ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
37 / 45

37.それは僕の役割なんです

しおりを挟む
 さっき、二人で並んでいるところを見てしまったからか? 領主様とベリレフェク様を見ているだけで、なんだか苦しい。

 二人とも、ここで何してたんだ?? 僕の知らないところで……

 勝手に、二人が仲良く話していたことばかり思い出す。

 こうして二人の間に入っている僕は、やっぱり邪魔者なんじゃないか?? もしかして、ずっとそうだったのか?? 僕だけが気づかなかったのか?

 だめだ……どうしてもそのことばかり考えてしまう。僕は、この領地が乗っ取られることを回避しなきゃならないのに!

 オフィガタス様は、僕を指差して怒鳴る。

「魔力を使えないように、だと!? さては抵抗できないようにして、なぶりものにしているな!?」
「なんでそうなるんですか! 撤回してください!! さっき言ったことも含めて、全て!! 勝手なことを言って、領主様を悪役にされては困ります!!」
「黙れ!! 何が悪役だ!! 明確に、その領主は悪だ!! ベリレフェクの首輪は、その冷酷な男が暴走した欲望でベリレフェクを傷つけている証拠だ!」
「だからっ……違うって言ってるじゃないですか!! そう言うことをみんなの前で言わないでください!! 領主様は絶対にそんなことしません!! ベリレフェク様だって、普段からここで魔法の研究ができて楽しそうだしっ………………か、勝手なことを言わないでください!」

 怒鳴り返して、僕は領主様に振り向いた。

「領主様も、なんとか言ってください!!」

 けれど、領主様はキョトンとしている。

「………………一体、なんの話だ? 突然入ってきたかと思えば、二人で騒いで」
「だ、だって……領主様は酷いことをしていないって、ちゃんと言ってください!! ……だって、領主様は悪くないのにっ……!!」
「………………なんのことだか分からないが、酷いことならしている。ベリレフェクの自由を奪っているのは俺だ」
「でもっ……それはっ……」
「オフィガタスの言っていることも、おかしなことではないだろう?」
「……そんなっ…………」

 周りにいたみんなが、ヒソヒソ言い始めてる。「領主様が……? ベリレフェク様を?」って、領主様を疑い始めている。

 このままじゃ、みんなオフィガタス様の言うことが本当だって思ってしまう。

 それなのに、なんで…………領主様は違うって言わないんだ??

 領主様、殺されそうになってもいつもあまり気にしていないし、こういうのも気にならないのか??

 それとも、本当にベリレフェク様のことが好きで、束縛するつもりでっ……!!

 いや、そうであったとしても、領主様がベリレフェク様に首輪をつけたのは、彼が勝手に魔法を使い、また領主様を狙うことを防ぐためだし、理不尽に痛めつけたりもしてない。

 けれど、オフィガタス様は腕を組んで言う。

「やはりか……こんなことは、俺が許さない!! お前の勝手な愛のせいで、ベリレフェクが束縛されているなんて、許せないんだ!!」
「……は? おい、待て…………どういうことだ?」

 初めて領主様がオフィガタス様に振り向く。

 こんなの許せない。

 僕が嫌なんだ。

 領主様がどう思っているかは知らないけど、僕は、領主様が殺されるのも、こんな風に悪く言われるのも嫌だっ!!

 僕は、ポケットに入れていた魔法の道具の力を借りて、強化した魔法の弾を放った。

 狙ったのは、ベリレフェク様の首輪。

 弾は首輪を掠めてそれを破壊する。

 崩れて落ちていく首輪を、ベリレフェク様は驚いて見下ろしていた。オフィガタス様も、領主様もだ。

 僕は、声を張り上げた。

「……ちっ……違うって言ってるじゃないですかっっ!! 領主様の一番そばにいるのはっ……僕ですっっ!! 側近だって僕だしっ…………こっ……これから愛されるのだって、僕なんですっっ!! 領主様のそばに他の誰かがいるなんて僕が許しません!!」

 力の限り叫んだら、ついにオフィガタス様は驚いたのか、黙っていた。

 さっきまで少しざわついていた部屋も、再びしんと静まり返る。

 …………ものすごく、勝手なことを言ったな……

 領主様には、好きな人がいるのかもしれないのに…………

 だけど、僕のことだって、領主様は側近だって言ってくれたっっ……!
 だったら僕は、ここに最悪の未来が訪れることを防ぐためなら、なんでもする!!

「りっ……領主様の一番の側近は、もう僕なんですっ…………!! そこにいる方ではありません! こ、婚約するのも僕です! 魔法だって……僕は教えてもらってるし……ぼ、僕の方が、今は領主様のそばにいます! そ、そこにいる方は、ただの貴族! 僕の足元にも及びません!! き……消え去れぇ……!!」

 何度目か分からないけど、しーんとなる医務室。こんなに静まり返ったの、初めてかもしれない。

 ……だめ……だったかなぁ……悪役っぽく言ったつもりだったのに…………なんだかひどく……間抜けだ。

 ただの貴族ってなんだ。
 家を追われ、貴族でなくなり、散々ここにも迷惑をかけて、それでも情けでここに置いてもらっているドジな落ちこぼれが、何を言っているんだ。

 そもそも、悪役になりたくないのに自ら悪役と同じことをしてどうする……

 だけどっ……領主様が言いたい放題言われてるのは嫌だっ……だったらちょっとくらい悪役っぽくなってやる! 当て馬だっていい!!

 僕は、オフィガタス様に振り向いた。

「とっ……とにかくっ……領主様は、そんな方ではありません! 領主様が今、そばに置いてくださっているのは僕で……これからも、一番そばにいるのは、僕です!! だから……ベリレフェク様を束縛なんてっ……領主様が、そんなことをする必要はないんですっっ!! だって……僕がいますから! 他の方が割って入る隙なんか……あ、あげません!」

 叫ぶ間にも、周りから小さな笑い声がし始めている。
 当たり前だよな……だってこんなの全部、僕が勝手に言っているだけなんだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

「呪いを解くには毎日可愛いと言ってください」と嘘をついたら、氷の聖騎士様が本気で口説きにかかってきました

たら昆布
BL
間違って呪われた青年と呪いを解除したい騎士の話 番外編はその友達たちの話

薄幸な子爵は捻くれて傲慢な公爵に溺愛されて逃げられない

くまだった
BL
アーノルド公爵公子に気に入られようと常に周囲に人がいたが、没落しかけているレイモンドは興味がないようだった。アーノルドはそのことが、面白くなかった。ついにレイモンドが学校を辞めてしまって・・・ 捻くれ傲慢公爵→→→→→貧困薄幸没落子爵 最後のほうに主人公では、ないですが人が亡くなるシーンがあります。 地雷の方はお気をつけください。 ムーンライトさんで、先行投稿しています。 感想いただけたら嬉しいです。

王子様との婚約回避のために友達と形だけの結婚をしたつもりが溺愛されました

竜鳴躍
BL
アレックス=コンフォートはコンフォート公爵の長男でオメガである! これは、見た目は磨けば美人で優秀だが中身は残念な主人公が大嫌いな王子との婚約を回避するため、友達と形だけの結婚をしたつもりが、あれよあれよと溺愛されて満更ではなくなる話である。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 1/10から5日くらいBL1位、ありがとうございました。 番外編が2つあるのですが、Rな閑話の番外編と子どもの話の番外編が章分けされています。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※僕はわがまま 時系列修正 ※ヤード×サンドル終わったのでラブラブ番外編を末尾に移動 2023.1.20

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

【朗報】無能と蔑まれ追放された俺、実は「聖獣に愛されすぎる体質」でした ~最強の騎士団長が毎日モフモフを口実に抱きついてくるんだが?~

たら昆布
BL
鉄血の重執着ストーカー騎士団長×無自覚もふもふ(聖獣使い)な元雑用係

政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話

BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。 ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!

処理中です...