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26.それは
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いきなりオフィガタス様が領主様を襲って、ひどく驚いたけど、今は呑気にびっくりしている場合じゃない。だって領主様が襲われそうになったんだから。
剣士でもなければ普段から戦闘のための訓練を受けている魔法使いでもない僕だ。できることは限られている。だけど、この杖で領主様を守ることはできる。
普段から護衛をちっとも連れて歩かない領主様の近くに今いるのは、僕なんだから……!
「あっ…………あのっ……領主様から離れてくださいっっ!!」
叫んだ声は、少し震えていた。
情けないなー……僕…………
だってこんな風に、領主に剣を向ける人を目の前にしているんだぞ。恐ろしいに決まってる。
だけどこんなの黙ってられるか!!
「な、なんの真似ですかっ……!! 領主様に、いっ……いきなりっ……こんなっ……!」
怒りに任せて言うけど、オフィガタス様は悪びれた様子もなく肩をすくめただけ。
「……少し、腕試しをしただけだ。竜族の部隊はよくやる。反応の速さや受け止める剣の強さで、魔力が充分な状態か見るんだ」
「…………」
なんだか当たり前みたいに言ってるけど……
そんなんで誤魔化されないぞっ……!
僕に、竜族のことはよく分からない。
だけど、例えそうだとしても、領主様は竜の部隊の人じゃないし、いきなり領主様に切り掛かるなんておかしいに決まってる!! というか、誰であってもいきなり切り掛かったらダメだろ!!
小さな諍いとか、仲が悪いとか、それどころじゃない。明らかに今、オフィガタス様は怒りに任せて剣を振り下ろしていたはずだ。
それでも、オフィガタス様は平然と言う。
「ロウィトレリトが今日も元気でよかった。この城がなくなっては、ここで働いている魔法使いたちも困ってしまう……だが、安心しろ!! その時は、俺がここにいる奴らを引き受けてやる!」
とんでもないことを言って、オフィガタス様は豪快っぽく笑う。
なんなんだこの人……
この城がなくなるなんて、軽々しく言わないでほしい。ここはずっとこのままここにあるんだ! 平穏に!! 僕がそうするって決めたんだから!!
すでに領主様とはやりあう気でいるのか?
けれど、狙われたはずの領主様は、怒り出すようなことも動揺することもなかった。オフィガタス様に向かって「相変わらず、短気なやつだ」と言ったくらい。
それだけ??
……以前から思ってたけど、領主様、自分の命を狙われているのに、気にしなさすぎじゃないか? あんなことをした人の前でそんなに無防備でいいのか? 領主様の魔力があれば、それも怖くないのかもしれないけど……僕が嫌だ!
今だって、平然とオフィガタス様にたずねる。
「それで? 俺を殺して城の連中を連れ去るために、わざわざここに来たのか?」
「………………いいや。そんなことはない」
ずいぶん間があったな……そうなのか? そんなこと、させるもんか!!
「…………そんなことのために領主様に斬りかかられては困りますっっ!!」
つい、叫んでいた。相手は公爵家で魔物を退治する部隊の隊長。絶対に、僕なんかがこんな風に意見したらいけない人だ。それは分かっているけど……こんな風に領主様を狙う奴を放っておけるか!
怒鳴る僕に、オフィガタス様は面食らったようだ。
「………………落ち着け。殺す気はない」
「領主様はこの領地のために、なくてはならない人です。こんなことは、もう二度としないでください!」
「……なくてはならない? …………ずいぶん変わったことを言う奴を連れているな……」
何が変わったことだ。領主様には、ちゃんとこの領地の領主様でいてもらわないと困るんだから!
けれど、オフィガタス様にはそれが信じられないようだ。ひどく驚いている。
「……この男のことを、そんなに熱心に守る奴がいるとは思わなかった」
言って、オフィガタス様は僕の方に向き直る。
「……落ち着いてくれ。俺はただ、領主と夜会の話をしに来ただけだ」
「…………夜会の?」
「ああ。そうだ……せっかくだ。お前も話を聞かせてくれないか?」
そう言って彼が伸ばしてくる手を見て、無意識に身構えてしまう。何しろ、さっき領主様に切り掛かった奴だ。彼の剣を領主様は片手で受け止めていたけど、僕にそんなことは絶対に無理だ。
だけど、今の僕には防御の魔法があるんだっ……!! ここにだって、僕が無理を言ってついてきたんだし、自分を守ることくらいできる! それに、オフィガタス様には聞き出さなきゃならない事があるんだから。
話なんてしたくないけど……この領地のことは、守らなきゃならない。僕だって、彼が何を考えているのか、聞いておきたいし……
「わ……分かりました……僕っ……」
言いかけた僕の目の前で、オフィガタス様は立ち止まる。
その背後には、領主様が立っていた。そして、後ろからオフィガタス様に、先ほどとは比べ物にならない魔力で作られた剣を、彼の首の後ろの辺りに突きつけている。
「それは、俺の側近だ。近づくな」
ゾッとするような声で言う領主様は、今にもその首を切り落としてしまいそう。
え…………な、何してるんだ!? さっきは大して気にしていないみたいだったのに!!
剣士でもなければ普段から戦闘のための訓練を受けている魔法使いでもない僕だ。できることは限られている。だけど、この杖で領主様を守ることはできる。
普段から護衛をちっとも連れて歩かない領主様の近くに今いるのは、僕なんだから……!
「あっ…………あのっ……領主様から離れてくださいっっ!!」
叫んだ声は、少し震えていた。
情けないなー……僕…………
だってこんな風に、領主に剣を向ける人を目の前にしているんだぞ。恐ろしいに決まってる。
だけどこんなの黙ってられるか!!
「な、なんの真似ですかっ……!! 領主様に、いっ……いきなりっ……こんなっ……!」
怒りに任せて言うけど、オフィガタス様は悪びれた様子もなく肩をすくめただけ。
「……少し、腕試しをしただけだ。竜族の部隊はよくやる。反応の速さや受け止める剣の強さで、魔力が充分な状態か見るんだ」
「…………」
なんだか当たり前みたいに言ってるけど……
そんなんで誤魔化されないぞっ……!
僕に、竜族のことはよく分からない。
だけど、例えそうだとしても、領主様は竜の部隊の人じゃないし、いきなり領主様に切り掛かるなんておかしいに決まってる!! というか、誰であってもいきなり切り掛かったらダメだろ!!
小さな諍いとか、仲が悪いとか、それどころじゃない。明らかに今、オフィガタス様は怒りに任せて剣を振り下ろしていたはずだ。
それでも、オフィガタス様は平然と言う。
「ロウィトレリトが今日も元気でよかった。この城がなくなっては、ここで働いている魔法使いたちも困ってしまう……だが、安心しろ!! その時は、俺がここにいる奴らを引き受けてやる!」
とんでもないことを言って、オフィガタス様は豪快っぽく笑う。
なんなんだこの人……
この城がなくなるなんて、軽々しく言わないでほしい。ここはずっとこのままここにあるんだ! 平穏に!! 僕がそうするって決めたんだから!!
すでに領主様とはやりあう気でいるのか?
けれど、狙われたはずの領主様は、怒り出すようなことも動揺することもなかった。オフィガタス様に向かって「相変わらず、短気なやつだ」と言ったくらい。
それだけ??
……以前から思ってたけど、領主様、自分の命を狙われているのに、気にしなさすぎじゃないか? あんなことをした人の前でそんなに無防備でいいのか? 領主様の魔力があれば、それも怖くないのかもしれないけど……僕が嫌だ!
今だって、平然とオフィガタス様にたずねる。
「それで? 俺を殺して城の連中を連れ去るために、わざわざここに来たのか?」
「………………いいや。そんなことはない」
ずいぶん間があったな……そうなのか? そんなこと、させるもんか!!
「…………そんなことのために領主様に斬りかかられては困りますっっ!!」
つい、叫んでいた。相手は公爵家で魔物を退治する部隊の隊長。絶対に、僕なんかがこんな風に意見したらいけない人だ。それは分かっているけど……こんな風に領主様を狙う奴を放っておけるか!
怒鳴る僕に、オフィガタス様は面食らったようだ。
「………………落ち着け。殺す気はない」
「領主様はこの領地のために、なくてはならない人です。こんなことは、もう二度としないでください!」
「……なくてはならない? …………ずいぶん変わったことを言う奴を連れているな……」
何が変わったことだ。領主様には、ちゃんとこの領地の領主様でいてもらわないと困るんだから!
けれど、オフィガタス様にはそれが信じられないようだ。ひどく驚いている。
「……この男のことを、そんなに熱心に守る奴がいるとは思わなかった」
言って、オフィガタス様は僕の方に向き直る。
「……落ち着いてくれ。俺はただ、領主と夜会の話をしに来ただけだ」
「…………夜会の?」
「ああ。そうだ……せっかくだ。お前も話を聞かせてくれないか?」
そう言って彼が伸ばしてくる手を見て、無意識に身構えてしまう。何しろ、さっき領主様に切り掛かった奴だ。彼の剣を領主様は片手で受け止めていたけど、僕にそんなことは絶対に無理だ。
だけど、今の僕には防御の魔法があるんだっ……!! ここにだって、僕が無理を言ってついてきたんだし、自分を守ることくらいできる! それに、オフィガタス様には聞き出さなきゃならない事があるんだから。
話なんてしたくないけど……この領地のことは、守らなきゃならない。僕だって、彼が何を考えているのか、聞いておきたいし……
「わ……分かりました……僕っ……」
言いかけた僕の目の前で、オフィガタス様は立ち止まる。
その背後には、領主様が立っていた。そして、後ろからオフィガタス様に、先ほどとは比べ物にならない魔力で作られた剣を、彼の首の後ろの辺りに突きつけている。
「それは、俺の側近だ。近づくな」
ゾッとするような声で言う領主様は、今にもその首を切り落としてしまいそう。
え…………な、何してるんだ!? さっきは大して気にしていないみたいだったのに!!
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