1916年帆装巡洋艦「ゼーアドラー」出撃す

久保 倫

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出撃

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副長クリンク 科学は進歩した!
航海長ロイデマン 空に飛行機が飛び
拿捕隊長プライス 地に戦車が駆け巡る
機関長クラウス 海原には、超弩級の鋼鉄の艨艟が浮かび
砲術士キルヒアイス 艨艟は巨砲を持って闘う
機関助手シュミット 艨艟が喰らうは石炭から石油に変わった。
掌帆長パーミェン しかれど我らが船「ゼーアドラー」が喰らうは。
下士官エルトマン 風!
軍医ピーチ博士 風だ!
ロイデマン 風だぁっ!
クリンク 何故だ!この科学万能の時代に我らが船は何故風を動力とする!?
ルックナー 帆船だからさ!

 ルックナー上手より登場

ルックナー 確かに「ゼーアドラー」は、帆船だ。今時、帆船なんざ貨物船以外運航しちゃいない。風をうまく利用すれば、航海にかかる燃料費を削減できるからな。
ロイデマン それでも今後新たに建造されることはありますまい。
ルックナー そうだ。時代の流れに消え行く船なのは間違いない。残念だがよ。
クリンチ 軍令部でもこの船の存在を狂気の沙汰と言う者は多数います。風を受けねば動けぬ帆船が、自力で勝手気ままに航行する汽船に勝つなど不可能。よって通商破壊戦などできはしないと。
ルックナー お前もそう思うかい?
クリンチ はい。そして同じ考えの者は、自分だけではありません。
ルックナー ははは、世界中にお前のお仲間は、大勢いるのかな?
クリンチ はい
ルックナー 認めたな。撤回は許さねえぞ。
クリンチ 不要です。ドイツのみならず、世界中の国で私は、同士を獲得するでしょう。
ルックナー つまりジョンブルにも獲得するってこった。
クリンチ あっ……。
ルックナー 確かにこの科学万能の時代に帆船で通商破壊戦をやるなど正気の沙汰じゃねえ。だが、それだけに敵の意表をつけるってもんだ。
パーミェン 確かにそうかもしれない。
ロイデマン これから行く海域は、ロイヤルネイヴィーが厳重な封鎖線を構築した海域です。一部には機雷も敷設されている。突破できるとお考えですか?
ルックナー オレ一人じゃ無理だ。お前らの協力を必要とする。
キルヒアイス できるとお考えですか?武装だって強力とは言えません。8.8㎝砲4門だけですよ。
ルックナー できるさ。そもそも船を沈めればいいんであって、人を殺す必要はねえんだからな。
キルヒアイス 殺さないんですか?そんな戦ができますか?
ルックナー そいつは腕次第だ。だがよ、オレはできると信じてる。ちゃんと訓練して狙えば、狙ったところに弾は飛んでいくんだ。大砲ってのはそういうもんだろう。
ロイデマン 殺さないで戦うなんて、新しい発明ですな。
ルックナー お前らが協力してくれればできるさ。オレのためじゃなく、皇帝陛下のために協力してくれ。
プライス 皇帝陛下の御為にですか。
ルックナー そうだ。オレは、お前さん達が皇帝陛下の忠実な軍人であると信じてるぜ。
クリンチ そう言われては逆らえませんな。
ルックナー では行くぞ。まずは、デンマーク西岸沿いに北進し、スカゲラック海峡を目指す。
スカゲラック海峡到達後、進路を西に向ける。
クリンチ 本船をノルウェーの貨物船に偽装するための航路ですな。
ルックナー 話が早くて助かるぜ、副長。
ロイデマン 英国の艦船に発見された場合は?
ルックナー その時は、ノルウェー人に化けてもらう。そのための準備はできているから心配するな。台本は後で配布する。
シュミット あ、あの艦長、や、やっぱり、あ、あれやるんですか?
ルックナー シュミット、お前が作戦の鍵なんだ。準備は終わってる、ジタバタすんな。
シュミット い、いやだぁぁぁぁぁぁっ!!!


 シュミットの絶叫の中、暗転
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