拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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全ての糸の先には。

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 二年前。

 カグレシアン公爵閣下から言われた言葉。

 人は生きていれば間違えることもある。許せない間違いもあるだろう。
 だがそれを踏まえても失ってばならない存在というものはあるものだ。

 そうおっしゃった閣下は、二年間の間にじっくりと自分に向き合い考えるようにと続けられた。

 私が『答え』を出してから知ったことだけど、今回の婚約者候補を決めたのはお母様だった。

 お母様は、

 私が恋を知らないこと。

 シリルにほんの少し恋心を抱き始めていたこと。

 それ故に、信頼を裏切られたと感じてシリルを拒絶したこと。

 全てを見通した上で、今回の婚約者候補を決めたそうだ。

 幼馴染のミレーゼ様のことをお好きだけど、嫡男嫡女という立場ゆえに一歩を踏み出せなかったスカッシュ様。

 マザコン?らしくて、お会いする前に伯母様から候補から取り消されたシャンティ様。

 そして、十三歳年上で私を諭し導いてくださったカグレシアン公爵閣下。

 答えを出した現在いまなら理解る。

 お母様は、私の『答え』を見通していた。

 だから、三人目がカグレシアン公爵閣下だった。

 家族でも友人でもなく初めて会った方で、しかもお義兄様よりもお父様に近い年齢の方。

 だからこそ、閣下の言葉を私は素直に聞くことが出来た。

 シリルや私自身、そして婚約解消の背景をよく知る人の言葉なら、私はきっと素直には聞けなかった。

 お母様としては、人の誰と婚約することになったとしても、私の自己責任とすると決めていたそうだ。

 想い合う二人を引き裂いて、政略結婚を選んでも。

 嫁よりも親を尊重する夫を選んでも。

 家族との交流すら嫉妬するほどの重い愛を選んでも。

 自己責任で、今度は婚約解消は許さないおつもりだったとおっしゃっていた。

 この二年間。
私はカグレシアン公爵閣下のお導きの元、シリルのこと、そして自分自身のことをたくさん考えた。

 シリルは確かに、お父様である国王陛下の命令でアーゼル男爵令嬢と共にいて、パーティーもエスコートすると言った。

 でもあれは、シリルの意思じゃない。

 あれは国王陛下たちが、レシピエンス王国との縁を繋ごうと、ように見せかけながらしただけ。

 潔癖だった私が、婚約を解消するだろうことも、シリルがそれを嫌がり反抗することも、全て予想した上でのことだった。

 私は本当に子供で、その手のひらの上で転がされていただけ。

 皇女としても、一人の女性としても、本当に未熟だった。

 その未熟さ故に、大切な人を傷つけてしまったの。
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