【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき

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第六十九話 あの時の言葉をもう一度

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 大騒動は無事に終わり、兵士達が罪人達を次々とどこかへ連れていくのを、私はエルヴィン様やソーニャちゃんと一緒に、ボーっと眺めていた。

 連れていかれる人の中には、ゲオルクの魔法に巻き込まれたミアやシンシア、ルシアがいたのだけど……なんだかルシアの様子が変だ。

 ルシアは心ここにあらずって感じで……ずっと何かブツブツと話していて、ちょっと怖い。

「ったく、ヒーロー様がなにボーっとしてるんだ」

「ヴァーレシア先生! 大丈夫でしたか?」

「あん? あんなノロい魔法に反応が遅れるほど、俺は老いてねーよ。お前こそどうなんだ?」

「クタクタですけど、とりあえず大丈夫です」

 よかった、結構出血していたし、だいぶご高齢だから、大ケガでもしたんじゃないかと思ったけど、防御魔法で何とかしていたんだね。
 
「ここに連れて来てくれた、例のあいつ。ちょっとケガをしたみたいで、救急隊が運んでいったぞ。まったく、今度詫びの品でももっていかないとな。それと、両国王による命令で、宰相、あとゲオルクの母も連れていかれるようだ」

 さっきは子供達だったけど、こんどは保護者達が連行されたんだね……あ、丁度あそこにいるね。宰相は随分と暴れているけど、ゲオルクのお母さんは、もう騒ぐ元気もないみたい。

「そうだ、エルヴィン様。ゲオルクはどうなったのでしょう?」

「禁術を使ってから、少し時間が経ったからね……罪を償わせるために、医療班が懸命に治療をしているが……きっと……」

「……そうですか」

 同情の余地はない。全て自分がまいた種で引き起こされた大事件なのだから。生き残って生き恥を晒すくらいなら、その方が良かったと言い出すかもしれないね。

「あ、あの……結局、アイリーンさんのあれは、なんだったのでしょうか?」

「狐族ってのはな、稀に覚醒をして飛躍的に成長する奴がいる。その証が、九本の尻尾だ。大体が、強い感情と魔力によるものなんだが……才能があっても、力が目覚めるには相当な想いと魔力が無いと無理だ。アイリーンは、その両方が備わっていたってこった」

「私に、そんな力が……」

 もしかして、私の魔力が異常なくらい多かったのって、それが理由だったのかな? もしそうなら、何となく納得は出来る。

「この尻尾、いつもみたいに一本にならないんですか? さすがにこれだと生活がしにくいです……」

「そんなの、俺が知るわけねーだろ……ああもう、そんな子犬みたいな目で見るな、鬱陶しい。何かないか調べておいてやるから」

「ありがとうございます!」

「ったく……まあ他にも積もる話もあるだろうし、残りは後日にすんぞ。とりあえず、国王達に挨拶してこい」

「わかりました」

 私とエルヴィン様、ソーニャちゃんの三人は、忙しそうに指揮を取る両国の国王と、隣国の王女様の元にやってきた。

「父上、陛下。私達はそろそろ失礼させていただきます。今回の一件で取り調べがあったら、いつでもご対応させていただきますので」

「うむ。今回はご苦労だった」

「我々を守り切ってくれたこと、大義であった。我が娘よ。何か言うことがあるのではないか?」

「うん。みんな、あたし達のためにたくさん頑張ってくれて、本当にありがとう! それと、あたし達が情けないせいで、巻き込んでしまって本当にごめん! それで……よかったら、今度一緒にお茶飲まない? もちろん、友達として……ね!」

「わぁ! ぜひぜひ!」

 こうしてミトラ様が新しいお友達になったところで、私はエルヴィン様が用意した馬車で、ソーニャちゃんは実家の馬車、ヴァーレシア先生は徒歩で帰路についた。

「…………」

「…………」

 馬車の中は、沈黙に包まれていたが、互いの手は指を絡めた強固な握られ方をしていた。その握り方は、もう私達は絶対に離れないという、強い意思の表れだった。

「こうして二人で過ごすのは、もう無理だと思ってたから……なんだか不思議な気分だよ」

「私は諦めてませんでした。だって、エルヴィン様と離れたくなかったから」

「アイリーン……」

 ……エルヴィン様はあの言葉を期待している。あの時と違って、事情があって止めるなんてことはされない……邪魔するものは、誰もいない。

 だから、私は――

「私は、エルヴィン様のことが好きです」

 きっぱりと、自分の想いをエルヴィン様に伝えた。この好きという言葉に、たくさんの気持ちを詰め込んだつもりだ。

「出会った時から優しくて、勉強も魔法も上手で、笑顔が可愛らしくて、でも魔法を教えるのが苦手なのが可愛くて……どんな時でも助けに来てくれるカッコイイあなたが好きです」

 いつか告白をする時のために、いくつか考えてきたんだけど、結局どれも使わずに、アドリブで言い切ってしまった。

「アイリーン……僕は……」

「エルヴィン様? どうしたんですか?」

「急にね、事情があったとはいえ、僕はミトラとの婚約を受け入れた身だ。そんな僕が君に相応しいのかと思ってね……」

 心配をしているエルヴィン様をよそに、私はニコッと笑いながら、エルヴィン様の肩に手を置いた。

「あれはエルヴィン様は悪くありません。大切な国や民を守るには、最適だったと思います」

「しかしだね……」

「だから、あなたの気持ちを聞かせてください」

「……なんだか、随分と強くなったね。僕の答えは……出会った時から努力家で愛らしくて、嬉しいと尻尾が揺れちゃうのが可愛くて、でもそれを必死に隠そうとするのも可愛くて、きつねうどんを食べてる時の満面の笑顔が可愛くて――」

 ま、待って待って! 可愛いしか言われてない気がするのだけど! これはさすがに照れるなって方が無理無理!

「他にも良い所はたくさんあるアイリーンのことを、好きにならないはずがない」

「ってことは……」

「ああ。僕と、結婚を前提に交際してほしい」

「……はい、よろこんで! 不束者ですが、よろしくお願いします!」

 揺れる馬車の中、私達はゆっくりと顔を近づけていって、そのまま最初のキスを交わした。
 緊張で頭が真っ白になってしまったけど、唇に残る感触と、この胸をソワソワさせるような高揚感と幸福感は、一生忘れることが出来ないだろう。
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