27 / 45
27.今度は、その男か?
しおりを挟む
切り付けられそうになった領主様が怒るのは当たり前だ。
それは分かるけど、そんな火種は困る。ここで争いを起こすわけにはいかないんだっ……!!
「……領主様っ…………! あ、あのっ……! ま、待ってっ……やめてくださいっ…………!」
僕はまだ戸惑いながら、オフィガタス様に駆け寄った。
そして、領主様に向き直る。
「あのっ…………お、お怒りはごもっともですっ…………ですがどうかっ……剣を納めてくださいっ……」
だって領主様の剣は、さっきの比じゃない。恐ろしい魔力を持っていて、不気味な光を放っている。剣から漏れ出るくらいの魔力を持っているんだ。さっきはオフィガタス様の剣を受け止めただけだったのに、今度は殺す気かもしれない。
二人を争わせるわけにはいかない…………この領地は、平穏でいてくれなきゃ困るんだ。
けれど間に入った僕を、領主様は睨みつける。彼の周りに幾つもの魔法の弾が現れて、オフィガタス様の方を狙っている。そうして、オフィガタス様の動きを牽制しながら、領主様は、僕だけを睨んでいた。
「…………今度は、その男を庇うのか?」
「え…………?」
その男って…………オフィガタス様の事か?
僕がオフィガタス様と領主様の間に入ったから、そう見えたのか……
だけど、ここで争いが起これば、それは、いずれここを王子が乗っ取る原因になる。そんなことをさせるわけにはいかない。
でも、王子の話なんかしたら、また反逆を疑われたりするかも……それは嫌だ。領主様に疑われたくない。
「え……えっと…………僕はっ……!」
戸惑う僕の方に、領主様は近づいてくる。そして手を握り、彼は僕を引き寄せた。
なに…………? 怒っているのか?
なんでこんなに引き寄せるの!? しかも、背中に手が回ってる!?? な、何されてるんだ!!??
「…………あっ……あの……」
「その男を庇うな…………俺の従者なら、俺だけを守っていればいい……」
「あ…………」
ど……どうしたんだろう。領主様。
なんで僕を抱き寄せてるの??
いや、僕が抱き寄せられるわけがない。
…………もしかして、ひどく怒っているのか?
領主様に仕えているはずの僕が、領主様を襲おうとした人を守ろうとしたように見えたから。だから、抱き寄せてるんじゃなくて、詰め寄っているんだ!!
そんなんじゃないのに……
だけど、そんな言い訳をする余裕すらない。領主様は強く僕の腕を捕まえて、真剣な顔で僕を見下ろしている。
な、なんでそんなに迫ってくるの?? そんなに怒ってるの??
「ご、ごめんなさい…………僕っ……そんなつもりじゃないんですっ…………ただっ…………あのっ……この領地を守りたくて……」
「それは俺の役割だ……俺のことだけ……見ていればいい……」
「は、はい…………」
恐る恐る頷くと、領主様は僕を離してくれた。
「あ…………」
「…………少し下がっていろ。危ないぞ」
「は、はい…………」
それは分かるけど、そんな火種は困る。ここで争いを起こすわけにはいかないんだっ……!!
「……領主様っ…………! あ、あのっ……! ま、待ってっ……やめてくださいっ…………!」
僕はまだ戸惑いながら、オフィガタス様に駆け寄った。
そして、領主様に向き直る。
「あのっ…………お、お怒りはごもっともですっ…………ですがどうかっ……剣を納めてくださいっ……」
だって領主様の剣は、さっきの比じゃない。恐ろしい魔力を持っていて、不気味な光を放っている。剣から漏れ出るくらいの魔力を持っているんだ。さっきはオフィガタス様の剣を受け止めただけだったのに、今度は殺す気かもしれない。
二人を争わせるわけにはいかない…………この領地は、平穏でいてくれなきゃ困るんだ。
けれど間に入った僕を、領主様は睨みつける。彼の周りに幾つもの魔法の弾が現れて、オフィガタス様の方を狙っている。そうして、オフィガタス様の動きを牽制しながら、領主様は、僕だけを睨んでいた。
「…………今度は、その男を庇うのか?」
「え…………?」
その男って…………オフィガタス様の事か?
僕がオフィガタス様と領主様の間に入ったから、そう見えたのか……
だけど、ここで争いが起これば、それは、いずれここを王子が乗っ取る原因になる。そんなことをさせるわけにはいかない。
でも、王子の話なんかしたら、また反逆を疑われたりするかも……それは嫌だ。領主様に疑われたくない。
「え……えっと…………僕はっ……!」
戸惑う僕の方に、領主様は近づいてくる。そして手を握り、彼は僕を引き寄せた。
なに…………? 怒っているのか?
なんでこんなに引き寄せるの!? しかも、背中に手が回ってる!?? な、何されてるんだ!!??
「…………あっ……あの……」
「その男を庇うな…………俺の従者なら、俺だけを守っていればいい……」
「あ…………」
ど……どうしたんだろう。領主様。
なんで僕を抱き寄せてるの??
いや、僕が抱き寄せられるわけがない。
…………もしかして、ひどく怒っているのか?
領主様に仕えているはずの僕が、領主様を襲おうとした人を守ろうとしたように見えたから。だから、抱き寄せてるんじゃなくて、詰め寄っているんだ!!
そんなんじゃないのに……
だけど、そんな言い訳をする余裕すらない。領主様は強く僕の腕を捕まえて、真剣な顔で僕を見下ろしている。
な、なんでそんなに迫ってくるの?? そんなに怒ってるの??
「ご、ごめんなさい…………僕っ……そんなつもりじゃないんですっ…………ただっ…………あのっ……この領地を守りたくて……」
「それは俺の役割だ……俺のことだけ……見ていればいい……」
「は、はい…………」
恐る恐る頷くと、領主様は僕を離してくれた。
「あ…………」
「…………少し下がっていろ。危ないぞ」
「は、はい…………」
74
あなたにおすすめの小説
推し変したら婚約者の様子がおかしくなりました。ついでに周りの様子もおかしくなりました。
オルロ
BL
ゲームの世界に転生したコルシャ。
ある日、推しを見て前世の記憶を取り戻したコルシャは、すっかり推しを追うのに夢中になってしまう。すると、ずっと冷たかった婚約者の様子が可笑しくなってきて、そして何故か周りの様子も?!
主人公総愛されで進んでいきます。それでも大丈夫という方はお読みください。
僕の太客が義兄弟になるとか聞いてない
コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26
BL
没落名士の長男ノアゼットは日々困窮していく家族を支えるべく上級学校への進学を断念して仕送りのために王都で働き出す。しかし賢くても後見の無いノアゼットが仕送り出来るほど稼げはしなかった。
そんな時に声を掛けてきた高級娼家のマダムの引き抜きで、男娼のノアとして働き出したノアゼット。研究肌のノアはたちまち人気の男娼に躍り出る。懇意にしてくれる太客がついて仕送りは十分過ぎるほどだ。
そんな中、母親の再婚で仕送りの要らなくなったノアは、一念発起して自分の人生を始めようと決意する。順風満帆に滑り出した自分の生活に満ち足りていた頃、ノアは再婚相手の元に居る家族の元に二度目の帰省をする事になった。
そこで巻き起こる自分の過去との引き合わせに動揺するノア。ノアと太客の男との秘密の関係がまた動き出すのか?
聖女の力を搾取される偽物の侯爵令息は本物でした。隠された王子と僕は幸せになります!もうお父様なんて知りません!
竜鳴躍
BL
密かに匿われていた王子×偽物として迫害され『聖女』の力を搾取されてきた侯爵令息。
侯爵令息リリー=ホワイトは、真っ白な髪と白い肌、赤い目の美しい天使のような少年で、類まれなる癒しの力を持っている。温和な父と厳しくも優しい女侯爵の母、そして母が養子にと引き取ってきた凛々しい少年、チャーリーと4人で幸せに暮らしていた。
母が亡くなるまでは。
母が亡くなると、父は二人を血の繋がらない子として閉じ込め、使用人のように扱い始めた。
すぐに父の愛人が後妻となり娘を連れて現れ、我が物顔に侯爵家で暮らし始め、リリーの力を娘の力と偽って娘は王子の婚約者に登り詰める。
実は隣国の王子だったチャーリーを助けるために侯爵家に忍び込んでいた騎士に助けられ、二人は家から逃げて隣国へ…。
2人の幸せの始まりであり、侯爵家にいた者たちの破滅の始まりだった。
悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る
竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。
子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。
ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。
神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。
公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。
それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。
だが、王子は知らない。
アレンにも王位継承権があることを。
従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!?
*誤字報告ありがとうございます!
*カエサル=プレート 修正しました。
冷徹茨の騎士団長は心に乙女を飼っているが僕たちだけの秘密である
竜鳴躍
BL
第二王子のジニアル=カイン=グレイシャスと騎士団長のフォート=ソルジャーは同級生の23歳だ。
みんなが狙ってる金髪碧眼で笑顔がさわやかなスラリとした好青年の第二王子は、幼い頃から女の子に狙われすぎて辟易している。のらりくらりと縁談を躱し、同い年ながら類まれなる剣才で父を継いで騎士団長を拝命した公爵家で幼馴染のフォート=ソルジャーには、劣等感を感じていた。完ぺき超人。僕はあんな風にはなれない…。
しかし、クールで茨と歌われる銀髪にアイスブルーの瞳の麗人の素顔を、ある日知ってしまうことになるのだった。
「私が……可愛いものを好きなのは…おかしいですか…?」
かわいい!かわいい!かわいい!!!
悪役令嬢のモブ兄に転生したら、攻略対象から溺愛されてしまいました
藍沢真啓/庚あき
BL
俺──ルシアン・イベリスは学園の卒業パーティで起こった、妹ルシアが我が国の王子で婚約者で友人でもあるジュリアンから断罪される光景を見て思い出す。
(あ、これ乙女ゲームの悪役令嬢断罪シーンだ)と。
ちなみに、普通だったら攻略対象の立ち位置にあるべき筈なのに、予算の関係かモブ兄の俺。
しかし、うちの可愛い妹は、ゲームとは別の展開をして、会場から立ち去るのを追いかけようとしたら、攻略対象の一人で親友のリュカ・チューベローズに引き止められ、そして……。
気づけば、親友にでろっでろに溺愛されてしまったモブ兄の運命は──
異世界転生ラブラブコメディです。
ご都合主義な展開が多いので、苦手な方はお気を付けください。
「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました
湖町はの
BL
バスの事故で亡くなった高校生、赤谷蓮。
蓮は自らの理想を詰め込んだ“追放もの“の自作小説『勇者パーティーから追放された俺はチートスキル【皇帝】で全てを手に入れる〜後悔してももう遅い〜』の世界に転生していた。
だが、蓮が転生したのは自分の名前を付けた“隠れチート主人公“グレンではなく、グレンを追放する“無能勇者“ベルンハルト。
しかもなぜかグレンがベルンハルトに執着していて……。
「好きです。命に変えても貴方を守ります。だから、これから先の未来も、ずっと貴方の傍にいさせて」
――オレが書いてたのはBLじゃないんですけど⁈
__________
追放ものチート主人公×当て馬勇者のラブコメ
一部暗いシーンがありますが基本的には頭ゆるゆる
(主人公たちの倫理観もけっこうゆるゆるです)
※R成分薄めです
__________
小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にも掲載中です
o,+:。☆.*・+。
お気に入り、ハート、エール、コメントとても嬉しいです\( ´ω` )/
ありがとうございます!!
BL大賞ありがとうございましたm(_ _)m
あなたがいい~妖精王子は意地悪な婚約者を捨てて強くなり、幼馴染の護衛騎士を選びます~
竜鳴躍
BL
―政略結婚の相手から虐げられ続けた主人公は、ずっと見守ってくれていた騎士と…―
アミュレット=バイス=クローバーは大国の間に挟まれた小国の第二王子。
オオバコ王国とスズナ王国との勢力の調整弁になっているため、オオバコ王国の王太子への嫁入りが幼い頃に決められ、護衛のシュナイダーとともにオオバコ王国の王城で暮らしていた。
クローバー王国の王族は、男子でも出産する能力があるためだ。
しかし、婚約相手は小国と侮り、幼く丸々としていたアミュレットの容姿を蔑み、アミュレットは虐げられ。
ついには、シュナイダーと逃亡する。
実は、アミュレットには不思議な力があり、シュナイダーの正体は…。
<年齢設定>※当初、一部間違っていたので修正済み(2023.8.14)
アミュレット 8歳→16歳→18歳予定
シュナイダー/ハピネス/ルシェル 18歳→26歳→28歳予定
アクセル 10歳→18歳→20歳予定
ブレーキ 6歳→14歳→16歳予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる