118 / 130
許せなかった理由。
しおりを挟む
「久しぶりだね、クロエ。元気そうで良かった」
そう言って、シリルは微笑んだ。
二年前の私の知っているシリルより、ずっと大人びていて背もずいぶん伸びた。
銀髪は伸びて、襟足で束ねられている。
「シリルも元気そうね」
「最近、ようやく落ち着いたんだ。母上と義姉上が手を貸して下さったから何とか形になってるよ」
ソファーに向かい合って座りながら、私たちは近況を語り合う。
シリルは突然王太子になったから、とにかく大変だったと思う。
「クロエはどうしてた?」
「基本は帝国で、お姉様のお手伝いだったわ。甥っ子のルキが可愛くて」
お姉様は、この二年の間に次期皇太子を出産された。
メルキオール帝国の、黒髪黒目を継いだ甥っ子はとても可愛くて、もう時間ができたらしょっちゅう会いに行ったわ。
あ。もちろん、お仕事のお手伝いもちゃんとしてたわよ?
うちの国は、できるだけ乳母任せにせずに子供を育てるから、お姉様の執務室にはベビーベッドが置かれていたの。
最初は、大臣たちも目を丸くしてたけど、慣れるしかないわよね。お姉様は皇太女なんだもの。
出産間際まで皇太女として働いていたお姉様。
家族として、サポートするのは当然よね。
シリルにとっても甥だけど、シリルはルキに会いには来なかった。
もちろんお祝いは送って来たけど。
王太子になったばかりの上、国は混乱してたのと・・・
多分だけど、私に会うのを避けてるのだろうと、ルーファスお義兄様が言っていた。
シリルは私のことを好きな気持ちのままだから、私に縋りたくなるのだろうって。
二年前、シリルがあっさりと婚約の解消を受け入れたのは、自分のしたことを悔いたから。
そして父親と兄の私への態度で、私との関係回復は難しいと思ったから。
そうね。
あの時は、婚約の解消が最適だったわ。
私はシリルの、未遂とはいえ私を蔑ろにする行為を許せなかったし、皇女としても許すべきじゃなかった。
婚約を解消した後、少し寂しさを感じたけど、従兄弟であることは変わらないんだから、そのうちに元に戻れるって思った。
お母様に言われて、三人の婚約者候補に会って・・・
カグレシアン様に言われて、気付いたの。
私が、二年前にどうしてシリルを許せなかったのか。
あの時の私は、シリルに対して恋心を持ち始めたばかりだった。
今まで、異性として相手を特別な好きになったことがなかった私は、シリルの行動が許せなかった。
シリルには決してそんなつもりはなかったのだけど、私はそれを裏切りのように感じてしまった。
だから、未遂でしかも国王陛下たちの命令だったというのに許せなかったのよ。
そう言って、シリルは微笑んだ。
二年前の私の知っているシリルより、ずっと大人びていて背もずいぶん伸びた。
銀髪は伸びて、襟足で束ねられている。
「シリルも元気そうね」
「最近、ようやく落ち着いたんだ。母上と義姉上が手を貸して下さったから何とか形になってるよ」
ソファーに向かい合って座りながら、私たちは近況を語り合う。
シリルは突然王太子になったから、とにかく大変だったと思う。
「クロエはどうしてた?」
「基本は帝国で、お姉様のお手伝いだったわ。甥っ子のルキが可愛くて」
お姉様は、この二年の間に次期皇太子を出産された。
メルキオール帝国の、黒髪黒目を継いだ甥っ子はとても可愛くて、もう時間ができたらしょっちゅう会いに行ったわ。
あ。もちろん、お仕事のお手伝いもちゃんとしてたわよ?
うちの国は、できるだけ乳母任せにせずに子供を育てるから、お姉様の執務室にはベビーベッドが置かれていたの。
最初は、大臣たちも目を丸くしてたけど、慣れるしかないわよね。お姉様は皇太女なんだもの。
出産間際まで皇太女として働いていたお姉様。
家族として、サポートするのは当然よね。
シリルにとっても甥だけど、シリルはルキに会いには来なかった。
もちろんお祝いは送って来たけど。
王太子になったばかりの上、国は混乱してたのと・・・
多分だけど、私に会うのを避けてるのだろうと、ルーファスお義兄様が言っていた。
シリルは私のことを好きな気持ちのままだから、私に縋りたくなるのだろうって。
二年前、シリルがあっさりと婚約の解消を受け入れたのは、自分のしたことを悔いたから。
そして父親と兄の私への態度で、私との関係回復は難しいと思ったから。
そうね。
あの時は、婚約の解消が最適だったわ。
私はシリルの、未遂とはいえ私を蔑ろにする行為を許せなかったし、皇女としても許すべきじゃなかった。
婚約を解消した後、少し寂しさを感じたけど、従兄弟であることは変わらないんだから、そのうちに元に戻れるって思った。
お母様に言われて、三人の婚約者候補に会って・・・
カグレシアン様に言われて、気付いたの。
私が、二年前にどうしてシリルを許せなかったのか。
あの時の私は、シリルに対して恋心を持ち始めたばかりだった。
今まで、異性として相手を特別な好きになったことがなかった私は、シリルの行動が許せなかった。
シリルには決してそんなつもりはなかったのだけど、私はそれを裏切りのように感じてしまった。
だから、未遂でしかも国王陛下たちの命令だったというのに許せなかったのよ。
1,752
あなたにおすすめの小説
見捨てられたのは私
梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。
ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。
ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。
何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。
梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。
王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。
第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。
常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。
ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。
みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。
そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。
しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる