1 / 31
開幕
しおりを挟む
「ゼーアドラーブルグへようこそ!」
救世軍のステージの上手にスポットライトが当てられる。
そこには観客にとって見慣れたドイツ海軍の軍服を着用した男が立っていた。
「ここは南太平洋最後のドイツ領。私は、ゼーアドラーブルグの総督にして、皇帝陛下の忠良なる伯爵、フェリックス・フォン・ルックナー。」
ルックナーと名乗った男は、両手を広げながら口上を述べる。
「さて、私が総督を勤めますゼーアドラーブルグの街並みをご覧いただきましょう。」
ルックナーは、歩みを進める。
「ここは、善良なる領民の住宅街。」
ルックナーは、幕に張りつけられている大小の廃材を用いた小屋の合間を右手で指し示す。
「この辺りがブロードウェイ。こちらがペンシルヴェニア・アヴェニュー。ここら辺がパワリー通り。」
更に歩みを進める。
「街の中心は、私、ルックナーの白亜の邸宅。」
白いキャンパス地のテントにスポットライトが当たる。
「いかがです。伯爵家に相応しい邸宅でしょう。」
そして下手に移動していく。
「そして、忠実なる我が臣下たちの邸宅。」
幕の下手側に張り付けられているやはり廃材を使った小屋を指し示す。
「この中には、教会だってございます。ここからは見えませんが、海岸には無線局だってございます。ゼーアドラーブルグは、絶海の孤島ではありますが、世界の情勢に耳を傾けているのでございます。」
ルックナーは、舞台の中心に移動する。
移動したルックナーの背後に、何かが落下し、大きな音を立てる。
ルックナーは、振り返って拾い上げる。
「ここもドイツ領。本国ライン河畔の人々が英仏の夜間空襲に悩まされているのと同様、ここゼーアドラーブルグも空襲に悩まされております。ココナッツ爆弾ではありますが、当たれば死亡するのに変わりありません。」
そう言いながら、ルックナーはココナッツの模型に口をつける。
「イケる。中のココナッツミルクは貴重な水分です。」
そして、模型を投げ捨てる。
「ココナッツ林の中に住まねばいい?そう、我々もそう思った、海岸に寝ようと思った。だが、今は戦時下。西部戦線同様、海岸ではカニが大挙して夜襲を仕掛けてくる。ゆっくり眠れないので、林の中に邸宅を構えるのです。」
ルックナーは、舞台の中心で腕組みする。
「さて、我が忠実なる臣下と、善良なる領民たちを招きましょう。」
ルックナーの台詞に応じ、舞台の上手から船員たちが整列する。
下手からも、軍服を着用した男達が並ぶ。
「私の右におりますは、我が忠実なる部下達。左におりますは我が善良なる領民達。彼らは私を。」
ルックナーは、右手を広げる。
右の下手側に並ぶ男達が口を揃えて言う。
「皇帝陛下の海賊!」
ルックナーは、左手を広げる。
「海の悪魔!」
上手側の船員たちが口を揃える。
「はは、両極端な呼ばれようです。かくのごとく呼ばれる私がいかにしてこの地の総督になったか。これより語らせていただきましょう。ご静聴賜りますようよろしくお願いいたします。」
ルックナーは、恭しく一礼する。
照明が消され舞台は暗転する。
救世軍のステージの上手にスポットライトが当てられる。
そこには観客にとって見慣れたドイツ海軍の軍服を着用した男が立っていた。
「ここは南太平洋最後のドイツ領。私は、ゼーアドラーブルグの総督にして、皇帝陛下の忠良なる伯爵、フェリックス・フォン・ルックナー。」
ルックナーと名乗った男は、両手を広げながら口上を述べる。
「さて、私が総督を勤めますゼーアドラーブルグの街並みをご覧いただきましょう。」
ルックナーは、歩みを進める。
「ここは、善良なる領民の住宅街。」
ルックナーは、幕に張りつけられている大小の廃材を用いた小屋の合間を右手で指し示す。
「この辺りがブロードウェイ。こちらがペンシルヴェニア・アヴェニュー。ここら辺がパワリー通り。」
更に歩みを進める。
「街の中心は、私、ルックナーの白亜の邸宅。」
白いキャンパス地のテントにスポットライトが当たる。
「いかがです。伯爵家に相応しい邸宅でしょう。」
そして下手に移動していく。
「そして、忠実なる我が臣下たちの邸宅。」
幕の下手側に張り付けられているやはり廃材を使った小屋を指し示す。
「この中には、教会だってございます。ここからは見えませんが、海岸には無線局だってございます。ゼーアドラーブルグは、絶海の孤島ではありますが、世界の情勢に耳を傾けているのでございます。」
ルックナーは、舞台の中心に移動する。
移動したルックナーの背後に、何かが落下し、大きな音を立てる。
ルックナーは、振り返って拾い上げる。
「ここもドイツ領。本国ライン河畔の人々が英仏の夜間空襲に悩まされているのと同様、ここゼーアドラーブルグも空襲に悩まされております。ココナッツ爆弾ではありますが、当たれば死亡するのに変わりありません。」
そう言いながら、ルックナーはココナッツの模型に口をつける。
「イケる。中のココナッツミルクは貴重な水分です。」
そして、模型を投げ捨てる。
「ココナッツ林の中に住まねばいい?そう、我々もそう思った、海岸に寝ようと思った。だが、今は戦時下。西部戦線同様、海岸ではカニが大挙して夜襲を仕掛けてくる。ゆっくり眠れないので、林の中に邸宅を構えるのです。」
ルックナーは、舞台の中心で腕組みする。
「さて、我が忠実なる臣下と、善良なる領民たちを招きましょう。」
ルックナーの台詞に応じ、舞台の上手から船員たちが整列する。
下手からも、軍服を着用した男達が並ぶ。
「私の右におりますは、我が忠実なる部下達。左におりますは我が善良なる領民達。彼らは私を。」
ルックナーは、右手を広げる。
右の下手側に並ぶ男達が口を揃えて言う。
「皇帝陛下の海賊!」
ルックナーは、左手を広げる。
「海の悪魔!」
上手側の船員たちが口を揃える。
「はは、両極端な呼ばれようです。かくのごとく呼ばれる私がいかにしてこの地の総督になったか。これより語らせていただきましょう。ご静聴賜りますようよろしくお願いいたします。」
ルックナーは、恭しく一礼する。
照明が消され舞台は暗転する。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
ソラノカケラ ⦅Shattered Skies⦆
みにみ
歴史・時代
2026年 中華人民共和国が台湾へ軍事侵攻を開始
台湾側は地の利を生かし善戦するも
人海戦術で推してくる中国側に敗走を重ね
たった3ヶ月ほどで第2作戦区以外を掌握される
背に腹を変えられなくなった台湾政府は
傭兵を雇うことを決定
世界各地から金を求めて傭兵たちが集まった
これは、その中の1人
台湾空軍特務中尉Mr.MAITOKIこと
舞時景都と
台湾空軍特務中士Mr.SASENOこと
佐世野榛名のコンビによる
台湾開放戦を描いた物語である
※エースコンバットみたいな世界観で描いてます()
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
If太平洋戦争 日本が懸命な判断をしていたら
みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら?
国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。
真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。
破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。
現在1945年中盤まで執筆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる