ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐

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38.本気だ!

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 焦り始めた僕を、不意に、後ろから伸びてきた手が包んだ。振り向く間もなく、そのまま領主様に抱き寄せられてしまう。

 え………………

 なんで僕、こんなことされてるんだ??

 僕がこんなに優しく抱き寄せられるはずがないのに。

 これって……

 つ、捕まった!!??

 領主様、絶対に怒ってるんだ!! 僕が突然変なこと言い出したから!!

 ……いきなりこんなことを言われたら、誰だって怒るか……

 今はとにかくオフィガタス様の誤解を解きたかった。そうしないと、このまま領主様が悪役になって、ここが乗っ取られる気がしたからだ。

 こんな人の多いところで、領主様だけ悪役にされてたまるか!!

 だけど……勝手なことを言って、領主様に一番迷惑をかけてるのは、僕なんじゃないかっ……!?? 一番そばにいるとか…………あ、愛されるとか…………こんなの、他の誤解を受けるより、よほど嫌なんじゃないか……?

 だってもう告白みたいじゃないか!! しかも、こんなにたくさんいる人の前で…………

 何してるんだっ……僕…………!

 今さら、自分のしたことが恥ずかしくなってくる。誤解を解くにしても、他にやりようがあったはずなのにっ…………

「…………あ、あのっ……領主様っ……僕っ…………も……申し訳ございません……」
「……キャトラズイル…………?」
「…………ほ、本当に……も、申し訳ございませんっ…………」

 震えながら、小さな声で何度も謝る僕。

 勝手なことを喚き散らした僕を、オフィガタス様が指差していた。

「お、お、おいっ…………今のは、どういうことだっ……お前っ……! 勝手なことを言うと、ただでは済まないぞっっ!!」
「…………っっ!!」

 どうしよう……何か、言わなきゃ…………

「た、確かにっ…………勝手なことですっ……! 罰があると言うなら受けますっ…………だけど、僕はっ…………そうしたいと思って…………」
「訳の分からない奴だ。お前っ……」

 近づいてくるオフィガタス様の顔を見たら、僕の体がびくっと震えた。

 彼の言っていることはもっともで、僕が言っているのは勝手なことだ。

 けれど、領主様が僕を隠すように抱きしめてしまう。

「…………ぇ……あ……あの…………領主様……?」

 僕が見上げると、領主様は一度だけ僕を見下ろして、オフィガタス様に向き直る。

「……オフィガタス……さっき言っていた勝手な愛とはどういうことだ? 俺とベリレフェクは、なんでもない。貴様……少ししつこいぞ」
「だ、だがっ…………そうでなければ、ベリレフェクがお前などにっ…………」
「そいつが勝手に近づいてくるだけだ」

 言って、領主様はベリレフェク様に振り向く。

 すると、ベリレフェク様は「そうだな」と言って肩をすくめ、オフィガタス様に向き直る。

「……俺は、そいつの命を狙っていたからな……」

 そ、それ……話しちゃっていいのか……!??

 オフィガタス様も、ひどく焦り出す。

「な、何を言っているんだ!! ベリレフェク!!」
「言ったとおりだ。俺は、領主とお前の命を狙っていたんだ」
「は!!??」

 目を丸くするオフィガタス様。

 周りにいたみんなも驚いている。

 けれど、ベリレフェク様はまるで気にしていないみたい。

「もう面倒だ。お前には近づくのも嫌だったから領主を狙ったが…………どうやら、間違いだったようだ……」

 言って、ベリレフェク様はオフィガタス様を睨みつける。その腕に魔力が光となって現れて、今にも魔法の弾を放ってきそうな勢いだ。

 オフィガタス様は、だんだん顔色が悪くなっていく。

「え……? べ、ベリレフェク?? ど、どうしたんだ?? あの………………」
「俺を呼ぶな。鬱陶しい。いいか? 俺は、お前が嫌いだ。それも、心底嫌いだ。そばにいるだけで気分が悪くなるくらい嫌いだ。恐らくお前ほど嫌いな奴は二度と現れない。分かったら、二度と俺の前に現れるな」
「…………」

 こんな声出るんだって驚くくらい冷たい声で言われて、オフィガタス様は、動けなくなってしまったみたいだ。ちょっとかわいそう……

 しかも、ベリレフェク様がオフィガタス様に向かって魔法の弾を撃とうとするから、僕は慌てて彼に飛びついて止めた。

「ま、待ってください!!」
「どうした? キャトラズイル」
「どうしたって……な、な、何をなさるのですか!!」
「俺の目的は知っているだろう?」

 そう言って、彼はオフィガタス様を睨んでる。これ……本気だ!
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