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薄明に花びらの舞う
「貴方を、探して居たの」と少女は告げた
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夜に、しかも明かりもつけずにこの辺りをうろつくなんて、普段であれば気が狂ったと疑われても仕方のない沙汰だった。新月に近い濃い闇は、一見逃亡者である自分たちに有利ではあったが、環境がその優位性を大いに阻んでいた。
マガディだけではない。
周囲の町も、道も、渓谷に沿って造られている事が多い。足場の悪い箇所もある。
かすかな光だけを頼りに進むのは無謀そのもので、少しでも遠くに遠ざかりたい気持ちとは裏腹に、掛けた時間に対して進みは目眩のするほど遅々としたものだった。これでは、大っぴらに明かりをつける事もできる追手の方が却って有利なぐらいだろう。
悪条件の中宵花は気丈に頑張っていたが、すり減るばかりの神経に彼もそろそろ限界だった。
休めそうな場所を見つけて、倒れ込むように横になる。
次に意識が戻ったのは、もう昼も近かろうかという頃合いだった。
「目が覚めた?
軽くお腹に入れたら直ぐに出立為ましょう。日が有る内に成る可く離れて置かないと」
「宵花、まさか休んでないの⁉」
「そんな事無いわ。体力が回復する程度には眠ったわよ。
然うね、でも、今夜は先に休ませて頂戴」
「もちろんだよ。
何か、ごめん」腑甲斐なさに腹が立つ。
「良いのよ。気に為ないで。
慣れてるから」
ファルーズは押し黙り。
ひたすら淡白な食事を取り終えると、口を開いた。
「僕は、これからどうすればいい?」
「本来、ラーベに見える決まった道は無い。ラーベに呼ばれた者丈が自然と辿り着く様に成って居るの。けれど今、其れは鎖され固定されて居る。だから先ずは、道を開く所からね」
告げる彼女はどこか、ひやりとした静謐さを纏っていた。
手を伸ばせば触れられるほど近くにいるのに、急に壁ができてしまったようで……
込み上げてくるものを押し戻すように、ファルーズは言葉を発した。
「君は——」どうしてそんなことを知っているのか。
問おうとしたところで、宵花が身を潜めるよう促す。
間もなく、彼らが休んでいる窪みの天井に当たる道を、二人組が通って行った。
彼ら、
いや、
彼を探しているようだ。フィーヴァシルフェの連中に違いない。
「山狩……。
随分念入りね。
……此の辺りで一番近い大きな街は?」
「まぎれられる程度にって事だよね?そうなると……
麓のキラトーまで無いかなぁ」
「此処から其処迄町や村を迂回為るルートは?」
「……大丈夫。
行けると思う」
「頼りに為て居るわ、ファルーズ」
微笑んで、宵花はそう言った。
宵花の作戦は功を奏し。ろくに整備もされていない山道を四苦八苦しながら下山するまでの間再び追手の影を感じることもなく、どうにか麓まで辿り着くことができた。
この先はまず、リュクワを目指すという。道を開くのに必要な情報があと二つ欠けていて、それを知るための当てがあるのだと、宵花は言った。
「ここからの最短経路だと隊商路沿いにニモタータに出て、そこから目指していく感じかな」
頭の中にざっとした地理を思い浮かべて、ファルーズ。
「然う。じゃあニモタータ迄の道程は任せたわ。其の先は、わたしが何とか出来ると思う。
後は、追手に邪魔されない事を祈りましょう」
「そうだね。僕もさすがに砂漠の隊商路を通らずに行く方法は知らないし。連中、そんなにしつこくないと良いんだけど……」
フィーヴァシルフェがどういう組織なのかそれほど詳しくはないが、どうもそれほどまとまりのある連中でもないらしい。彼を狙う動きがマガディ周辺の団体の局所的な動きだったのなら、なんの事はないのだが。
「ねえ、宵花」
なんとなく、聞き辛い気がして。
けれども、今しかないような予感もして。
足を止め、乾いた唇を湿らせると。山狩のせいで聞きそびれて以来、ずっと宙に浮いたままになっていた疑問を、ファルーズは再度問い直した。
「寧ろ、何故知らないの?」
しばし彼を見つめた後、宵花。
(えっ。
これってもしかして、常識?)
ファルーズは一瞬、本気で悩む。
そんな彼の様子に構わず、宵花は淡々と続けた。
「わたしは貴方達が忘れて仕舞った事を覚えて居る。
唯其丈の事よ」
ついと。鈴の音の尾を引いて。
先に立って歩き出す。
これが初めてではない。
こうして、時折。
宵花は彼を突き放すような言動をとる事があった。
先行する少女の華奢な背中を見つめる。
彼女は確かにここに居るのに。
どうしてか。
彼女だけが世界から浮いているように見える事があった。
(違う。
そうじゃない)
一線を引いているのは、彼女の方なのだ。
彼に対してだけではなく。
(それが、何だか)
無性に哀しかった。
唐突に。
それは、なんの前触れすらなく。
朝の、まだ穏やかな陽射しの中に。蜃気楼のように。
不意に、現れた。
「まさか、
そんな……」
それは、
その人は、
後ろ姿ではあったが。
黒一色に装われた、スラリとした佇まい。
祖父の話に思い描いてきた姿が重なった。
いつまでも動かない彼を不審に思ったのだろう。
宵花が振り返る。
「如何為たの?」
つられるように、少し遅れて。
その人も、彼の方を向いた。
(英雄、レベッカ……!)
驚きは、言葉にならなかった。
何故?
どうして?
どうやって?
混乱し、渦のように駆け巡る疑問にめまいのような眩みを覚えつつ。
それでも、何とか問い掛けに応じようと生唾を飲み込み、どうにか言葉を絞り出す。
「いや、君の後ろに突然人が現れたんだ。ほら、前に見せただろう?肖像画。あの人だよ」
答えて、気付く。
これは説明を要するようなことではない。振り返った彼女には、訳が分かったはずだ。もし彼と同じものが見えているのであれば。
果たして。
「わたしには見えないわ」
それでも、生真面目に彼に見えている世界を共有しようとしたようだったが。
ややして、首を振り振りこう言った。
「幻覚よ。
疲れて居るんだわ、屹度」
(そうかなぁ)
ファルーズは首をひねる。
確かに疲れはある。けれど眠れない程ではないし、しかも、彼の中の英雄レベッカのイメージといったら肖像画の姿で、もっと若い頃、同い年くらいの姿など意識した覚えはない。
心の中に無いものが現れる
そんな幻覚など、有り得るだろうか。
釈然とはしない。
が、分からないものを考えても仕方がない。確かなことは、英雄レベッカはとうにもうこの世を去っているということだ。
促す彼女に頷きかけ、駆け出す。
チラと、まだそこに在る人に視線を置いて。
宵花と合流する。
「過去の、亡霊」
ぼそりと。
呟かれたそれは低く、くぐもっていて。
何と言ったのか。
ファルーズの耳にはっきりと届くことはなかった。
「追われて居るのなら、此の恰好は止めた方が良いわね」
キラトーに入り。宿を確保して、一息つくと。
宵花はそう切り出した。
「確かに」
主な隊商路から外れているとはいえ人の行き来が珍しくはないここキラトーにあっても、宵花の身なりはひときわ異彩を放っている。目を引くような真似を避けるのであれば、その対応は至極真っ当なものであった。
(けど)
つくづくと少女を眺める。
(本当に、まるで、宵花のためだけにあつらえたみたいだ……)
その装束はよく彼女の雰囲気に馴染み、引き立てていて——
つまり、一言で言えば、すごく似合いだったので、少し残念ではあった。
「でも君は——
綺麗だから。紗を被っていても目についてしまうかもしれないね」
「有り難う」少し目を見開くと、微笑んで、宵花。
「けれど然うだと為ても、案外目立たない物よ」
宵花が服を見繕っている間に、彼は食料その他こまごまとしたものの買い出しを行うことにした。
市場で別れると、目当ての店を巡っていく。
回り道のおかげで余計に食料を消費してしまっていたし、これからも同様のことが起こるかもしれないのだ。できる限り余分に確保しておく必要があった。
「さすがに人が多いよな」
ごった返す市場の人波をかき分けるようにして進みながら、ファルーズ。
時間帯もあるのだろうが、これでもダカンジの中では中ぐらいの規模だというのだから、チェレンやニモタータなど一体どうなっているのやら。想像がつかなかった。
「ええっと、水は……」
山の上はそうでもなかったが、麓で生活を営むダカンジの集落の多くにとって、水は切実な貴重品だ。西の山脈よりの湧水に恵まれるここ、キラトーといえど例外ではない。ゆえに、よそ者が水を使う際にはいくつかの決まりを守らねばならなかった。
例えば、今のように水を汲みたい場合。勝手に井戸の水を利用することは許されない。定められた場所で代金を支払った上で汲むことになっていた。
人心地ついた気分で市場を後にしたファルーズは、一つ向こうの通りに出るために路地を抜けようと——
「おっと。そっちは行かない方が無難だぜ」
出し抜けに、肩をつかまれ。
目の前の街路を、フィーヴァシルフェのローブ姿が連れ立って横切っていく。
「これから連中の集会があるらしくてな。人通りが多くなる。見られないに越したことはないだろ?ファルーズ」
「どうして——!」
驚き、振り返る。
パッと手を離すと、男がひらひらと手を振った。
身なりはここいらのごくごくありふれたものだが、薄めの瞳と髪の色から一見して地元の者でないと知れる。向けられた邪気のない笑みはいっそ人好きすらする程で、思わず気安くなってしまいそうになるが……。
(むしろ、こういう手合の方が危険って事もあり得るよな)
じりりと、重心を整えて。
腰に提げた剣を意識する。
「そう構えるなって。オレは——」
「飛んで火に入る夏の虫とはこの事ですな」
割って入った声は背後から、つまり、たった今出ようとしていた路地の先から聞こえてきた。
どうやら事態は望まぬ方向に動いていたようだ。
道行を塞ぐように固まっていたのは、できれば馴染みたくなかった杏子色の長衣。
「スーヴィルヴァへの捧げ物だ。少年の方はくれぐれも殺すでないぞ」
「あらら。見つかっちまってたか」
戻る道も絶たれたからかもしれないが。
なかば巻き込まれた形になった男もその場に留まり応戦してくれるようだった。心得もある、というより、彼よりも上手かもしれない。体術を織り交ぜつつ的確に捌くその動きには無駄がなく、これといった隙もない。攻守の使い分けも巧みだ。仮に先ほど仕掛けていたとしても、軽くいなされてしまったのではないだろうか。
とはいえ。
いかんせん多勢に無勢だ。活路を開くどころか、ジリジリと押され始めていた。
(——!)
弓を構える姿が視界の端に映った。
息を詰める。
引き絞られた弓弦から、今にも矢が放たれんとした——
その刹那と、射手を含め数人が黒い炎に包まれたのとは同時だった。
「随分賑やかだと思ったら、案の定だったのね」
軽く紗をなびかせて。
颯爽と宵花が言い放つ。
「い、
いったん退け!
退けー‼」
撤収の判断は素早くなされた。
けしかけてきたのと同じ者の号令で、残された何人かが我先と引き上げてゆく。
「威勢の割には肝っ玉は小さかったな」
「とは言え、此れで見逃して呉れる積りも無いでしょうね。直ぐに次の追手が掛かるわ。
買い出しは何の位済んだ?」
「水以外は」
「早く荷を纏めて出たい所だけど、水が無いのは困ったわね」
「ここから半日ほどの所にオアシスがある。そこまで持つのならソッチにするって手もあるぜ。案内しようか?」
宵花が目顔で問うてくる。ファルーズは頷いた。
得体の知れない所はあるけれども、敵でないことは確かだろう。信用していいはずだ。
「決まったな。
……ところで嬢ちゃん。さっきの魔法、あんた何者だい?」
「其れを知ってる貴方こそ何者?」
「敵わないな」喉元を穿つような切り返しに男は肩をすくめ、
「んじゃ、とっとと行動に移しますか」
急いで宿を引き払い、テウスと名乗った男と落ち合う。
その、まさに落ち合った所で。
物陰からの不意の一打を、宵花が受けた。
反応からの応戦は生半な腕なら太刀打ちできる類のものではなかったが、向こうもそれなりの使い手を用意したらしい。そのまま両者は激しい攻防へと移る。
「とっさに疑いたくもなるだろうが」
構えながら、テウス。
「オレも包囲の標的にされてるって事をぜひ分かってもらいたい、
な!」
飛んできた矢を払いざまの投剣で射手を沈黙させる。その隙を狙った切っ先をファルーズがあしらった。
視線を走らせ、状況を確認する。
(湧いて出てきたみたいだな)
いつの間に。
またも囲まれてしまっていた。
もっとも、あからさまにローブを身に着けていなければ見分けがつくものではない。ここまでにすれ違った誰か、周囲の露店主の誰かが信者であったとして、気づかなければさもありなんというものだろう。勘の鋭い宵花は何かを感じ取っていたのかもしれないが。
「こんな往来で襲ってくるなんて!」
「ココでは町中に連中の集会所があるくらいだからな。堂々としたもんさ」
状況は押しつ押されつ、だったけれども。
先程よりは良い流れのように思えた。
程なくして。
「こっちだ!」
テウスが突破口を開く。
「宵花!」
釘付けになって動けない彼女と敵との間に、強引に割って入る。
鈍い音と衝撃。
仕舞ったと思ったがそのまま勢いでに押し返し、手を取る。
すかさず追撃の刃が迫るが、それはテウスの投擲によって軌道を逸らされた。
駆ける。
が……。
悪いことに、逃げ道の先には建物が立ち塞がっていた。
左右も壁。
完全に袋小路だった。
追手はすぐそこまで迫ってきている。
「追い詰められたわね」
「まあ粘ってれば大抵の事はナントカなるさ」
テウスが嘯く。落ち着き払ったものだった。
何か手があるのだろうか。
(と、見せかけてただのハッタリってことも十分ありそうだけど)
いかにも不敵な横顔を窺う。
とまれ、虚仮威しなのだとしても乗っておいて損はない。
上手く行くことをを願いつつ、なるべく余裕然と対する。
睨み合いつつも、その距離はジリジリと狭まってきていた。
(あと十二、
いや、
十歩……)
テウスは粘っていれば、などと言うが、普通に考えれば時間を掛ける程こちらの方が不利だ。相手の戦力がどれほどのものかは知れないが、こちらより大人数であることは確かなのだから。
一触即発
ちょっとした均衡の崩れで、事態は動く——
ドォン、
と。
軽い地響きと、派手な爆音。
それは発動の機を計っていた宵花の魔法、ではなく。思いがけない方面からやってきた。
タライの水を浴びせ掛けられるような滅茶苦茶な水が頭上から降り注ぐ。
「行くぞ!」
騒乱と混乱の間を縫って。
滑り込んだ先は、まさに渦中狂乱の水路の中だった。
無我夢中で泡立つうねりを掻き分け、テウスの後ろに食らい付く。
どうやら水路の水を管理する魔法に異常を来したらしい。魔法が不安定化している影響が、今回は彼らにとって良い方に働いてくれたようだ。
「ふー。
何とかお互いはぐれずに済んだな」
声を潜めて、テウス。
ここは主水路から分岐して伸びている地下水路の一つのようだった。主水路はおおむね街中を流れているが、その他の水路の多くはこうして暗渠化して通されているのだという。人の行き来が前提ではないので狭苦しいが、整備の用のためだろう。通れなくもない造りになっていた。
「…………
追って来ては居ない様ね」
「とはいえ、バレてないって事にはならない。だからコレを使って郊外に出ることはしない」
「裏をかくって訳ね」宵花がうなずく。
「取り敢えず目的のトコまで移動して、上が落ち着いた頃合い
——そうだな、丁度次の鐘が鳴るくらいか。そしたら表に出るぞ」
「なんか、冷えてきたよね」
くしゃみを押し殺した宵花を気遣う。
ただでさえ日の射さない地下は冷える。テウスの風の魔法で幾らかびしょ濡れの状態からマシにはなっていたが、冷たさから逃れられるほどには乾いていなかった。
急場にしては幸い、重要なものを流してしまわずに済みはしたものの、こう濡れてはせっかく買ったものもいくつか駄目になってしまったことだろう。
「すごいな。
あれだけ強引な扱いをしたのに、刃こぼれひとつない」
待ちついでの剣の点検に戻り。思わず、ファルーズは感嘆した。
割って入った時のことだ。あれは、我ながら下手を打った。折れてしまってもおかしくない感触だった。
補修か、買い替えか。なんらかの処置が必要と覚悟していたのだが。
「其れも、それなりに名剣なのだと思うわ。でも由緒曰くのある剣程じゃないと思うから、気を付けて」
由緒曰くのある剣。
リヴァテウムのことを言っているのだろう。わざわざこんな回りくどい言い方をしたのは、もう一人を用心したからに違いない。
「へえ。家宝か何かなのかい?」
見透かしたように。問いは、どちらかというと持ち主である彼というよりも宵花に向けられているようだった。
テウス。
敵ではない。
そこは信じていいだろう。
けれど胡散臭さは抜けないし、それに、
(なんか、妙な鋭さがあるというか……)
枯れ尾花の例もある。気の回し過ぎかもしれないが。
雰囲気でついつい親しんでしまいそうになる。けれど、どうしても、この人を上辺だけで捉えることにためらいがあった。だから、少し予防線を張っておくぐらいが正解、なのだろう。
さて、ここは彼が適当に言いつくろうべきか。
わずかに迷っている内に、当人が言葉を継いだ。
「そう警戒すんなって。怪しいけど悪い奴じゃないから」
「怪しいって部分は否定しないんだ……」呆れをにじませて、ファルーズ。
「そりゃそうさ。自分がどう見られてるかってぐらいの自覚はある。いい大人だからな」
「……養母に授かったのよ。旅立つ時に」
「嬢ちゃん、やっぱ良いトコのお嬢さんなんだな」
「宵花は剣にも詳しいの?」
家族の話が出るのは初めてのことだった。無論、興味をひかれなかった訳ではないのだが、これ以上話を広げるつもりは無いだろう。
そう踏んで、別の方向に話題を振る。それに実際、つねづね言動からそう感じることがあった。あまり馴染みがないという刺突向きの剣、リヴァテウムの扱いだって見事なものだ。
「まあ、それなりに付き合いが有るから。其れに、全然追い付いてない。十全の腕前だったら、あんなに苦戦為る事も無かったわ」
「そんな事ない。宵花は十分すごいよ!だって君は、僕と同い年くらいじゃないか」
素直な賛辞に複雑な笑みを見せると、宵花は首を振った。
「些とも凄くなんか無いのよ……」
「あー、イイ感じのトコ済まないんだが」わざとらしい咳払いを挟んで、テウス。「そもそも二人は何で旅なんか?生業ってワケじゃなさそうだし」
「訳有って帰る途中なの。彼は護衛」
「にしちゃ、嬢ちゃんの方が腕が立つようだが」
「僕が頼んだんです。一度町の外を見てみたいと」
「なるほど」
「貴方の自己紹介は為て呉れないの?」
「もったい付けるようで悪いが、もうそろそろ頃合いだ。続きはまた後でな」
言葉尻に被さるように、こもった鐘の音が耳に届く。
テウスは二人の腕を足場にすると、井戸の蓋をちょっと押し上げた。
間の悪いことに。
ちょうど水を汲もうとしていたのだろう。
女性が軽く悲鳴を上げて後ずさった。
他にも人がいるらしい。
僅かなざわめきが起こる。
しかしテウスは平気な様子で堂々と井戸を出た。
ファルーズも続き、残った宵花に手を貸す。
テウスは周りにいた数人ににこやかに笑いかけると、血相を変えて飛んできた首長の館の門番に応じた。
「大丈夫かしら」
宵花の懸念はもっともだった。ここで騒ぎになってしまっては元も子もない。
が。
案に相違して。
門番はテウスが何かを見せ二言三言喋ると、あっさりと引き下がった。
(どうなってるんだ?)
この人のことだ。隠し球の一つや二つ持っていてもおかしくはないが……。
気にならないでもない。けれど、追求をしたところで正直に話はしないだろう。
だから口に出したのは、もっと実用的な問いだった。
「首長に知られるような真似をして良いんですか?」
場を離れながら。声を潜めて、ファルーズ。
首長とフィーヴァシルフェが近しい関係にあるならば、ほどなく身元が割れてしまってもおかしくはない。
「ん?
ああ、
ココの首長は連中に対する危機意識がないってだけで、別に味方ってワケじゃないからな。ここから足がつく可能性は低いだろうよ」
少し、言葉を切り。宵花を見やる。
キラトーの北西、首長館近くに設けられた門は目と鼻の先だった。
「こう強行軍じゃ、君みたいな女の子には酷だろうが——」
「気遣いは無用よ。慣れて居るから」
みなまで言わせず、宵花。
テウスは短く口笛を吹き、
「見かけによらずタフなお嬢さんだ」
「しかしお前さん、何やらかしたんだ?」
オアシスへと向かう道道。
追手は来ないと判断したこともあるのだろう。歩調を緩めたテウスが口を切った。
「それを知りたいのは僕の方ですよ」うんざりと首を振る。
本当に、いい迷惑だった。
「そりゃ、確かに僕の町にも信者はいましたけど、僕自身は特に関わりはなかったですし。何だか知らない内に目を付けられてしまっていたみたいで。急に町に押してきたんです」
宵花とのくだりは極力省いて。マガディからここまでの一部始終を話して聞かせる。
改めて向き合うと、なんとも言えず胸が痛んだ。普段は見ないようにしている傷口を見るように……。
(みんなは、兄さん達は無事だろうか…………)
遠く、思いを致す。祈るような心地で。
「ふむ……。
お前さん、名前は?」
てっきり承知しているものとばかり思っていたが。案外、素性の知れないこの人は彼について多くを知らないらしい。
「マラド。ファルーズ・マラドです」
実は故郷の伝統で書類上はもう少し長いのだけれども、普通はわざわざ名乗りに入れない。テウスもそこまで求めてはいないだろう。
「マラド、ね……。
その髪と目の色ってことは生粋のダカンジっ子じゃないのか?」
ターバンから覗くテウスよりも色の薄い、淡い金の色の髪をいじりながら。ファルーズは思わず苦笑を浮かべる。
この浅葱色の目と併せて、ダカンジでは一般的な組み合わせではなかった。それでもニモタータやディナージのような人の交流が盛んな大都市ならそう目立つこともないのだろうが、特にこの辺りの人は大抵髪も目も黒で、薄くてもせいぜい茶が相場だった。肌の色が薄めなのは曽祖父の血縁であれば同じようなものだが、こうまで異質なのは彼一人だ。
「おっと、気を悪くさせちまったか?悪いな」
「いえ、良いんです。
ひいお爺さんによると、僕は高祖母に似たんじゃないかって。フィオナ・マクラオドがどんな見た目だったのか分からないから、確かめようもないのですが」
「ああ、マクラオド!
……って、お前さん、あの、英雄フィオナ・マクラオドの子孫なのか!」
「だ、そうです。ひいお爺さんによれば。あんまり信じている人はいませんが」
「ふぅん……。
なるほどなるほど。
いや、オレは信じるぜ」ばしばしとファルーズの肩を叩いてくる。
「はあ……」
なんだか一人で納得して舞い上がっているテウスに戸惑うばかりだったが。ふと思い至って、
「もしかして、フィーヴァシルフェとフィオナに何か関係が?」
「お、なかなか鋭いな。
フィーヴァシルフェはク=ラデスの、まあ、亡霊のようなものだからな。とりわけフィオナとレベッカを敵視している。レベッカもそれが命取りになっちまったわけだし」
「ク=ラデスってあのジェラルド・メイヤーズが組織したっていう?」
「良く知ってるな」
「高祖母の話も曽祖父からよく聞きましたから。でも、それが何で宗教に?」
「ク=ラデスと言ってもデキル奴はあらかた処分されちまったからな」肩をすくめる。
「イロイロこじらせた結果、信仰の世界へ——ってことらしい」
「寄って立つ物を根刮ぎ奪われて仕舞った彼らの支えに成る物は、もう、其れしか無かったのね……」宵花が瞳を伏せる。
「でも、何で僕だけなんです?」
一族すべて、ではなく。
しかも、ロディック王国には本家もあるはずだ。強いて一人を選ぶのであれば、普通は本家当主とかにいきそうなものだが……。
(「長子の血筋」にこだわりが?
……でもそれだと、僕一人に絞る理由にはならないな)首をひねる。
(もしかして「分家の末子」に特別な意味を見出している、とか?)
「それはさすがに、連中に聞いてみなけりゃ分からないな」微苦笑する。
「随分詳しいのね」
「一応、ミアルカ人だからな」射通すような宵花の目差を真っ向から受け止め、「お国の歴史はそれこそ、ものの区別も怪しい子供の時分から叩き込まれるさ。四英雄のこともな」
「其れ以外にも可成通じて居る様だけれど」
「そりゃ、それが商売みたいなものだからな。
さて」
足を止める。
行く手には目的のオアシスが見えてきていた。
「オレが案内できるのはここまでだ。
ニモタータに行きたいんだったな。なるべく人目に付かないルートを教えてやるよ」
地図を示し、テウスは丁寧に説明をしてくれた。
「色々とありがとうございます、テウスさん」
「なに。大した事じゃないさ。
じゃあ、またな」
さっと、一言残すと。
テウスは風のように去っていったのだった。
マガディだけではない。
周囲の町も、道も、渓谷に沿って造られている事が多い。足場の悪い箇所もある。
かすかな光だけを頼りに進むのは無謀そのもので、少しでも遠くに遠ざかりたい気持ちとは裏腹に、掛けた時間に対して進みは目眩のするほど遅々としたものだった。これでは、大っぴらに明かりをつける事もできる追手の方が却って有利なぐらいだろう。
悪条件の中宵花は気丈に頑張っていたが、すり減るばかりの神経に彼もそろそろ限界だった。
休めそうな場所を見つけて、倒れ込むように横になる。
次に意識が戻ったのは、もう昼も近かろうかという頃合いだった。
「目が覚めた?
軽くお腹に入れたら直ぐに出立為ましょう。日が有る内に成る可く離れて置かないと」
「宵花、まさか休んでないの⁉」
「そんな事無いわ。体力が回復する程度には眠ったわよ。
然うね、でも、今夜は先に休ませて頂戴」
「もちろんだよ。
何か、ごめん」腑甲斐なさに腹が立つ。
「良いのよ。気に為ないで。
慣れてるから」
ファルーズは押し黙り。
ひたすら淡白な食事を取り終えると、口を開いた。
「僕は、これからどうすればいい?」
「本来、ラーベに見える決まった道は無い。ラーベに呼ばれた者丈が自然と辿り着く様に成って居るの。けれど今、其れは鎖され固定されて居る。だから先ずは、道を開く所からね」
告げる彼女はどこか、ひやりとした静謐さを纏っていた。
手を伸ばせば触れられるほど近くにいるのに、急に壁ができてしまったようで……
込み上げてくるものを押し戻すように、ファルーズは言葉を発した。
「君は——」どうしてそんなことを知っているのか。
問おうとしたところで、宵花が身を潜めるよう促す。
間もなく、彼らが休んでいる窪みの天井に当たる道を、二人組が通って行った。
彼ら、
いや、
彼を探しているようだ。フィーヴァシルフェの連中に違いない。
「山狩……。
随分念入りね。
……此の辺りで一番近い大きな街は?」
「まぎれられる程度にって事だよね?そうなると……
麓のキラトーまで無いかなぁ」
「此処から其処迄町や村を迂回為るルートは?」
「……大丈夫。
行けると思う」
「頼りに為て居るわ、ファルーズ」
微笑んで、宵花はそう言った。
宵花の作戦は功を奏し。ろくに整備もされていない山道を四苦八苦しながら下山するまでの間再び追手の影を感じることもなく、どうにか麓まで辿り着くことができた。
この先はまず、リュクワを目指すという。道を開くのに必要な情報があと二つ欠けていて、それを知るための当てがあるのだと、宵花は言った。
「ここからの最短経路だと隊商路沿いにニモタータに出て、そこから目指していく感じかな」
頭の中にざっとした地理を思い浮かべて、ファルーズ。
「然う。じゃあニモタータ迄の道程は任せたわ。其の先は、わたしが何とか出来ると思う。
後は、追手に邪魔されない事を祈りましょう」
「そうだね。僕もさすがに砂漠の隊商路を通らずに行く方法は知らないし。連中、そんなにしつこくないと良いんだけど……」
フィーヴァシルフェがどういう組織なのかそれほど詳しくはないが、どうもそれほどまとまりのある連中でもないらしい。彼を狙う動きがマガディ周辺の団体の局所的な動きだったのなら、なんの事はないのだが。
「ねえ、宵花」
なんとなく、聞き辛い気がして。
けれども、今しかないような予感もして。
足を止め、乾いた唇を湿らせると。山狩のせいで聞きそびれて以来、ずっと宙に浮いたままになっていた疑問を、ファルーズは再度問い直した。
「寧ろ、何故知らないの?」
しばし彼を見つめた後、宵花。
(えっ。
これってもしかして、常識?)
ファルーズは一瞬、本気で悩む。
そんな彼の様子に構わず、宵花は淡々と続けた。
「わたしは貴方達が忘れて仕舞った事を覚えて居る。
唯其丈の事よ」
ついと。鈴の音の尾を引いて。
先に立って歩き出す。
これが初めてではない。
こうして、時折。
宵花は彼を突き放すような言動をとる事があった。
先行する少女の華奢な背中を見つめる。
彼女は確かにここに居るのに。
どうしてか。
彼女だけが世界から浮いているように見える事があった。
(違う。
そうじゃない)
一線を引いているのは、彼女の方なのだ。
彼に対してだけではなく。
(それが、何だか)
無性に哀しかった。
唐突に。
それは、なんの前触れすらなく。
朝の、まだ穏やかな陽射しの中に。蜃気楼のように。
不意に、現れた。
「まさか、
そんな……」
それは、
その人は、
後ろ姿ではあったが。
黒一色に装われた、スラリとした佇まい。
祖父の話に思い描いてきた姿が重なった。
いつまでも動かない彼を不審に思ったのだろう。
宵花が振り返る。
「如何為たの?」
つられるように、少し遅れて。
その人も、彼の方を向いた。
(英雄、レベッカ……!)
驚きは、言葉にならなかった。
何故?
どうして?
どうやって?
混乱し、渦のように駆け巡る疑問にめまいのような眩みを覚えつつ。
それでも、何とか問い掛けに応じようと生唾を飲み込み、どうにか言葉を絞り出す。
「いや、君の後ろに突然人が現れたんだ。ほら、前に見せただろう?肖像画。あの人だよ」
答えて、気付く。
これは説明を要するようなことではない。振り返った彼女には、訳が分かったはずだ。もし彼と同じものが見えているのであれば。
果たして。
「わたしには見えないわ」
それでも、生真面目に彼に見えている世界を共有しようとしたようだったが。
ややして、首を振り振りこう言った。
「幻覚よ。
疲れて居るんだわ、屹度」
(そうかなぁ)
ファルーズは首をひねる。
確かに疲れはある。けれど眠れない程ではないし、しかも、彼の中の英雄レベッカのイメージといったら肖像画の姿で、もっと若い頃、同い年くらいの姿など意識した覚えはない。
心の中に無いものが現れる
そんな幻覚など、有り得るだろうか。
釈然とはしない。
が、分からないものを考えても仕方がない。確かなことは、英雄レベッカはとうにもうこの世を去っているということだ。
促す彼女に頷きかけ、駆け出す。
チラと、まだそこに在る人に視線を置いて。
宵花と合流する。
「過去の、亡霊」
ぼそりと。
呟かれたそれは低く、くぐもっていて。
何と言ったのか。
ファルーズの耳にはっきりと届くことはなかった。
「追われて居るのなら、此の恰好は止めた方が良いわね」
キラトーに入り。宿を確保して、一息つくと。
宵花はそう切り出した。
「確かに」
主な隊商路から外れているとはいえ人の行き来が珍しくはないここキラトーにあっても、宵花の身なりはひときわ異彩を放っている。目を引くような真似を避けるのであれば、その対応は至極真っ当なものであった。
(けど)
つくづくと少女を眺める。
(本当に、まるで、宵花のためだけにあつらえたみたいだ……)
その装束はよく彼女の雰囲気に馴染み、引き立てていて——
つまり、一言で言えば、すごく似合いだったので、少し残念ではあった。
「でも君は——
綺麗だから。紗を被っていても目についてしまうかもしれないね」
「有り難う」少し目を見開くと、微笑んで、宵花。
「けれど然うだと為ても、案外目立たない物よ」
宵花が服を見繕っている間に、彼は食料その他こまごまとしたものの買い出しを行うことにした。
市場で別れると、目当ての店を巡っていく。
回り道のおかげで余計に食料を消費してしまっていたし、これからも同様のことが起こるかもしれないのだ。できる限り余分に確保しておく必要があった。
「さすがに人が多いよな」
ごった返す市場の人波をかき分けるようにして進みながら、ファルーズ。
時間帯もあるのだろうが、これでもダカンジの中では中ぐらいの規模だというのだから、チェレンやニモタータなど一体どうなっているのやら。想像がつかなかった。
「ええっと、水は……」
山の上はそうでもなかったが、麓で生活を営むダカンジの集落の多くにとって、水は切実な貴重品だ。西の山脈よりの湧水に恵まれるここ、キラトーといえど例外ではない。ゆえに、よそ者が水を使う際にはいくつかの決まりを守らねばならなかった。
例えば、今のように水を汲みたい場合。勝手に井戸の水を利用することは許されない。定められた場所で代金を支払った上で汲むことになっていた。
人心地ついた気分で市場を後にしたファルーズは、一つ向こうの通りに出るために路地を抜けようと——
「おっと。そっちは行かない方が無難だぜ」
出し抜けに、肩をつかまれ。
目の前の街路を、フィーヴァシルフェのローブ姿が連れ立って横切っていく。
「これから連中の集会があるらしくてな。人通りが多くなる。見られないに越したことはないだろ?ファルーズ」
「どうして——!」
驚き、振り返る。
パッと手を離すと、男がひらひらと手を振った。
身なりはここいらのごくごくありふれたものだが、薄めの瞳と髪の色から一見して地元の者でないと知れる。向けられた邪気のない笑みはいっそ人好きすらする程で、思わず気安くなってしまいそうになるが……。
(むしろ、こういう手合の方が危険って事もあり得るよな)
じりりと、重心を整えて。
腰に提げた剣を意識する。
「そう構えるなって。オレは——」
「飛んで火に入る夏の虫とはこの事ですな」
割って入った声は背後から、つまり、たった今出ようとしていた路地の先から聞こえてきた。
どうやら事態は望まぬ方向に動いていたようだ。
道行を塞ぐように固まっていたのは、できれば馴染みたくなかった杏子色の長衣。
「スーヴィルヴァへの捧げ物だ。少年の方はくれぐれも殺すでないぞ」
「あらら。見つかっちまってたか」
戻る道も絶たれたからかもしれないが。
なかば巻き込まれた形になった男もその場に留まり応戦してくれるようだった。心得もある、というより、彼よりも上手かもしれない。体術を織り交ぜつつ的確に捌くその動きには無駄がなく、これといった隙もない。攻守の使い分けも巧みだ。仮に先ほど仕掛けていたとしても、軽くいなされてしまったのではないだろうか。
とはいえ。
いかんせん多勢に無勢だ。活路を開くどころか、ジリジリと押され始めていた。
(——!)
弓を構える姿が視界の端に映った。
息を詰める。
引き絞られた弓弦から、今にも矢が放たれんとした——
その刹那と、射手を含め数人が黒い炎に包まれたのとは同時だった。
「随分賑やかだと思ったら、案の定だったのね」
軽く紗をなびかせて。
颯爽と宵花が言い放つ。
「い、
いったん退け!
退けー‼」
撤収の判断は素早くなされた。
けしかけてきたのと同じ者の号令で、残された何人かが我先と引き上げてゆく。
「威勢の割には肝っ玉は小さかったな」
「とは言え、此れで見逃して呉れる積りも無いでしょうね。直ぐに次の追手が掛かるわ。
買い出しは何の位済んだ?」
「水以外は」
「早く荷を纏めて出たい所だけど、水が無いのは困ったわね」
「ここから半日ほどの所にオアシスがある。そこまで持つのならソッチにするって手もあるぜ。案内しようか?」
宵花が目顔で問うてくる。ファルーズは頷いた。
得体の知れない所はあるけれども、敵でないことは確かだろう。信用していいはずだ。
「決まったな。
……ところで嬢ちゃん。さっきの魔法、あんた何者だい?」
「其れを知ってる貴方こそ何者?」
「敵わないな」喉元を穿つような切り返しに男は肩をすくめ、
「んじゃ、とっとと行動に移しますか」
急いで宿を引き払い、テウスと名乗った男と落ち合う。
その、まさに落ち合った所で。
物陰からの不意の一打を、宵花が受けた。
反応からの応戦は生半な腕なら太刀打ちできる類のものではなかったが、向こうもそれなりの使い手を用意したらしい。そのまま両者は激しい攻防へと移る。
「とっさに疑いたくもなるだろうが」
構えながら、テウス。
「オレも包囲の標的にされてるって事をぜひ分かってもらいたい、
な!」
飛んできた矢を払いざまの投剣で射手を沈黙させる。その隙を狙った切っ先をファルーズがあしらった。
視線を走らせ、状況を確認する。
(湧いて出てきたみたいだな)
いつの間に。
またも囲まれてしまっていた。
もっとも、あからさまにローブを身に着けていなければ見分けがつくものではない。ここまでにすれ違った誰か、周囲の露店主の誰かが信者であったとして、気づかなければさもありなんというものだろう。勘の鋭い宵花は何かを感じ取っていたのかもしれないが。
「こんな往来で襲ってくるなんて!」
「ココでは町中に連中の集会所があるくらいだからな。堂々としたもんさ」
状況は押しつ押されつ、だったけれども。
先程よりは良い流れのように思えた。
程なくして。
「こっちだ!」
テウスが突破口を開く。
「宵花!」
釘付けになって動けない彼女と敵との間に、強引に割って入る。
鈍い音と衝撃。
仕舞ったと思ったがそのまま勢いでに押し返し、手を取る。
すかさず追撃の刃が迫るが、それはテウスの投擲によって軌道を逸らされた。
駆ける。
が……。
悪いことに、逃げ道の先には建物が立ち塞がっていた。
左右も壁。
完全に袋小路だった。
追手はすぐそこまで迫ってきている。
「追い詰められたわね」
「まあ粘ってれば大抵の事はナントカなるさ」
テウスが嘯く。落ち着き払ったものだった。
何か手があるのだろうか。
(と、見せかけてただのハッタリってことも十分ありそうだけど)
いかにも不敵な横顔を窺う。
とまれ、虚仮威しなのだとしても乗っておいて損はない。
上手く行くことをを願いつつ、なるべく余裕然と対する。
睨み合いつつも、その距離はジリジリと狭まってきていた。
(あと十二、
いや、
十歩……)
テウスは粘っていれば、などと言うが、普通に考えれば時間を掛ける程こちらの方が不利だ。相手の戦力がどれほどのものかは知れないが、こちらより大人数であることは確かなのだから。
一触即発
ちょっとした均衡の崩れで、事態は動く——
ドォン、
と。
軽い地響きと、派手な爆音。
それは発動の機を計っていた宵花の魔法、ではなく。思いがけない方面からやってきた。
タライの水を浴びせ掛けられるような滅茶苦茶な水が頭上から降り注ぐ。
「行くぞ!」
騒乱と混乱の間を縫って。
滑り込んだ先は、まさに渦中狂乱の水路の中だった。
無我夢中で泡立つうねりを掻き分け、テウスの後ろに食らい付く。
どうやら水路の水を管理する魔法に異常を来したらしい。魔法が不安定化している影響が、今回は彼らにとって良い方に働いてくれたようだ。
「ふー。
何とかお互いはぐれずに済んだな」
声を潜めて、テウス。
ここは主水路から分岐して伸びている地下水路の一つのようだった。主水路はおおむね街中を流れているが、その他の水路の多くはこうして暗渠化して通されているのだという。人の行き来が前提ではないので狭苦しいが、整備の用のためだろう。通れなくもない造りになっていた。
「…………
追って来ては居ない様ね」
「とはいえ、バレてないって事にはならない。だからコレを使って郊外に出ることはしない」
「裏をかくって訳ね」宵花がうなずく。
「取り敢えず目的のトコまで移動して、上が落ち着いた頃合い
——そうだな、丁度次の鐘が鳴るくらいか。そしたら表に出るぞ」
「なんか、冷えてきたよね」
くしゃみを押し殺した宵花を気遣う。
ただでさえ日の射さない地下は冷える。テウスの風の魔法で幾らかびしょ濡れの状態からマシにはなっていたが、冷たさから逃れられるほどには乾いていなかった。
急場にしては幸い、重要なものを流してしまわずに済みはしたものの、こう濡れてはせっかく買ったものもいくつか駄目になってしまったことだろう。
「すごいな。
あれだけ強引な扱いをしたのに、刃こぼれひとつない」
待ちついでの剣の点検に戻り。思わず、ファルーズは感嘆した。
割って入った時のことだ。あれは、我ながら下手を打った。折れてしまってもおかしくない感触だった。
補修か、買い替えか。なんらかの処置が必要と覚悟していたのだが。
「其れも、それなりに名剣なのだと思うわ。でも由緒曰くのある剣程じゃないと思うから、気を付けて」
由緒曰くのある剣。
リヴァテウムのことを言っているのだろう。わざわざこんな回りくどい言い方をしたのは、もう一人を用心したからに違いない。
「へえ。家宝か何かなのかい?」
見透かしたように。問いは、どちらかというと持ち主である彼というよりも宵花に向けられているようだった。
テウス。
敵ではない。
そこは信じていいだろう。
けれど胡散臭さは抜けないし、それに、
(なんか、妙な鋭さがあるというか……)
枯れ尾花の例もある。気の回し過ぎかもしれないが。
雰囲気でついつい親しんでしまいそうになる。けれど、どうしても、この人を上辺だけで捉えることにためらいがあった。だから、少し予防線を張っておくぐらいが正解、なのだろう。
さて、ここは彼が適当に言いつくろうべきか。
わずかに迷っている内に、当人が言葉を継いだ。
「そう警戒すんなって。怪しいけど悪い奴じゃないから」
「怪しいって部分は否定しないんだ……」呆れをにじませて、ファルーズ。
「そりゃそうさ。自分がどう見られてるかってぐらいの自覚はある。いい大人だからな」
「……養母に授かったのよ。旅立つ時に」
「嬢ちゃん、やっぱ良いトコのお嬢さんなんだな」
「宵花は剣にも詳しいの?」
家族の話が出るのは初めてのことだった。無論、興味をひかれなかった訳ではないのだが、これ以上話を広げるつもりは無いだろう。
そう踏んで、別の方向に話題を振る。それに実際、つねづね言動からそう感じることがあった。あまり馴染みがないという刺突向きの剣、リヴァテウムの扱いだって見事なものだ。
「まあ、それなりに付き合いが有るから。其れに、全然追い付いてない。十全の腕前だったら、あんなに苦戦為る事も無かったわ」
「そんな事ない。宵花は十分すごいよ!だって君は、僕と同い年くらいじゃないか」
素直な賛辞に複雑な笑みを見せると、宵花は首を振った。
「些とも凄くなんか無いのよ……」
「あー、イイ感じのトコ済まないんだが」わざとらしい咳払いを挟んで、テウス。「そもそも二人は何で旅なんか?生業ってワケじゃなさそうだし」
「訳有って帰る途中なの。彼は護衛」
「にしちゃ、嬢ちゃんの方が腕が立つようだが」
「僕が頼んだんです。一度町の外を見てみたいと」
「なるほど」
「貴方の自己紹介は為て呉れないの?」
「もったい付けるようで悪いが、もうそろそろ頃合いだ。続きはまた後でな」
言葉尻に被さるように、こもった鐘の音が耳に届く。
テウスは二人の腕を足場にすると、井戸の蓋をちょっと押し上げた。
間の悪いことに。
ちょうど水を汲もうとしていたのだろう。
女性が軽く悲鳴を上げて後ずさった。
他にも人がいるらしい。
僅かなざわめきが起こる。
しかしテウスは平気な様子で堂々と井戸を出た。
ファルーズも続き、残った宵花に手を貸す。
テウスは周りにいた数人ににこやかに笑いかけると、血相を変えて飛んできた首長の館の門番に応じた。
「大丈夫かしら」
宵花の懸念はもっともだった。ここで騒ぎになってしまっては元も子もない。
が。
案に相違して。
門番はテウスが何かを見せ二言三言喋ると、あっさりと引き下がった。
(どうなってるんだ?)
この人のことだ。隠し球の一つや二つ持っていてもおかしくはないが……。
気にならないでもない。けれど、追求をしたところで正直に話はしないだろう。
だから口に出したのは、もっと実用的な問いだった。
「首長に知られるような真似をして良いんですか?」
場を離れながら。声を潜めて、ファルーズ。
首長とフィーヴァシルフェが近しい関係にあるならば、ほどなく身元が割れてしまってもおかしくはない。
「ん?
ああ、
ココの首長は連中に対する危機意識がないってだけで、別に味方ってワケじゃないからな。ここから足がつく可能性は低いだろうよ」
少し、言葉を切り。宵花を見やる。
キラトーの北西、首長館近くに設けられた門は目と鼻の先だった。
「こう強行軍じゃ、君みたいな女の子には酷だろうが——」
「気遣いは無用よ。慣れて居るから」
みなまで言わせず、宵花。
テウスは短く口笛を吹き、
「見かけによらずタフなお嬢さんだ」
「しかしお前さん、何やらかしたんだ?」
オアシスへと向かう道道。
追手は来ないと判断したこともあるのだろう。歩調を緩めたテウスが口を切った。
「それを知りたいのは僕の方ですよ」うんざりと首を振る。
本当に、いい迷惑だった。
「そりゃ、確かに僕の町にも信者はいましたけど、僕自身は特に関わりはなかったですし。何だか知らない内に目を付けられてしまっていたみたいで。急に町に押してきたんです」
宵花とのくだりは極力省いて。マガディからここまでの一部始終を話して聞かせる。
改めて向き合うと、なんとも言えず胸が痛んだ。普段は見ないようにしている傷口を見るように……。
(みんなは、兄さん達は無事だろうか…………)
遠く、思いを致す。祈るような心地で。
「ふむ……。
お前さん、名前は?」
てっきり承知しているものとばかり思っていたが。案外、素性の知れないこの人は彼について多くを知らないらしい。
「マラド。ファルーズ・マラドです」
実は故郷の伝統で書類上はもう少し長いのだけれども、普通はわざわざ名乗りに入れない。テウスもそこまで求めてはいないだろう。
「マラド、ね……。
その髪と目の色ってことは生粋のダカンジっ子じゃないのか?」
ターバンから覗くテウスよりも色の薄い、淡い金の色の髪をいじりながら。ファルーズは思わず苦笑を浮かべる。
この浅葱色の目と併せて、ダカンジでは一般的な組み合わせではなかった。それでもニモタータやディナージのような人の交流が盛んな大都市ならそう目立つこともないのだろうが、特にこの辺りの人は大抵髪も目も黒で、薄くてもせいぜい茶が相場だった。肌の色が薄めなのは曽祖父の血縁であれば同じようなものだが、こうまで異質なのは彼一人だ。
「おっと、気を悪くさせちまったか?悪いな」
「いえ、良いんです。
ひいお爺さんによると、僕は高祖母に似たんじゃないかって。フィオナ・マクラオドがどんな見た目だったのか分からないから、確かめようもないのですが」
「ああ、マクラオド!
……って、お前さん、あの、英雄フィオナ・マクラオドの子孫なのか!」
「だ、そうです。ひいお爺さんによれば。あんまり信じている人はいませんが」
「ふぅん……。
なるほどなるほど。
いや、オレは信じるぜ」ばしばしとファルーズの肩を叩いてくる。
「はあ……」
なんだか一人で納得して舞い上がっているテウスに戸惑うばかりだったが。ふと思い至って、
「もしかして、フィーヴァシルフェとフィオナに何か関係が?」
「お、なかなか鋭いな。
フィーヴァシルフェはク=ラデスの、まあ、亡霊のようなものだからな。とりわけフィオナとレベッカを敵視している。レベッカもそれが命取りになっちまったわけだし」
「ク=ラデスってあのジェラルド・メイヤーズが組織したっていう?」
「良く知ってるな」
「高祖母の話も曽祖父からよく聞きましたから。でも、それが何で宗教に?」
「ク=ラデスと言ってもデキル奴はあらかた処分されちまったからな」肩をすくめる。
「イロイロこじらせた結果、信仰の世界へ——ってことらしい」
「寄って立つ物を根刮ぎ奪われて仕舞った彼らの支えに成る物は、もう、其れしか無かったのね……」宵花が瞳を伏せる。
「でも、何で僕だけなんです?」
一族すべて、ではなく。
しかも、ロディック王国には本家もあるはずだ。強いて一人を選ぶのであれば、普通は本家当主とかにいきそうなものだが……。
(「長子の血筋」にこだわりが?
……でもそれだと、僕一人に絞る理由にはならないな)首をひねる。
(もしかして「分家の末子」に特別な意味を見出している、とか?)
「それはさすがに、連中に聞いてみなけりゃ分からないな」微苦笑する。
「随分詳しいのね」
「一応、ミアルカ人だからな」射通すような宵花の目差を真っ向から受け止め、「お国の歴史はそれこそ、ものの区別も怪しい子供の時分から叩き込まれるさ。四英雄のこともな」
「其れ以外にも可成通じて居る様だけれど」
「そりゃ、それが商売みたいなものだからな。
さて」
足を止める。
行く手には目的のオアシスが見えてきていた。
「オレが案内できるのはここまでだ。
ニモタータに行きたいんだったな。なるべく人目に付かないルートを教えてやるよ」
地図を示し、テウスは丁寧に説明をしてくれた。
「色々とありがとうございます、テウスさん」
「なに。大した事じゃないさ。
じゃあ、またな」
さっと、一言残すと。
テウスは風のように去っていったのだった。
0
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