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第七十話 歪んだ愛の行きつく先は……
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■ルシア視点■
あの日から三日が経った。私は暗くてかび臭い獄中の中での生活を余儀なくされておりました。
煌びやかなドレスは脱がされ、汚い囚人服に着せ替えられ、アクセサリーも当然没収されました。
代わりに、私が結婚式の時にエルヴィンが土壇場で反乱を起こさないように用意した。魔法を封印した指輪を、私がつけられております。
「ゲオルク様……ご無事かしら……」
私の愛しい人。私の全て。あの人が無事なら、私はどんな生活だって耐えられる。どんな罰でも耐えられる。だって、いつかゲオルク様と会える日が来るという希望が持てるもの。
「ルシア、飯の時間だ」
「…………」
決まった時間になると、看守から質素な食事が与えられる。栄養もおいしさも考えられていない食事ではございますが、なにも食べないよりは些かは良いでしょう。
「それと、伝えなければならないことがある。つい先ほど、ゲオルクの死亡が確認された」
「……は……?」
「最善を尽くしたが、やはり禁術を使った者を救うことは出来なかったと、医療班が報告してきた。以上だ」
「ま、待ちなさい!! ゲオルク様が死んだって、そんなの嘘に決まっておりますわ! 今すぐにその言葉を取り消しなさい! 聞いておりますの!?」
「取り乱す必要は無いだろう。なにせ奴は、助かるために、お前を見捨てて、元婚約者だった女性にもう一度結婚を申し込んだそうだからな」
「なんですって……!? どういうことですの!?」
鉄格子をガンガンと揺らしながら引き止めましたが、看守は振り向くことすらせずに、その場を後にしました。
「そんな……ゲオルク様が……」
確かにゲオルク様は、己を犠牲にして発動する強大な魔法を使われました。でも、ゲオルク様ならきっと助かるという、確固たる信頼がありました。
でも、現実は甘美な夢とは違った。ゲオルク様は死に、私は大犯罪者として牢に入れられている。
それどころか、自分が助かるために、アイリーンに婚約を申し込んだなんて……そ、そんなことをゲオルク様がするはずが……。
は、ははは……そうですわ。これも全て……全て……!
「……アイリーンが憎い……私達を全て否定するこの世界の全てが憎い……あぁ、ゲオルク様……どうして私を裏切るような真似をしたのですか? どうして私を置いて逝ってしまわれたの……? ゲオルク様……ゲオルクさま……ゲオルクさ、ゲオルクゲオルクゲオルクゲオルクゲオルクゲオルクゲオルクゲオルク」
愛する人の名前を呼ぶたびに、彼のことが勝手に思い出される。楽しくて幸せだった日々は、もう二度来ることはない。
そう思ったら、私の全てが音を立てずに崩壊してしまいました。
こんな世界になんて、もういられない。一秒でも早く、ゲオルク様の元に向かわなければなりません。
「ゲオルク様……すぐにあなたの元に向かいますわ。だから、少しだけお待ちください」
私はよろよろとした足取りで独房の壁まで行き、大きく体をのけぞらせると……一切の遠慮なしに、頭を壁に叩きつけました。
鈍い音と激痛と共に、私はその場に倒れました。頭からは血がどんどんと流れ、意識も混濁してきました。
でも、こんな痛みなど……ゲオルク様のところに行くためなら、全く苦になりません。
「私の……愛する人……ゲオルク様以外、誰もいらない……ああ、愛していますわ……」
意識を手放すために、ゆっくり目を閉じようとすると、目の前に人影が見えました。
もうそれが誰なのか、私には判断できる力はありませんでしたが、そのお方に手を差し伸べられて……私はその手を取りました。
『さっさと来い。俺様には、ルシアが必要だ』
……ええ、大丈夫ですわ。私は、ずっとお傍におりますから――
あの日から三日が経った。私は暗くてかび臭い獄中の中での生活を余儀なくされておりました。
煌びやかなドレスは脱がされ、汚い囚人服に着せ替えられ、アクセサリーも当然没収されました。
代わりに、私が結婚式の時にエルヴィンが土壇場で反乱を起こさないように用意した。魔法を封印した指輪を、私がつけられております。
「ゲオルク様……ご無事かしら……」
私の愛しい人。私の全て。あの人が無事なら、私はどんな生活だって耐えられる。どんな罰でも耐えられる。だって、いつかゲオルク様と会える日が来るという希望が持てるもの。
「ルシア、飯の時間だ」
「…………」
決まった時間になると、看守から質素な食事が与えられる。栄養もおいしさも考えられていない食事ではございますが、なにも食べないよりは些かは良いでしょう。
「それと、伝えなければならないことがある。つい先ほど、ゲオルクの死亡が確認された」
「……は……?」
「最善を尽くしたが、やはり禁術を使った者を救うことは出来なかったと、医療班が報告してきた。以上だ」
「ま、待ちなさい!! ゲオルク様が死んだって、そんなの嘘に決まっておりますわ! 今すぐにその言葉を取り消しなさい! 聞いておりますの!?」
「取り乱す必要は無いだろう。なにせ奴は、助かるために、お前を見捨てて、元婚約者だった女性にもう一度結婚を申し込んだそうだからな」
「なんですって……!? どういうことですの!?」
鉄格子をガンガンと揺らしながら引き止めましたが、看守は振り向くことすらせずに、その場を後にしました。
「そんな……ゲオルク様が……」
確かにゲオルク様は、己を犠牲にして発動する強大な魔法を使われました。でも、ゲオルク様ならきっと助かるという、確固たる信頼がありました。
でも、現実は甘美な夢とは違った。ゲオルク様は死に、私は大犯罪者として牢に入れられている。
それどころか、自分が助かるために、アイリーンに婚約を申し込んだなんて……そ、そんなことをゲオルク様がするはずが……。
は、ははは……そうですわ。これも全て……全て……!
「……アイリーンが憎い……私達を全て否定するこの世界の全てが憎い……あぁ、ゲオルク様……どうして私を裏切るような真似をしたのですか? どうして私を置いて逝ってしまわれたの……? ゲオルク様……ゲオルクさま……ゲオルクさ、ゲオルクゲオルクゲオルクゲオルクゲオルクゲオルクゲオルクゲオルク」
愛する人の名前を呼ぶたびに、彼のことが勝手に思い出される。楽しくて幸せだった日々は、もう二度来ることはない。
そう思ったら、私の全てが音を立てずに崩壊してしまいました。
こんな世界になんて、もういられない。一秒でも早く、ゲオルク様の元に向かわなければなりません。
「ゲオルク様……すぐにあなたの元に向かいますわ。だから、少しだけお待ちください」
私はよろよろとした足取りで独房の壁まで行き、大きく体をのけぞらせると……一切の遠慮なしに、頭を壁に叩きつけました。
鈍い音と激痛と共に、私はその場に倒れました。頭からは血がどんどんと流れ、意識も混濁してきました。
でも、こんな痛みなど……ゲオルク様のところに行くためなら、全く苦になりません。
「私の……愛する人……ゲオルク様以外、誰もいらない……ああ、愛していますわ……」
意識を手放すために、ゆっくり目を閉じようとすると、目の前に人影が見えました。
もうそれが誰なのか、私には判断できる力はありませんでしたが、そのお方に手を差し伸べられて……私はその手を取りました。
『さっさと来い。俺様には、ルシアが必要だ』
……ええ、大丈夫ですわ。私は、ずっとお傍におりますから――
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