そのギャップが凄い。
「よし、随分と水晶がそろってきたな。少し集中するから、お前らは今日は帰れ。しっしっ」
「わかりました。本日もありがとうございました。ソーニャちゃん、帰ろっか」
「はいっ。ヴァーレシア先生、さようなら」
「おう」
ヴァーレシア先生に別れを告げて外に出ると、空は綺麗な夕焼けに色に染まっていた。
最近は日が沈むのが早くなってきただけじゃなくて、だいぶ肌寒くなってきている。十月なのだから、当然といえば当然だけどね。
「ソーニャちゃん、今日はちょっと図書館に寄って帰りたいから、一人で帰るね」
「それなら、図書館まで送りますよ……?」
「ううん、大丈夫。ありがとう」
「わかりました。ではまた」
「またね~」
迎えに来ていた馬車に乗って帰るソーニャちゃんを見送ってから、私は足早に図書館へと向かう。
最近は、ソーニャちゃんが気を利かせてくれて、帰りは家の近くまで送ってくれるのだけど、今日は授業で気になったところを調べたくて、町の図書館へと向かっているの。
「図書館に来るの、なんだか久しぶりな気がするなぁ」
セレクディエ学園に入学する前は、ゲオルク様に許可された曜日に必ず来て勉強をしていたな……そこで、エルヴィン様とも出会って……そんなに前の話じゃないのに、随分と昔のことのような気がする。
「それほど濃密な時間を過ごしてきたってことかな」
大変だった時もあるけど、楽しくて大切な思い出を思い出していたら、ずっと胸の内に秘めていた寂しさが顔を出してきて、目頭が熱くなった。
今すぐにでも、エルヴィン様に会いたい。エルヴィン様に触れて、その熱を感じたい。一緒に新しい思い出をたくさん作りたい……でも、今はそれが叶わないのが、なによりも悲しい。
……こんなところでへこたれていたって、エルヴィン様もあの日々も帰ってこない。そんなことはわかってるけど……一度顔を出した寂しさは、中々厄介なもので、そう簡単には消えてくれそうもない。
「ダメダメ、私は必ず取り戻すって決めたんだから。落ち込んでる暇なんて無い!」
言葉にして自分を鼓舞することで、なんとか少しでも寂しさを払拭する。
大丈夫、私なら絶対にエルヴィン様を取り戻せる。絶対にエルヴィン様と幸せになれる。そう自分に言い聞かせていると、いつの間にか図書館へと到着していた。
「さて、探している本はっと……」
この図書館に来た回数は数知れず。もはや私の庭のような場所であるおかげで、探している本はすぐに見つかった。
後は、このまま本を借りて家で勉強しても良いし、ここで閉館まで勉強してもいいのだけど……私はとある場所に向かって歩き出した。
図書館の中にある、とある本棚の前。エルヴィン様と初めて出会って話をした場所に向かうと、そこには一人の男性が、静かに佇んでいた。
あの日から、私とソーニャちゃんは、ゲオルク様達や周りの人達の心無い言葉や態度に耐えながら、ヴァーレシア先生の研究室に通って準備を進めていた。
「そういやよ、協力してもらう予定の奴から聞いたんだが、エルヴィンの結婚式の招待状が届いたってよ」
「本当ですか!?」
必死に水晶に魔力を注入していると、何かの本とにらめっこをしたままのヴァーレシア先生が、とんでもない発言をした。
「それはいつなんですか!?」
「二ヶ月後の二十四日だ」
二ヶ月後というと、十二月か……まだ時間があるように思えるけど、二ヶ月なんてきっとあっという間だろう。
「まったく、そんな日程にするなんて、良い趣味してるな」
「その日に何かあるんですか?」
「遠い国の風習で、その日はクリスマスイブというものが行われる日だ。家族や恋人と過ごし、互いにプレゼントを交換し合あう日と聞いたことがある」
そんな文化があるなんて、全然知らなかった。他国とも交流がある王族の人ならではの日程って感じがする。
「ま、この調子なら二ヶ月後には完成してるだろうよ。悠長な間抜け共に感謝しねーとな」
「いえ、感謝を送る相手は、ヴァーレシア先生にですよ」
「あん? だから、そんなもんはいらねーって言っただろうが。もう忘れたのか?」
「忘れてはいませんけど……あの、どうしてヴァーレシア先生はここまでしてくれるんですか?」
丁度良い機会だから、今までずっと気になっていた疑問を投げかけると、なんだか怪訝そうな顔を向けられてしまった。
「んだよ、迷惑ってか?」
「逆ですよ! 私、研究の邪魔をずっとしちゃってるのに、文句一つ言わずに手伝ってくれるのが、ちょっと不思議で」
「あー迷惑迷惑。お前らがいなければ、きっと今頃研究が終わって、魔法が完成してただろうなー」
基本的にひねくれ者のヴァーレシア先生は、驚く程の棒読みでわざと文句を言ってみせた。
「そうやってひねくれた発言するの、よくないですよ」
「お前みたいなガキンチョに説教されるようじゃ、俺もおしまいだな」
「またそうやって……」
「まあ理由はある。けど言わねぇ。何を言っても、お前には嘘が見抜かれるからな」
「そう、それですよ! どうしてヴァーレシア先生は、私の鼻のことを知っているんですか!?」
「さあな」
……ダメだ、これはいくら聞いても答えてもらえそうにない。
それに、こちらは手伝ってもらってる立場上、変に問い詰めたせいで途中で投げ出されたら困るし……もう黙っておこう。
「ふぅ……ただいま戻りました~」
「おかえり、ソーニャちゃん。調子はどう?」
「な、なんとか形になってきました……! ヴァーレシア先生は先生をしているだけあって、教えるのが上手なんですよ」
「そりゃそうだろ。本職を疎かにして退職させられたら、この環境を手放す羽目になる」
それはその通りなんだけど、普段から授業だるい、プリント作るの面倒とぼやいているのを聞いているから、そのギャップが凄い。
「よし、随分と水晶がそろってきたな。少し集中するから、お前らは今日は帰れ。しっしっ」
「わかりました。本日もありがとうございました。ソーニャちゃん、帰ろっか」
「はいっ。ヴァーレシア先生、さようなら」
「おう」
ヴァーレシア先生に別れを告げて外に出ると、空は綺麗な夕焼けに色に染まっていた。
最近は日が沈むのが早くなってきただけじゃなくて、だいぶ肌寒くなってきている。十月なのだから、当然といえば当然だけどね。
「ソーニャちゃん、今日はちょっと図書館に寄って帰りたいから、一人で帰るね」
「それなら、図書館まで送りますよ……?」
「ううん、大丈夫。ありがとう」
「わかりました。ではまた」
「またね~」
迎えに来ていた馬車に乗って帰るソーニャちゃんを見送ってから、私は足早に図書館へと向かう。
最近は、ソーニャちゃんが気を利かせてくれて、帰りは家の近くまで送ってくれるのだけど、今日は授業で気になったところを調べたくて、町の図書館へと向かっているの。
「図書館に来るの、なんだか久しぶりな気がするなぁ」
セレクディエ学園に入学する前は、ゲオルク様に許可された曜日に必ず来て勉強をしていたな……そこで、エルヴィン様とも出会って……そんなに前の話じゃないのに、随分と昔のことのような気がする。
「それほど濃密な時間を過ごしてきたってことかな」
大変だった時もあるけど、楽しくて大切な思い出を思い出していたら、ずっと胸の内に秘めていた寂しさが顔を出してきて、目頭が熱くなった。
今すぐにでも、エルヴィン様に会いたい。エルヴィン様に触れて、その熱を感じたい。一緒に新しい思い出をたくさん作りたい……でも、今はそれが叶わないのが、なによりも悲しい。
……こんなところでへこたれていたって、エルヴィン様もあの日々も帰ってこない。そんなことはわかってるけど……一度顔を出した寂しさは、中々厄介なもので、そう簡単には消えてくれそうもない。
「ダメダメ、私は必ず取り戻すって決めたんだから。落ち込んでる暇なんて無い!」
言葉にして自分を鼓舞することで、なんとか少しでも寂しさを払拭する。
大丈夫、私なら絶対にエルヴィン様を取り戻せる。絶対にエルヴィン様と幸せになれる。そう自分に言い聞かせていると、いつの間にか図書館へと到着していた。
「さて、探している本はっと……」
この図書館に来た回数は数知れず。もはや私の庭のような場所であるおかげで、探している本はすぐに見つかった。
後は、このまま本を借りて家で勉強しても良いし、ここで閉館まで勉強してもいいのだけど……私はとある場所に向かって歩き出した。
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