拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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その手を。

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「シリル。誰か良い人は・・・いえ、違うわね。こんなのはズルい言い方だわ・・・」

「クロエ?」

 私の様子にシリルは戸惑ったような声を上げたけど、私は目を閉じて息を整えるとゆっくりとシリルと目を合わせた。

「シリル・マキシミリオン様。私、クロエ・メルキオールは貴方様のことをお慕いしております」

「・・・え?」

「シリル。あなたのことが好きよ。あなたの隣にいてあなたを支えるのは、私でありたい」

 恥ずかしいけど、言い切ったわ。

 これがこの二年間で得た、私の本当の気持ち。

 私は、カグレシアン公爵閣下が望んでくださるなら、閣下と婚約婚姻しても良いと考えていた。

 あの三択なら、閣下しか選びようがないというのもあったわ。

 でもあれは三択ではなくて、四択だった。

 皇女の私が誰とも婚約しないというのは無理なことだから、四つ目の選択肢を選ばないなら、閣下に娶っていただくことになったでしょうね。

 でも、あの時・・・
閣下は、家族や友人とも疎遠にさせるとおっしゃった。

 もちろん、全く会わせないとかじゃないでしょうけど、のように従兄妹だからとシリルと親しくすることは許さない、と。

 シリルとは、いつでも会えていたわけじゃないけど、お互いが別の人と結婚したとしても従兄妹として親しくできると思ってた。

 シリルが他の誰かに優しく微笑むのも大切にするのも、胸が少し痛んでも従妹として応援できると思ってた。

 今まで通りにいられるなら。

 でも、カグレシアン公爵閣下と婚約婚姻すれば、シリルと今まで通りにはいられない。

 ううん。
シリルの方だって、誰かと結ばれればその方が私の存在を厭うのが当然。

 私はずっと、それを意識しないようにしてきた。

 嫉妬とか独占欲とか、そんな感情はと。皇女に相応しくないと思ってた。

 でも、それは違うのだと公爵閣下に教わった。

 確かに、行きすぎた嫉妬は醜い。

 だけど、誰かに独占欲を抱くことも、嫉妬心を抱くことも、人として自然なことなんだと。

 その気持ちを認めなければ、その気持ちが行き過ぎることを諌めることも出来ないし、人として成長することもできないと。

 一年もかかったわ。

 そして、残り一年で、シリルのこと、家族のこと、公爵閣下のこと、自分のことを見つめ直した。

 シリルに・・・
今、想う人がいたとしても、自分の気持ちを正直に伝えよう。

 そして失恋したとしても、時間がかかったとしても、シリルの幸せを願える自分になろう、そう思ったの。

 そうしなければ、私も前に進めないのだから。
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