ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐

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27.今度は、その男か?

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 切り付けられそうになった領主様が怒るのは当たり前だ。
 それは分かるけど、そんな火種は困る。ここで争いを起こすわけにはいかないんだっ……!!

「……領主様っ…………! あ、あのっ……! ま、待ってっ……やめてくださいっ…………!」

 僕はまだ戸惑いながら、オフィガタス様に駆け寄った。

 そして、領主様に向き直る。

「あのっ…………お、お怒りはごもっともですっ…………ですがどうかっ……剣を納めてくださいっ……」

 だって領主様の剣は、さっきの比じゃない。恐ろしい魔力を持っていて、不気味な光を放っている。剣から漏れ出るくらいの魔力を持っているんだ。さっきはオフィガタス様の剣を受け止めただけだったのに、今度は殺す気かもしれない。

 二人を争わせるわけにはいかない…………この領地は、平穏でいてくれなきゃ困るんだ。

 けれど間に入った僕を、領主様は睨みつける。彼の周りに幾つもの魔法の弾が現れて、オフィガタス様の方を狙っている。そうして、オフィガタス様の動きを牽制しながら、領主様は、僕だけを睨んでいた。

「…………今度は、その男を庇うのか?」
「え…………?」

 その男って…………オフィガタス様の事か?

 僕がオフィガタス様と領主様の間に入ったから、そう見えたのか……

 だけど、ここで争いが起これば、それは、いずれここを王子が乗っ取る原因になる。そんなことをさせるわけにはいかない。
 でも、王子の話なんかしたら、また反逆を疑われたりするかも……それは嫌だ。領主様に疑われたくない。

「え……えっと…………僕はっ……!」

 戸惑う僕の方に、領主様は近づいてくる。そして手を握り、彼は僕を引き寄せた。

 なに…………? 怒っているのか?

 なんでこんなに引き寄せるの!? しかも、背中に手が回ってる!?? な、何されてるんだ!!??

「…………あっ……あの……」
「その男を庇うな…………俺の従者なら、俺だけを守っていればいい……」
「あ…………」

 ど……どうしたんだろう。領主様。

 なんで僕を抱き寄せてるの??

 いや、僕が抱き寄せられるわけがない。

 …………もしかして、ひどく怒っているのか?

 領主様に仕えているはずの僕が、領主様を襲おうとした人を守ろうとしたように見えたから。だから、抱き寄せてるんじゃなくて、詰め寄っているんだ!!

 そんなんじゃないのに……

 だけど、そんな言い訳をする余裕すらない。領主様は強く僕の腕を捕まえて、真剣な顔で僕を見下ろしている。

 な、なんでそんなに迫ってくるの?? そんなに怒ってるの??

「ご、ごめんなさい…………僕っ……そんなつもりじゃないんですっ…………ただっ…………あのっ……この領地を守りたくて……」
「それは俺の役割だ……俺のことだけ……見ていればいい……」
「は、はい…………」

 恐る恐る頷くと、領主様は僕を離してくれた。

「あ…………」
「…………少し下がっていろ。危ないぞ」
「は、はい…………」
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