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39.今のうち
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ベリレフェク様が本気でオフィガタス様を狙っていそうで、僕は真っ青だ。
「お、おお、落ち着きましょう!! ベリレフェク様っ……!!」
そう言ってみても、ベリレフェク様の表情は変わらない。今にもオフィガタス様を追いにいきそう。
「そこをどけ、キャトラズイル。いい加減、鬱陶しくなっていたところだ。あんな奴は、殺しておくに限る」
「かっ……限りませんっ…………!!!! 領主様っ……!! なんとかしてください!」
振り向くと、領主様は腰に手を当てて言った。
「ベリレフェク……そろそろやめておけ。それなりに落ち込んでいるようだ」
「……」
領主様に言われて、ベリレフェク様は大人しく魔法を止めた。
そして僕の方に振り向く。
「なぜわざわざ止める? ここへ来て、何か妙なことを喚いていたようだが……まさか……何か吹き込まれたか?」
「ふ、吹き込まれたわけではありませんっ……! ただ…………あのっ……え、冤罪を晴らしたくて……」
そんな話をしていたら、急にオフィガタス様が立ち上がる。
そして、いきなり胸を張った。
「そ、そうか!! ベリレフェク!! 照れているのだな!!」
「………………」
よくそういう結論が出たなぁ……
ベリレフェク様も領主様も、ひどく恐ろしい顔でオフィガタス様を睨んでいる。
すっかり立ち直ったのかと思ったけれど、オフィガタス様は、今にも泣きそうな顔を無理矢理笑わせていた。
……だ……大丈夫かな…………
彼は、明らかに無理をしている様子で、それでも胸を張って言った。
「お、俺は、す、少しっ……あ、頭を冷やしてくるからな!! ま、魔物の多い森にでも行こうかな!? うん!! そうしよう!! し、しばらく、一人にしてくれ!! 少しの間でいい!! お、追ってくるんじゃないぞ!! 追うなよ!! 追ってくるなよ!!」
言うと、オフィガタス様は部屋を飛び出していってしまう。
…………逃げた……のか?
しかも、追って来るなって、何度も言ってた。
絶対に放っておくだろうと思ったベリレフェク様は、彼を追って、部屋を出て行こうとする。
「べ、ベリレフェク様……追うんですか?」
僕がたずねると、彼はすぐに振り向いて言った。
「ああ。もちろんだ。放ってはおけないだろう」
ともすれば労って心配しているように聞こえるのに、その目は冷酷そのもの。
これ……絶対に心配しているんじゃない。殺しに行く気だ。オフィガタス様がどこか行っちゃって、追えなくなる前に。
「あ、あの…………お、落ち着いて……」
「お、おお、落ち着きましょう!! ベリレフェク様っ……!!」
そう言ってみても、ベリレフェク様の表情は変わらない。今にもオフィガタス様を追いにいきそう。
「そこをどけ、キャトラズイル。いい加減、鬱陶しくなっていたところだ。あんな奴は、殺しておくに限る」
「かっ……限りませんっ…………!!!! 領主様っ……!! なんとかしてください!」
振り向くと、領主様は腰に手を当てて言った。
「ベリレフェク……そろそろやめておけ。それなりに落ち込んでいるようだ」
「……」
領主様に言われて、ベリレフェク様は大人しく魔法を止めた。
そして僕の方に振り向く。
「なぜわざわざ止める? ここへ来て、何か妙なことを喚いていたようだが……まさか……何か吹き込まれたか?」
「ふ、吹き込まれたわけではありませんっ……! ただ…………あのっ……え、冤罪を晴らしたくて……」
そんな話をしていたら、急にオフィガタス様が立ち上がる。
そして、いきなり胸を張った。
「そ、そうか!! ベリレフェク!! 照れているのだな!!」
「………………」
よくそういう結論が出たなぁ……
ベリレフェク様も領主様も、ひどく恐ろしい顔でオフィガタス様を睨んでいる。
すっかり立ち直ったのかと思ったけれど、オフィガタス様は、今にも泣きそうな顔を無理矢理笑わせていた。
……だ……大丈夫かな…………
彼は、明らかに無理をしている様子で、それでも胸を張って言った。
「お、俺は、す、少しっ……あ、頭を冷やしてくるからな!! ま、魔物の多い森にでも行こうかな!? うん!! そうしよう!! し、しばらく、一人にしてくれ!! 少しの間でいい!! お、追ってくるんじゃないぞ!! 追うなよ!! 追ってくるなよ!!」
言うと、オフィガタス様は部屋を飛び出していってしまう。
…………逃げた……のか?
しかも、追って来るなって、何度も言ってた。
絶対に放っておくだろうと思ったベリレフェク様は、彼を追って、部屋を出て行こうとする。
「べ、ベリレフェク様……追うんですか?」
僕がたずねると、彼はすぐに振り向いて言った。
「ああ。もちろんだ。放ってはおけないだろう」
ともすれば労って心配しているように聞こえるのに、その目は冷酷そのもの。
これ……絶対に心配しているんじゃない。殺しに行く気だ。オフィガタス様がどこか行っちゃって、追えなくなる前に。
「あ、あの…………お、落ち着いて……」
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